定刻を20分ほど過ぎた18:50頃、ステージを隠すように張られた白幕に映像が流れる。それは彼らがこれまでに歩んできた軌跡だった。club EARTHを創り上げたその一部始終、それは慣れない大工仕事に取り組む姿だったり、まるで文化祭の準備のような大切な仲間たちとのひとときだったり、それと並行しながら音源制作に励む姿だったり……自分たちの場所がみんなの場所として存在し、その中で育まれた音楽が今、さらに多くの人の心を掴み始めているということ。ドキュメンタリーとしてまとめられたその映像を見ながらオーディエンスは世界の終わりが創り上げた『EARTH』を共有する。
白幕が青く照らされるとフロントマン深瀬の大きな影が映し出され、ピアノの演奏をバックにどこまでも透き通るような歌声が響き出した。“青い太陽”だ。リズムトラックとシンセ・サウンドが鳴ると同時に白幕が落ち、瑞々しいメロディがはじ出す。ピエロのお面を被りオーディエンスを煽動するDJ LOVE、グランドピアノを情熱的に操る藤崎、時折ステージ前にせり出しては激しくギターをかき鳴らす中島。ベース、ドラムレスというロックバンドにしては珍しい編成が生み出す、ジャンルも時代も一蹴するような独特なサウンドに虜になってしまう。「ツアーファイナルへようこそ!」という中島のさらなる勢いづけで、そのままなだれ込むように“虹色の戦争”へ。深瀬の突き抜けるような歌声の効果もあって、言葉がダイレクトに入り込んでくる。世の中に対する違和感をストレートに吐き出した言葉たちがそれとは真逆に位置するポップな音楽性に乗って歪なビートを奏でる。
深瀬がギターをおろし、マイクを手にした。「アルバムでは全曲ギターを弾いていますが、唯一ギターを弾いていない曲があって、それをやります。つまり、CDに入っていない曲です」といって“天使と悪魔”をプレイ。DJ LOVEの煽りでフロアはハンドクラップに包まれるが、不思議なことにそこには感情というものが存在しない無機質な空気が流れているようにも感じる。派手にステージを動き回ったりしていないということもあるけれど、それはやはり歌われる歌詞からくるものが大きいのだと思う。天使と悪魔という両極するものの存在と、どちらが正しくて、どちらが間違っているとも言えない答えのない問い。ただ一つ言えることは、両極するものがあるからこそ互いに成立していられるということ。理想と現実、生と死、朝と夜……その両極の立場を知っているからこそ、どちらとも答えの出せないという現状を歌う。そして、その極みが“世界平和”だ。真っ赤なライティングの中、激しくピアノを叩きならす藤崎、不穏な焦燥感を煽るトラックを繰り出すDJ LOVE。そして、深瀬と中島が同時に発する≪神様、人類を滅ぼして下さい≫≪神様、私たちの世界に平和を≫という悲痛な叫び。夢、平和、命、愛、自由、世界……容易く使うと安っぽくなってしまう言葉だからこそ、口に出すのはためらいたくもなるのだけど、それを自らと結び付けてストレートに言えてしまう純粋無垢さを持ち合わせているのが、このバンドの凄いところだと思う。
始まってまだ1時間も経っていないのに「最後の曲です」と深瀬が告げるとフロアからは「えーっ!」という驚きの声が上がる。無情にも藤崎がピアノのイントロを奏でると“幻の命”でラストを迎える。エフェクトのかかったボーカルに、煌めくような壮大なサウンドスケープはまるで一本の映画を見ているかのようなノスタルジックな気分にさせられた。
アンコールでは新曲も披露。仮タイトルは「夢」だそうだが、最後に深瀬が言った言葉が印象的だった。「中学もろくに行かなくて、高校も中退して、本当に何にもできなかったから、音楽家になるしかないと思った。でも、夢を追うことを始めてしまうと、才能が全然なかったり、自分のダメな部分が全部見えてしまう。それが怖くて何もできなかった」。夢と向き合うことで見えてくる現実と理想のギャップ。それを恐れるばかりに何もできなかった自分を少しでも変えるために始めた「club EARTH」の設立と「世界の終わり」というバンドの結成。今、その夢がこうしてたくさんの人の前で実現し、深瀬の夢は理想から現実へと変わったことを証明している。そして、「これが正真正銘、最後の曲です。知っていたら一緒に歌ってください」といって、アッパーに飛翔していくような“インスタントラジオ”で大合唱が沸き起こる。全9曲、1時間という短いライブではあったけれど、世界の終わりの新しい始まりを予感させるツアーファイナルだった。(阿部英理子)
1.青い太陽
2.虹色の戦争
3.天使と悪魔
4.世界平和
5.白昼の夢
6.死の魔法
7.幻の命
アンコール
1.新曲
2.インスタントラジオ