ゼブラヘッド×MxPxオール・スターズ @ 新木場STUDIO COAST

ゼブラヘッド×MxPxオール・スターズ @ 新木場STUDIO COAST
ゼブラヘッド×MxPxオール・スターズ @ 新木場STUDIO COAST
ゼブラヘッド×MxPxオール・スターズ @ 新木場STUDIO COAST - pic by Naoaki Nashimapic by Naoaki Nashima
オリコン洋楽チャートで1位を獲得した前作『フェニックス』のツアーでここ新木場STUDIO COASTにやって来たのが昨年の11月末だから、今夜のライブはちょうど1年ぶりの日本公演となるゼブラヘッド。デスチャからブリトニーからアヴリルから、シンディ・ローパーからファーギーからエイミー・ワインハウスまで、有名女性アーティストによるヒット曲だけを取り上げたカバー・アルバム『パンティー・レイド』を11月4日にリリースした彼らだが、この作品は日本以外の国での発売が12月8日ということだから、これはかなりの先行リリースである。当然、アルバムのリリースをフォローしてのライブも日本が最初ということになる。そんなスペシャル感のある今回の日本ツアーは今夜を皮切りに、横浜、名古屋、大阪と続いていく。

前回彼らのサポート・アクトを務めたはカナダのレゲエ・パンク・バンド、イルスカーレットだったが、このたび一緒に来日したのはMxPxオール・スターズ。これはMxPxのマイク・ヘレーラ(Vo/B)に、アタリスを率いるクリストファー・ロウ(Vo/G)と元グッド・シャーロットで現在はザ・サマー・オブセッションで活動中のクリス・ウィルソン(Dr)が加わって結成された変則バンドで、こちらも今日の新木場STUDIO COASTが世界初お披露目となる。「ゼブラヘッドは親友なんだ」と曲の合い間にマイク・ヘレーラが言っていた通り、MxPxとゼブラヘッドはもう10年ほど前から対バンやジョイント・ツアーを行っている。ちなみに、マイクはMxPxとして今年5月にも来日した。

客電が落ちてから5分近く経過し、待ちきれないオーディエンスの拍手と歓声が高まっていく中、爆音で流れ出したラモーンズの“電撃バップ”とともに登場したMxPxオール・スターズ。1曲目に入ると5秒も経たないうちにクラウドサーフが始まる。ドラマティックでかすかに甘酸っぱさのあるマイク・ヘレーラのボーカルをシャープで緩急自在な演奏がどんどん後押ししていて、一気に引き込まれるのだ。クリストファーは初めコーラスに徹していたが、ツアー前に発表されていた通りアタリスの楽曲も演奏されると、どこか憂いのある、それでいてカリスマ性に満ちたボーカルを披露する。

「俺たち、クリスが2人もいるから声かけるとき大変なんだよ」とフロアの笑いを誘うMCも挟み込みながら、王道パンク・ロックからとっても楽しいシャッフル・ビートの50’sロックンロールから有名曲のカバーまで、ツアー初日なので詳しい曲名は記載しないけれど、バリエーションに富んだ、飽きさせないセットだった。

フロアの左右に2つのモッシュピットができて真ん中で次から次へとクラウドサーフしていたオーディエンスはこの時点ですでに熱気むんむんの汗びっしょりなのだが(12月なのにハーパン率高し)、ダース・ベイダーのテーマとともにゼブラヘッドの5人が登場し、マッティのいきなりのコール&レスポンスから「サイコー」なオープニング曲が始まると、割れんばかりの大歓声が巻き起こる。

既述の通り、女性アーティストたちの曲をカバーしたアルバムに『パンティー・レイド』(パンティー狩り)というタイトルを付けてしまうゼブラヘッドである。3曲ほど終わったところで、それまで一言もしゃべっていなかったベースのベンがおもむろに「アナタノパンティーハ何色デスカ? ワタシノパンティーハ黒デス」とか言ったり、マッティを指差して「チ○コ、チイサーイ」とか言ってたあたりはまだまだかわいかった。それ以降のMCはほとんどここには書けない。

「ライブにはパンティーを持ってきてくれよ!」とビデオ・メッセージなどで呼びかけていたメンバーたちの声に応え、『パンティー・レイド』からの曲が演奏されるたびに会場では赤や黄色や水色や、実に多種多様なパンティー(と若干の男性用下着)が飛び交っていた。女性ファンがパンティーをぶんぶん振り回しながらクラウドサーフで前方に進んでいき、十分ステージに近づいたところでメンバーに向かってそれを投げるというパターンが何度があったが、これはなかなかの壮観だった。

もちろんパンティーだけでなく(?)、演奏も素晴らしかった。『パンティー・レイド』についてマッティはあるインタビューで、「最初は全部の曲を収録するつもりじゃなかったんだけど、やってみたらとても良いものができたから入れることにしたんだ」と言っていたが、その発言の通り、それぞれの曲にオリジナルとはまた別の側面から光があてられていて、「そうか、この曲ってこんな曲だったんだ」と原曲が立体的に、浮き彫りになって現れてくるような面白さがある。これはやはり元の曲がいろんな解釈を許すくらいよく出来ているということも大きいだろうけれど、ステージ左右に4発ずつ積まれたマーシャルから放たれるツイン・ギターの轟音や、研ぎ澄まされたアリのラップとパワフルなマッティの歌のコンビネーションなしには、これほど求心力のあるパフォーマンスは生まれないだろう。

「俺たちPUNKSPRINGに出るんだ! また近いうちに会おうぜ!」とアリが言ってライブはクライマックスに向かっていく。そう、ちょうど今日の午前中、来年4月4日に開催されるPUNKSPRING 2010の第1弾ラインナップが発表されたのだ。いよいよ寒さを増してきた今年の冬だが、彼らが与えてくれたマライア・キャリーの“恋人たちのクリスマス”という文字通りのクリスマス・プレゼントを胸になんとか乗り切り、桜の季節がやって来るのを楽しみに待ちたいと思う。(高久聡明)
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