FoZZtone @ 赤坂BLITZ

FoZZtone @ 赤坂BLITZ
FoZZtone @ 赤坂BLITZ
FoZZtone @ 赤坂BLITZ
今年2月からスタートした全国ツアー『Lodestone Tour』、各地でペトロールズ、detroit7、tobaccojuice、シュノーケル、サクラメリーメン、ghostnote、LUNKHEAD、竹内電気、SISTER JET、セカイイチと熱戦を繰り広げてきたFoZZtone。今宵はそのツアーファイナルとなる赤坂BLITZ公演。事前にゲスト出演する3人のボーカリストの名も発表されている。中盤のMCで「何かリリースの発表があると思って来てるのかもしんないけど“ねえぞ”!」と語ったのはわっちこと渡會将士(Vo/G)。だが、そんなことはどうでもいいと思えるほどに今宵のライブは、FoZZtoneが描き出せる音楽の可能性の引き出しを片っ端から開け、大放出していくような素晴らしいものだった。

開演前のステージを覆う幕には波打ち際の映像が映し出され、さざ波の音が聴こえ、時折眩しい光が投射される。そんな幻想的なムードの中、客電が落ちたのは定刻から15分押しの19:15。幕にFoZZtoneのロゴ、そしてスターウォーズのオープニング・ロールのようにツアー全行程がスクロールし、場内からはどっと笑いが起きる。かなり手の込んだつくりである。しかし、『FoZZtone Lodestone Tour final 赤坂BLITZ』の文字が投射されると、みるみるうちにフロアは期待と高揚に塗り替えられ、ソウルフルな渡會の声が暴発寸前のオーディエンスの魂を射抜くように響く。オープニング・ナンバーは彼らのリリース作品上最古の曲“MorroW”だ。幕が落とされ、続く2曲目はストレートなギター・ロックの結晶“黒点”。潤いを含みながらも「心は燃える、ぜ!」とシャウトする渡會のボーカルに絡みつくような緩急自在のバンドアンサンブルがどんどん後押しし、フロアをぐいぐいと引っ張っていく。「Are you ready?」、「Yeah!」のコール&レスポンスでフロアには無数の拳が突き上げられ、今宵のBLITZは幾度もその熱気を更新し続けるのだった。

FoZZtoneの音楽は、最新型ギター・ロックというよりは、ハード・ロック、ブルース、ソウル、ファンクのような60~70年代のクラシック・ロックが下地になっているが、単なるリバイバルにはならない。そこで描かれるのは今の情景であり、今の物語であり、うだつの上がらない日常と迷いである。だから聴く人の日常に深く突き刺さり、共鳴できるものとして響いてくる。こうした古き良きクラシック・ロック・サウンドが、7曲目で披露された新曲“Jaguar in the stream”や続く“ひかり”で並べられた「東京」や「新幹線」といった言葉で、自分の身近な都会的ものとして、あるいは自身に照らされる光のようなものとしてぐっと入り込んでくるのはなかなか不思議な体験だった。(渡會はこの新曲を自分たちのロード・ストーン、つまり自分たちの進む方位を見つけるきっかけになった曲とも語っていた)

その後はミラーボールがフロアを照らす中、渡會の小気味良いアコギとトロピカルな竹尾のエレキが交錯する“チワワ”、甘酸っぱさ漂う爽やかな“ワンダーラスト”、前半のハイライトとも言える稀代のスロー・バラッド“平らな世界”が披露され、いよいよゲスト出演のセクションに。「音楽に勝ち負けはないけど、対バンに勝ち負けはあるんだぜ!さんざん勝ちまくったし、さんざん負けまくった!(場内爆笑)一緒に回ってくれたバンドとも仲良くなったし、宝物になった。宝物って自慢したくなるだろ!」と渡會が言ってまず呼び込んだのは、今年3月に活動を休止したシュノーケルの西村晋弥。活動休止後の初ライブだという。二人は椅子に座ってアコギを構え、バンド演奏が後押しする中、斉藤和義の名曲“歌うたいのバラッド”が披露された。フロアからは「わーっ!」という悲鳴にも似た大歓声。続いて、FoZZtone の“ホールケーキ”がカバーされ、渡會と西村の眩しくも暖かいハモリとユニゾンが会場を包み、歌声を支えるようにハンドクラップが起こっていた。こうして聴くと、どこまでもソウルフルで声に色がついたような二人の歌声には、どことなく共通点があるのかもしれない。

ハートウォーミングな余韻を残して西村が去り、次に登場したのはa flood of circleの佐々木亮介! 相変わらず白シャツに黒パンのいでたちである。先ほどとは打って変わった牙剥き出しの圧倒的なステージングでafocの“プリズム”をFoZZtoneの演奏をバックにセルフカバー。凄まじいバイタリティで疾走し、佐々木が「オレたちの大好きなアニキたちの曲をやります!」と言ってエレファントカシマシの“悲しみの果て”が届けられる。オーディエンスが入れ替わったんじゃないかと思えるほどの熱気、カリスマ性に満ちた佐々木のボーカル、いつもと異なる獰猛なロックをプレイするFoZZtoneの4人。掛け値なしにかっこいいパフォーマンスであった。これらのカバーは、既存の曲がまた別の側面からアプローチされており彼らの曲がより立体的に引き出されているような面白さがあった。そして言うまでもないことだけれど、それは楽曲の完成度の高さを何よりも示している。

そこからライブは限界突破するようにアッパーなナンバーをたたみ掛け、フィナーレへと向かっていく。己の内部に潜む敵に打ち勝つ(渡會はそれをエネミーさんと呼ぶ)ことから作られた新曲“Enemy”は、先ほどのafoc佐々木に触発されたような渡會のがなり声が印象的で、ガレージっぽくもある新機軸の楽曲。それぞれの楽器のセクションがビシバシキマっていく“Elevator”、渡會の「ジャンプ!ジャンプ!」のアジテートにフロアが沸き立った“JUMPING GIRL”、そして“in the sky”と“音楽”の流れはもう鉄板。“音楽”では竹尾がハットをフロアに投げ込み、壮大なシンガロングまで巻き起こっていた。本編ラストは“NAME”。カタルシスが滲み出る序盤、そしてサビで渡會の声へバンドアンサンブルを真っ直ぐに集約させるあの瞬間。名前を呼ばれることの喜びを高々と歌い上げ、ラストでは呼応するように竹尾のギターが泣き叫ぶ。ギターの音の余韻と同時に青白い霧のような光がステージを包み、その光が治まるとFoZZtoneの4人は消えていた。感動的な本編ラストである。これで終わってもいいと思えるほどに。

再びアンコールで登場した4人は、セカイイチの岩崎慧を迎えRCサクセションの“雨あがりの夜空に”を演奏した。岩崎は縦横無尽にステージを行き来し、煽り、再びオーディエンスを熱狂の渦へと連れて行く。祝祭的なムードがフロアを包んだが、演奏後の渡會は「さすがだよ、あいつ。リハにも間に合わなかったのに。マジで尊敬するわ!」と一言。これにはフロア、仰天&大爆笑だった。そしてツアー・タイトルの冠でもある新曲“Lodestone”、ダブルアンコールで“茶の花”、正真正銘のラストは“The World Is Mine”。曲の途中からは、西村、佐々木、岩崎が大集結! 西村は相変わらず自分のペースで歌い、佐々木は竹尾のギターを無理矢理かき鳴らしたり、岩崎はドラムの後ろに仁王立ちし高々と声を張り上げとやりたい放題。(なぜかまちゃまちゃもいた。なぜ彼女がいたのかは最後まで明かされなかった)しかし、「世界は俺のものだ!」、「お前らのものだ!」と声を振り絞るようにして歌い、演奏するステージ上の7人の結束力と爆発的な求心力はこの日のライブを特別なものにしていた。

アンコールのMCで竹尾は「去年のリキッドワンマンが終わってつらい時期があって、大切な人に去られたり、なんでこいつらとバンドやってんだろうと思った時期もあった。だから、なんのリリースもないツアーでこんなに集まってくれて本当に感謝しています」と語り、このツアーに至るまでにバンド内でも様々な迷いがあったことを明かしていた。その迷いの中から自分たちのこれから歩く道を探すことでもあった今回の『Lodestone(方位磁石)Tour』。同じ時代を生きるバンド、そしてオーディエンスに支えられ、FoZZtoneは新たなステージへと上がっていくだろう。(古川純基)

1.MorroW
2.黒点
3.BRUTUS(Et tu,Brute!)
4.School
5.春と鉛
6.NIRVANA UNIVERSE
7.Jaguar in the stream
8.ひかり
9.チワワ
10.ワンダーラスト
11.平らな世界
12.歌うたいのバラッド
13.ホールケーキ
14.プリズム
15.悲しみの果て
16.ENEMY
17.Elevator
18.JUMPING GIRL
19.in the sky
20.音楽
21.NAME

<アンコール>
22.雨あがりの夜空に
23.Lodestone

24.茶の花
25.The World Is Mine.
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