アークティック・モンキーズ @ 日本武道館
2009.10.20 13:41
たとえば冒頭の“ダンス・リトル・ライアー”で、ブルージーで退廃的な幕開けから一気にロックがあふれ出して目の前の風景を炎上させた瞬間。たとえば“プリティ・ヴィジターズ”の鋭利なビートをさらに切り刻むように切迫するアレックスの歌、そして極太リフの音圧。たとえば“ポーション・アプローチング”や“デンジャラス・アニマルズ”で武道館狭しと轟かせたヘヴィな音像の、昨日までの「LOUD PARK 09」がまかり間違ってまだ続いてんじゃねえかと錯覚するくらいの硬質感。たとえば“クライング・ライトニング”で聴かせた「本当は怖いグリム童話」的なメロディに不穏な胸騒ぎを覚える瞬間……1つ1つのフレーズやアンサンブルのフォルム自体は発明でも何でもない、どちらかと言えばロックの歴史の教科書に大きな文字で載っている類いのものであるはずなのに、ストレートに鳴らすものすべてが発明的に攻撃的なロックとして響くマジック。それは取りも直さず、アークティック・モンキーズという基本OS自体が革命的かつアクロバティックにひずんでいるからに他ならない。ということを、この日武道館に集まった誰もが確認したに違いない。そんなアクトだった。昨日の超プレミア・ギグ@リキッドルーム恵比寿に続いての武道館単独公演。装飾もギミックもなし、至ってシンプルなステージ。昨日より数曲多く、曲順の違いもあるものの、基本路線はほぼ前日と同じ。つまり、最新アルバム『ハムバグ』をほぼ全曲プレイしつつ、1st『ホワットエヴァー・ピープル・セイ・アイ・アム、ザッツ・ホワット・アイム・ノット』および2nd『フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー』の曲も極力ソリッドに凝縮した形で盛り込みつつ……アルバム3枚しか出してない若いバンドにしてみれば当然のセットリスト構成と言えばその通りだが、その、極めて真っ当に組まれたセットリストが、いちいちロックそのもののようなカタルシスを生み出している。そして、そのマジックを、他でもない最新作『ハムバグ』が最も強く秘めている……というのが、アークティックを見つめるオーディエンスのただならぬ緊迫感の理由だ。“ブライアンストーム”や“アイ・ベット・ユー・ルック・グッド・オン・ザ・ダンスフロア”ではもちろんアリーナが沸騰したような狂騒状態を生んでいたが、それらの曲が(あくまで相対的に、だが)過剰にストレートなガレージ・ロックに思えてしまうくらい、前述の『ハムバグ』の楽曲群の魔力は壮絶なものがあった。ロックをそもそもダンス・ミュージックの一環として捉えるのであれば、それこそ“アイ・ベット・ユー~”とかのほうが遥かに高性能だろうし、『ハムバグ』の曲をやっている時のオーディエンスは、「ノる」とか「踊る」とかいうのとは違った、様子のおかしい蠢きのようなアクションを見せていた。が、それこそが、今の彼ら4人(サポートのG&Keyプレイヤー含め5人だが)が「そもそも『ノる』って何さ」のレベルを超越し、ロックで何を批評し何を壊すべきか、ということを極限まで突き詰め、それによって激烈な展開と鋭利さと音圧と不穏さを秘めたロックに到達したことの証明だった。と思う。アンコールの“イフ・ユー・ワー・ゼアー、ビワー”“505”含め、あっという間の約1時間半だった。この日のオープニング・アクトは、今月21日から東名阪ツアーを回るUKシーンの先輩(1人だけジョニー・マーという「大」先輩がいるが)、ザ・クリブス。開演予定時間を待ちきれないかのように18:55頃から登場、30分ほどの短いセットながら、そのラフで図太いサウンドを武道館の巨大な空間で思うさまぶん回して去っていった。そういえば、ライアンはMCで「ショウノアト、サケノンデ、アークティック・モンキーズヲ、ヤッツケル!」とか言っていたが、今頃アークティックくんたちは武道館の余韻に酔いしれつつ、先輩方に思いっきり理不尽にカラまれているのだろうか?(高橋智樹)
