全英TOP10の常連であるフィーダーにとって小規模なヴェニューを津々浦々回るレネゲイズのツアーは原点回帰的なものであり、そういう試験的かつ特殊な内容の公演を海を渡り日本に持ち込めるバンドなんて滅多にいない。ヒット曲を引っ提げての通常ツアーですら集客が厳しいこの洋楽不況下にあって、そんなことができるのはよほどのビッグネームか、日本で超堅固なファンベースを築いている数少ないバンドだけだ。そして、フィーダーとはまさにその数少ないバンドなのだ。
この日のUNITはもちろんソールドアウト、FEEDERロゴのバンドTシャツを着たオーディエンスも異様に多い。バンド編成はグラント、タカ、そして助っ人ドラマーのカールと3人最少人数。近年のツアーではサポート・メンバーを召集してきた彼らだが、今回は編成自体もレネゲイズの冠の下で原点回帰を示していた。そして何よりも強く原点回帰を感じたのはパフォーマンス、出音そのものだった。
『レネゲイズ』からのナンバーを中心にがんがん撃ち込まれていくパワフルなドラムス、重くしなるベース、そして白熱しながらバーストするギター、その焦点の合い方、一極を目指して3人が全力疾走で駆け昇っていくようなエネルギーがすさまじい。フィーダーと言えばメロディ・オリエンテッドでヌケのいいロック・アンセムを量産できるバランスの取れたギター・ロック・バンドとして定評があるが、この夜の彼らはバランスよりも力技、そしてアンセムよりも原初のパッションを重点的に突き詰めるライブをやったと言えるんじゃないだろうか。
「リリース前の新曲ばかり演って白けるかな?と思ったけど、大丈夫みたいだね」。タカは途中で笑いながらそんなことを言っていたが、固唾を飲んで新曲の全貌を見守っていたオーディエンスも、各ナンバーの折り返し地点辺りからフィーダーの新モードに身体を揺らし始めていた。特に白眉だったのがダークなバラッド“ダウン・トゥ・ザ・リヴァー”からファンキーな“ホーム”、“シティ・イン・ア・ラッド”へとなだれ込むそのジャムっぽい展開、そしてそこから“ジ・エンド”、“レネゲイズ”というこれぞフィーダー!な激熱最新アンセムへとなだれ込む中盤の流れだった。新作『レネゲイズ』が原点回帰であると同時に、フィーダーが長年培ってきた美点をも損なうこともなく昇華した一枚であることが証明された格好だ。
「レネゲイズとして日本でライブができて本当に嬉しい。今日のショウを実現してくれた(イベンターの)スマッシュと(レーベルの)ビクターに感謝したい。ありがとう」。終盤ではタカのそんな挨拶もあった。イギリスと日本、そしてバンドとファンの距離を感じさせないハートの近さも彼らの魅力だと改めて思う。アンコールでは“ゴジラ”と“インソムニア”どちらがいいかファンに聞き、まずは“インソムニア”をぶちかます。その後はこれまたスペシャルなレア曲“スウィート16”、そして「ニルヴァーナをやるよ」と言って“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット”のイントロ・リフをジャーッジャジャッ!と一瞬弾くも即効トチる、というコント(?)的展開で笑わせつつ“ブリード”へ。事前のセットリストに載っていたのはここまでだったが、最後の最後はファンへのギフトとしてこれをやらずには終われない“ジャスト・ア・デイ”!覆面バンドの新曲お披露目プレミア・ライブは、こうして大団円を迎えた。
9月には再び再来日、しかも全国を回るツアーを控えている彼ら。東名阪、そして福岡にも、仙台にも彼らはやって来てくれる。(粉川しの)
<セットリスト>
1.BARKING DOGS
2.SENTIMENTAL
3.THIS TOWN
4.WHITE LINES
5.LEFT FOOT RIGHT
6.DOWN TO THE RIVER
7.HOME
8.CITY IN A RUT
9.THE END
10.RENEGADES
11.LOST & FOUND
12.CALL OUT
アンコール
13.INSOMNIA
14.SWEET 16
15.BREED
16.JUST A DAY