ひとくちに「カップリング曲」とは言っても、ライブ・アンセムとして高性能な疾走ナンバーもあればオルタナ・ギター炸裂の曲もエモーショナルなバラードもある上にポップなCMタイアップ曲まであるわけで、「アレンジとか、シングルの曲よりカラフルやったりするもんな?」と高橋久美子も言っていた通り、よりコアで鮮烈なオルタナ・ロック・サイド・オブ・チャットモンチーを堪能するにはこれ以上の機会はない。ということが、1曲目の橋本絵莉子の、ゴリッとしつつも清冽なコード・ストロークや凛と張り詰めた歌声が響き渡った瞬間に誰にでもよくわかる。そんなツアーだ。まだ6月12日の徳島・鳴門市文化会館でのファイナル&地元凱旋公演が残っているので、ここではセットリストや演奏曲目の掲載は避けるが、全19曲の『表情』の中から各会場でまったく異なるセットリストを組み上げているチャットモンチー。3月には『サウス・バイ・サウスウエスト』をはじめとするUSツアーを回って格段に経験値を上げた彼女たち。その音からは、3人が「一期一会のつながりを大事にするコミュニケーションとしての音楽」と「一撃必殺の切れ味と表現力を持ったギター・ロック」の両方のギアを一気に上げていることが窺える。
そして……今回のツアーの1つの見せ場でもあり、その「一期一会」サイドの象徴とも言えるのが、中盤で展開される「ご当地ソング作曲コーナー」。各会場の観客に思い思いに「B級なご当地キーワード」を挙げてもらって、それを歌詞にしてリアルタイムで1曲作って、さらにみんなで歌ってしまおう! という離れ業コーナーだ。この日も「大泉の母」「高尾山」「いけふくろう」「稲城市」といったキーワードを、「いけふくろうに『様』つけていい?」「あ、これ歌始まりね!」と次々にアイデアを加えてメロディメイキングし、ギターで色を加えていく絵莉子。そこにリズムという命を吹き込んでいく晃子/久美子。ついには“沼袋ドッグ”なる超ポップ・ナンバーが生まれ、会場一丸のコール&レスポンスへと至るのである。
「実は、アメリカから帰ってきてから初めてのツアーなんです」と語る晃子。「しばらくアメリカを引きずっていて、日本の道路で巨大トレーラーを見るたびに『アメリカみたいやなあ』と思っていた」という久美子。「どこ行っても英語やし、最後のほうは『もう日本語でええかなあ』って」と絵莉子。「向こう(アメリカ)の人は“シャングリラ”とか知らんから、B面曲を織り交ぜても盛り上がったりするもんな?」と久美子。12日間で9公演というタイトな日程で回ったというアメリカ・ツアーを三者三様に咀嚼し血肉化しつつ、それを軽やかなMCとして提示してみせる3人の姿からは、チャットモンチーのひと回りもふた回りも大きな次元の「自然体」の形が垣間見えたような気がした。
アンコールでは、久美子と画家・白井ゆみ枝による詩と絵の個展「ヒトノユメ」(7月17日~8月8日、東京・IID 世田谷ものづくり学校にて)や物販などの告知に加えて「10月に新曲出します!」という大発表も飛び出した。久美子「まだ絶賛作り中なんで(笑)」とのことだったが、この「新・チャットモンチー」のモードがどんな楽曲に結晶化されるのか。今から楽しみで仕方がない。(高橋智樹)