DIR EN GREY @ 新木場STUDIO COAST

DIR EN GREY @ 新木場STUDIO COAST
DIR EN GREY @ 新木場STUDIO COAST - pics by 野田雅之 (注:写真は6/29のツアー初日のものです)pics by 野田雅之 (注:写真は6/29のツアー初日のものです)
DIR EN GREYほど、ライブのたびに臨界点を更新し続けるバンドはいるだろうか。そんな思いが全身から込み上げて、ライブ後しばらく鳥肌が治まらなかった。6月末に新木場STUDIO COASTで行われたファンクラブ会員限定公演2Daysを皮切りに、愛知、大阪、福岡、札幌を回った『THE UNWAVERING FACT OF TOMORROW TOUR 2010』のファイナル。日本語に訳すと「揺るぎない明日」というタイトルが付けられたこのツアーは、08年12月から今年1月の武道館2Daysまで、約1年かけて最新アルバム『UROBOROS』のサウンドを世界各地で血肉化させてきた彼らが、次なるステージへ向けて舵を大きく切り直すための新たな出発点。先のツアーで見せたコンセプチュアルな世界から一転、ありのままのエネルギーをストレートにぶつける彼らの、剥き出しのドキュメントに対峙することができた。まずは、そのセットリストを見て欲しい。

1.残
2.LIE BURIED WITH A VENGEANCE
3.THE FATAL BELIEVER
4.OBSCURE
5.STUCK MAN
6.慟哭と去りぬ
7.THE DEEPER VILENESS
8.逆上堪能ケロイドミルク
9.ROTTING ROOT
10.蝕紅
11.BUGABOO
12.DOZING GREEN
13.NEW AGE CULTURE
14.朔-saku-
15.凱歌、沈黙が眠る頃

アンコール
16.砂上の唄
17.激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
18.REPETITION OF HATRED
19.冷血なりせば
20.AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS
21.羅刹国

『UROBOROS』の楽曲を中心に、過去のアルバム収録曲が散りばめられたラインナップ。1曲目にいきなり“残”をもってくるあたりに、ファイナルと言えど攻撃の手を緩めない彼らのストイックな姿勢が感じられる。ハイトーンボイスからデス声までを恐るべきスピードで行き来する京のヴォーカル、バッキバキのリフとメロディアスなギター・ソロが分厚いリズムの上で交錯するバンド・グルーヴに、今日も死角は一切なし。映像などによる演出はなく、バンド名とツアー名を記した横断幕がメンバーの背後に吊るされているだけのシンプルなステージだが、それ故に、5人の佇まいから放たれる凄みと色気がダイレクトに伝わってきた。

とりわけ、“STUCK MAN”から“逆上堪能ケロイドミルク”あたりまでは、特定のジャンルにカテゴライズできないDIR EN GREYの音楽性の豊かさが全開。青く鋭いメロディがフロアを切り裂いたかと思えば、ヘヴィーなサウンドが地を這うように前進し、オリエンタルで神秘的なムードが会場を包み込んでいく。そのスリリングな展開に、こんなにも多彩な楽曲がひとつのバンドから生み出されているという奇跡に驚愕させられた。と同時に、シーンの動きや自らのポジションに甘んじることなく、常に新たな障壁へとひたむきに立ち向かい続ける彼らの真摯な姿が透けて見えて、胸を打たれた。

続く“ROTTING ROOT”でクールダウンした後は、京のパフォーマンスが会場を掌握。“蝕紅”での鬼気迫るアカペラ、曲間での祈るようなシャウト、“DOZING GREEN”での伸びやかな歌声――。そのどれもが、すさまじい緊張感に満ちていて一瞬たりとも目が離せない。魅せることに対する高いプライドと気迫を胸に、ステージ中央に君臨する京の姿はさながら帝王のような存在感を放っていた。
さらに終盤、“NEW AGE CULTURE”“朔-saku-”“凱歌、沈黙が眠る頃”という、バンドを代表するラウドなナンバーが投下されていくとライブのテンションは一気に加速。天地が引っくり返ってしまうんじゃないかと思えるようなスリリングすぎる展開に、観客がものすごい一体感で応える。これこそDIR EN GREYの真骨頂。ダイナミックで挑発的なパフォーマンスが、闇に足を取られそうになってもがき苦しむ人々の傷みを代弁する完全無欠のエンタテインメントとして結実した、最高の瞬間だった。

アンコールは、Dieの情感豊かなアコギがかき鳴らされる“砂上の唄”に続いて、最新シングル“激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇”をはじめとした一触即発のプレイの連続。猛獣が爪を掻き立てあうように攻撃的なサウンドをぶつけ合う5人の姿に、フロアからは沢山の拳が上がる。京の「行けんのか? ひとつになれんのか?」というMCからラストの“羅刹国”になだれ込み、その熱すぎるステージは幕を閉じた。

今日のライブを観て改めて実感できたのは、DIR EN GREYが、他のどのバンドをも寄せつけない絶対的な高みに到達しているということ。そしてバンドのさらなる進化に対して、この5人が誰よりも貪欲だということだ。海外での評価・人気の高さは言うまでもないし、国内でも武道館を複数日にわたって埋めるほど熱狂的に支持されているものの、まだその存在を知らない人も多いであろうDIR EN GREY。その「支持する者」と「知らざる者」の間のギャップが、このバンドの場合、とても大きい気がする。世界に通用する驚異的なヘヴィネスと、日本人らしい繊細さと美しさがせめぎ合う彼らのサウンドは、もっと幅広い人に聴かれるべきだと思うし、メンバー自身もその気概に満ちている。しばらくは海外での公演が続くようだが、まだ彼らを生で観たことのない人には、次回のライブチケットを取ることを全力でオススメしたい。きっと脳天をぶち抜かれるほどの衝撃の体験になるはずだ。(齋藤美穂)
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