FEEDER/the HIATUS @ 新木場スタジオコースト

FEEDER/the HIATUS @ 新木場スタジオコースト - pic by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)pic by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)
FEEDER/the HIATUS @ 新木場スタジオコースト
FEEDER/the HIATUS @ 新木場スタジオコースト - pic by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)pic by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)
公の場においても、対談企画やライヴでのゲスト・コラボレーションといった形で交流が知られていたフィーダーと細美武士。フィーダー2012年の最新アルバム『ジェネレーション・フリークショウ』の日本盤では、細美がタイトル・ナンバーのリード・ヴォーカルを務めるボーナス・トラック(同時にアジカン/後藤正文の歌唱による“アイダホ”も収録)が話題を呼んだけれども、そんなフィーダーとthe HIATUSによる東名阪ダブル・ヘッドライン・ツアーが実現した。本稿では東京公演の模様をお伝えするが、今後10/17にはZepp Nagoya、翌18日にはZepp Nambaでの公演を控えているため、参加を楽しみにしている方は以下、ネタバレにご注意を。

先攻はthe HIATUS。アコギを抱えた細美は序盤、対バン・ツアーへと寄せる喜びを露にしながら「こうやってデカい箱でやるの久しぶりなんで、目一杯楽しんで帰りたいと思います」と語っていた。驚くほど滑らかに、スキルフルで雄弁なthe HIATUSのバンド・アンサンブルの高みへとオーディエンスを連れ去る“Deerhounds”のオープニングから、肌が粟立つ。以降は繊細さと強烈なグルーヴを併せ持ち、そしてエキゾチックな旋律にエモーションを忍ばせた『A World Of Pandemonium』の世界が広がってゆくわけだけれど、肩肘を張らず、自然体で鳴らされているからこその楽曲の凄味が溢れ出している。唐突に怪物的なアンサンブルが姿を現すようだったかつてのthe HIATUSとは明らかに違っていて、スムーズに眼前の景色が塗り替えられてゆくことの凄さというか。

先の細美のMCの続きとして「フィーダーはさすがイギリスのバンドだけあって、楽屋にワインのいいコレクションがあったから、さっそく頂いてます」といった、少し場を和らげる言葉を投げ掛ける。その直後に“The Flare”の悶絶モノのロック・サウンドが立ち上がってくるという、異常なまでのバンドの瞬発力の高さを発揮。もともと辣腕プレイヤーが顔を揃えているバンドであることは重々承知しているつもりだけれども、やはり今のthe HIATUSは自然体で繰り出される音の基礎値自体がとんでもないレヴェルにある。“Monkeys”が放つパンキッシュな熱に、フロア一面で拳が振りかざされ、伊澤一葉のクラシカルなピアノ・プレイから、グリーンの髪が眩しいmasasucksの鋭いギター・リフ、そしてウエノコウジが放つ聴く者すべてを引き摺ってゆくようなベース・ラインへと連なる“My Own Worst Enemy”と、際限なくディープな音の引き出しを開け放ってゆく。

熱狂の最中にオーディエンスが落とした靴を細美が受け取り、匂いを嗅いで「若い子だと思います」と判定して持ち主の元に投げてよこす(絶妙なコントロールで飛んで行ったように見えた)といった、親密なパーティのムードと圧巻の音楽世界の間を行き来しつつ、“The Ivy”でカオティックな興奮がピークに達したあとは美しい主旋律とコーラスが次々に溢れ出して“On Your Way Home”で大団円となったステージ。いつものように昂った激しいアクションゆえに今にも鍵盤に頭を打ち付けそうな伊澤の姿にハラハラしたり、喋りそうで喋らないウエノのお茶目っぷりも愛らしかったけれど、何しろこの音。この演奏。今度はフィーダーが、the HIATUSをUKツアーに誘ってくれないだろうか、と勝手に思ったりもした。

さて、ステージの転換後は、アンプやドラム・セットに電飾のコードが一本渡されて『ジェネレーション・フリークショウ』のアートワークをバックドロップにした、7月以来となるフィーダーの来日パフォーマンス。サポートのドラマーとキーボード奏者が加わった4人編成のステージだ。「異様に高いレヴェルの安定感」という点ではthe HIATUSにも驚かされたわけだが、“Oh My”の眩いシークエンスから一息に立ち上がって来るフィーダーのそれも一朝一夕ではない。捩れながらドライヴ感を加えるグラントのギター・リフと、その先に途方も無い開放感を見出してしまう歌声。それを鉄壁の兄貴肌ベースとコーラスで支えるタカ・ヒロセなのである。続いては、90年代末からのライヴ定番シングル・ナンバー“Insomnia”の疾走感の中へと飛び込んでゆく。the HIATUSにも同名のナンバーがあるが、ナイーヴな詩情をダイナミックかつ巨大なスケール感のロック・サウンドで描き出すという点で、意外と両者は共通しているのかも。

魂を洗い流すような浄化作用を持つ美メロと、迷い無く放たれる鋭利でアグレッシヴな轟音の8ビート・サウンドを共に鷲掴みにしたまま走り続けて来たフィーダーは、前作『レネゲイズ』で奪還された初期のフレッシュな衝動も加味されて今、完全体と呼ぶべき状態にある。しかしこの、誰彼かまわず「最高のロックでしょ!?」と薦めてしまいたくなるような絶大な信頼感を育んできたものが、決して順風満帆なバンド・キャリアではないということを、長い間フィーダーの活動を見つめ続けて来たファンならよくご存知だろう。バンドが終わってもおかしくないような出来事だってあった。ひとつひとつの困難を掻き消すように、彼らのメロディと爆音は生み出されて来たという印象さえ覚える。

“Renegades”を披露すると、「ハイエイタス、いいよねえ。後ろで、テンション昂りまくり。細美くんもいいやつで、弟みたいに可愛がってるんだけど。へへ……や、でも、こうしてツアー出来て嬉しいです。フィーダーも楽しんでいってください」とこちらもストレートに喜びを露にするタカさんである。そして“Pushing The Senses”の、轟音でありながらも暖かみすら感じさせるようなエネルギーが再び立ち上がって来る。ギミックらしいギミックもないサウンドと歌に、ロック耳と体細胞がひたすら喜び続ける対バン・ツアーだ、これは。作品を経るごとにスケール感を増してゆく00年代中盤のフィーダーにワクワクしていたときの気持ちもまた、ありありと蘇ってくる。アホなことを書くようだけれど、ロックのメロディと爆音の力というのは、本当に凄い。

何気ないイントロがドラマティックな展開を期待させて止まない、といったフィーダー節ど真ん中の“Buck Rogers”から、最新シングルとしてカットされた“Idaho”へ。そしてタカさんは、『ふんばろう東日本支援プロジェクト』のグッズ販売の活動を紹介しつつ、「支援ってのは、続けることが大切で。大変なんだけど、みんなで頑張って応援していこう」と呼び掛けていた。伝えようとすればするほどに重くなりがちな言葉を、こんなふうにストレートに伝えることが出来る人は素晴らしい。あっという間に辿り着いた本編クライマックスでは、グラントが細美をステージに呼び込む。「俺たちがどんなライヴをやったかより、みんながどれだけ楽しんだかが重要だからさ! 最後、全開でぶっ飛ばそう!」という細美の煽りで“Generation Freakshow”へと傾れ込んでいった。

アンコールでは、グラントが「照明落として!」という仕草から“Children Of The Sun”を切々と披露したあと、お馴染みの「トゥットゥルットゥー」で駆け抜ける“Just A Day”で万感のフィナーレ。3時間が瞬く間でありながら、その充実感が長く胸に残される、真に夢のようなステージであった。(小池宏和)

FEEDERセットリスト
01: Oh My
02: Insomnia
03: Sentimental
04: Feeling A Moment
05: Renegades
06: Pushing The Senses
07: Down To The River
08: Just The Way I'm Feeling
09: Buck Rogers
10: Idaho
11: High
12: Borders
13: Generation Freakshow
(encore)
14: Children Of The Sun
15: Just A Day
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