川西幸一50歳記念 チョットオンチー栄光の50年(1日目) @ 日本武道館

川西幸一50歳記念 チョットオンチー栄光の50年(1日目) @ 日本武道館
川西幸一50歳記念 チョットオンチー栄光の50年(1日目) @ 日本武道館
川西幸一50歳記念 チョットオンチー栄光の50年(1日目) @ 日本武道館
「川西幸一50歳っていうことで、こういう場を与えていただきまして……何て言ったらいいか……申し訳ないっつうか(笑)。これまだ続くからね? 明日も」という民生の曲間MCと、そこで巻き起こった武道館いっぱいの苦笑失笑が、ある意味この巨大イベントの「あり得なさ」そして「楽しさ」を象徴していた。そもそも「事務所後輩バンドの名前を大々的にダジャレ化したイベント・タイトル」にしても、「ドラマー50歳の誕生日までの間に所属バンドのライブを合わせて50本敢行」「そして日本武道館2Days+大阪城ホールという規模でお誕生日パーティーを兼ねた(誕生日を肴にした?)イベントを開催」といった妙な悪ノリ感と途方もないスケール感を無理矢理合体させたアクションにしても、去年までの日本の音楽界を逆さに振っても誰からもどこからも出てこなかったはずの奇策だ。それが今や、武道館満杯のファンがげらげら笑いながら、その奇策の底抜けな悪ノリ感をデフォルトのものとして堪能している。今年1年でユニコーンが「あり」にしてきたものの大きさを、改めて体感した一夜だった。

というわけで、『川西幸一50歳記念 チョットオンチー栄光の50年』第1夜:日本武道館。ステージに向かって正面にメイン・ステージが、その両脇に小さめのサブ・ステージが設けられている。アジカンの『NANO-MUGEN FES.』と同じ方式、と言えばわかる人もいるかもしれない。そして18:32、ハッピ姿で登場した川西っさんが挨拶。「7月から、この(『チョットオンチー』の)4本含めて50本、そのうちこれまで36本。僕の予定では、今日はユニコーンさんと、BLACK BORDERSさんと、PUFFYさんをカウントできるし、と思ったら、某OTさんが『PUFFYはサポートだからカウントしたらいけん』とおっしゃって。なので、今日は37本目と38本目になります!」という口上にも高らかな拍手が湧き起こる。ちなみに、『チョットオンチー』シリーズはあと3回あるので、細かい曲目/セットリストや仕掛けの数々は今日の段階では割愛するが、この日のどの出演者も「川西幸一50歳記念」というパーソナルな開催動機と「武道館」という会場のスケール感のギャップに少なからず戸惑いつつ、それでもこの場を楽しみつつ、という空気感の中でタイムテーブルが進んでいったように見えた。

トップバッターはPUFFY。武道館という会場をのっけから極彩色のポップでいっぱいにする亜美&由美はもちろんだが、小型カメラに向かって目線を送りアピールしまくり、頭をぶんぶん振ってドラムを叩き、と川西っさんもハナからエンジン全開。同じくPUFFYのサポートを務める古田たかし(90年代ユニコーンのラスト・ツアーで脱退した川西の代わりにドラムを叩いていた)を呼び込んで2人でガッチリとハグをしてみせたり(それを見た由美は「お父さんとお父さんの肉のぶつかり合い」と評していた)、ステージ上手下手のサブ・ステージに移動した2人がまさかの武道館を股にかけたツイン・ドラムを披露したり……と、いきなり見せ場の連続でスタート。

続いて、「この次に出てもらうやつは、僕の……何て言うんですか、マブダチ?(笑)。親友っていっても、年は僕の半分以下です」という川西っさんのアナウンスに導かれて上手側(向かって右)のサブ・ステージに登場したのは、飛騨高山出身のブルース・ラッパー=DAG FORCEと、ジャズ/ファンク/ヒップホップ/R&Bと自在なサウンドを繰り出す生バンド編成=DAG FORCE & The Lazy Stones……なのだが、そのバンド・メンバーにはUZUMAKIのDUTTCH(Dr)がいたり、RIZEのKenKen(B)がいたりする。さらにゲスト・ボーカルとして「僕がミュージシャンになろうと思ったきっかけのバンドのボーカルです」と川西っさんが呼び込んだのは金子マリ! もちろん武道館は初出演のこのバンドだが、内省を丹念に編み上げる“My Blues”からチベット暴動への危機感をあふれるままに綴った“Tibetan Freedom(ちべたん)”まで、思いをストレートにライムと歌に変換しながら圧倒的な声量で吐き出していくDAG FORCEの歌が、ある意味祝祭ムードとは対極の快い衝撃を与えてくれた。

次は中央のメイン・ステージで髭(HiGE)。須藤(Vo・G)は「もともとユニコーン大好きでした」と言っていたし、でもこの日のラインナップの中では明らかに最もアウェイだし、しかも髭(HiGE)的には初の武道館だし、やりにくいだろうなあ、と思っていたら、ラモーンズのTシャツの上にタキシード着込んだ須藤はやっぱり思いっきり舞い上がっているらしく、「喉カラッカラになりますね!」と何度も水を飲んでオーディエンスの笑いを誘っていた。それでも、「僕も子供の頃から、みんなと同じでユニコーン大好きで、でも今日は偶然にもみんなとはちょっと違って……こんなふうに出ちゃってすみません!」「今日寝る前に、みんなの顔を思い浮かべるんで! また会いましょうよ! 誰かの誕生日、祝いましょうよ!」と、須藤時空とでも言うべき独特の空気感のMCで武道館を呑み込んでいく。“青空”“嘘とガイコツとママのジュース”でオーディエンスのガードをゆっくり外し、最後の“ダーティーな世界(Put your head)”“ギルティーは罪な奴”“ロックンロールと五人の囚人”でスパークして、終了。

髭(HiGE)が終わると同時に、今度は下手側(向かって左)に登場したのは、川西っさんと元ジェット機/ジャイアントステップのベース・野田タロウによるBLACK BORDERS! ギター・ボーカル野田&ドラム川西という、ホワイト・ストライプス編成というかザ・ティン・ティンズ編成というか、つまりはそういう最小単位の編成でもって、ロカビリー風の鋭利な楽曲から超速パンクまで次々に乱射していく。それこそ“大迷惑”ばりに速くてオカズ多めなナンバーの数々を、川西っさんはパワー・ドラミングでさらに爆裂させる勢いで叩きこなしていく。野田の歌に誘われて武道館一丸のコール&レスポンスへ突入したり、演奏時間の短さをまるで感じない、アグレッシヴで熱量発散しまくりのアクトだった。

そして、大トリのユニコーン! 特に前半部分はユニコーン第2のドラマー(?)奥田民生が大活躍する一方で、バンド自ら「チョットオンチー」と全国的に謳った川西っさんがリード・ボーカルとして武道館の熱気をさらに煽っていく。1日3ステージ目ともなると、さすがに汗だくで息も乱れる川西っさんを見て、民生が「出しもの変えたほうがいいかもね」とMCで話しかける。
民生「大丈夫、明日?」
川西「何が?」
民生「出しもの変える?」
川西「え? 変えるの?」
……こんな天然なやりとりだけでも自然発火的な爆笑が広がるほど、会場には高揚感が充満しきっている。「俺、50になったらこれやんなきゃいけないの?」と半ばボヤキ混じりに言っていた民生だが、最後には「みなさんも50歳になったら、こんなふうに武道館でやってみてください!」と高らかに言ってガハハと笑ってみせる。他にいない、こんなバンド。

さすがに“川西五〇数え唄”まではやらなかったが、50歳記念シングル曲“半世紀少年”も含め1時間強のステージ。特にユニコーンのアクトに関しては書けることが少なすぎるのだが、逆に言えばそれだけネタと仕掛けに満ちたステージだった、ということだ。アンコールを終え、さらに鳴りやまない拍手と歓声の中、川西っさんが再び1人で登場。「いろいろ準備とか大変だったんですが……みんなの顔が見れて嬉しいです。あと3日、思いっきり楽しんでいきましょう!」。そう言って、また少年のように小気味よくすたすたと退場していった。

たっぷり3時間半、イベントと言うにはあまりに大掛かりで楽しすぎる試みの1日目は、こうして幕を閉じた。 『川西幸一50歳記念 チョットオンチー栄光の50年』、明日もここ武道館で開催!(高橋智樹)
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