『exPoP!!!!! volume 42』@渋谷O-nest

『exPoP!!!!! volume 42』@渋谷O-nest - オワリカラオワリカラ
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アーティストが自身の楽曲を販売できるアーティスト・ストア「viBirth」と、音楽・カルチャー情報を発信するニュースサイト「CINRA」が共同で、毎月の最終木曜日に渋谷O-nestで開催する入場無料のライブイベント『exPoP!!!!!』。無料イベントということもあり、多くのオーディエンスが会場に詰め掛けた今宵の『volume 42』は、或るミイ、0.8秒と衝撃。、八十八ヶ所巡礼、そしてオワリカラの4組が出演した。

まずトップバッターとして登場した千葉県出身の或るミイは、レゲエやダブを基本軸とした気だるいアンサンブルで、重力から開放されたような心地いい浮遊感を生み出す4ピースバンド。ちょっと枯れ気味なボーカルもサウンドによく合っていてとてもいい。物悲しいメロディに時折悪ふざけのような奇天烈なギターアレンジを織り交ぜ、煙たくこもったビートに色をつけていく。鍵盤の音色は、かすかに暖かさを含んだエモーショナルな美しい旋律で、じんわりとオーディエンスの熱を高めていった。ダブのトリップ感とポストロック~エレクトロニカの安息感が交互に浮かび上がってくる面白いバンドだった。

続いて登場した0.8秒と衝撃。は、オフィシャル・サイトに記載されているメンバーは塔山忠臣(歌とソングライティング)、J.M.(歌とモデル)の2人のみだが、今宵のステージに上がったのは、ボーカル、シンセ、ギター×2、ベース、ドラムと合計6人。先ほどまで立ち込めていた浮遊感をズタズタに切り刻むようなカオティックなサウンドを叩きつけていく。最初こそ、パンク、ニュー・ウェイヴ色が強いジャンクなサウンドだったが、塔山の焦燥的なステージングに呼応するようにハード・コアへと変貌する。しかし、コード進行はいたってシンプルなもので、僕にはサイコビリーのようにも聴こえた。終盤には4つ打ちを鳴らしたかと思えば突如フェード・アウトし、いきなりアコースティックで弾き語る一幕も。それまでのカオティックなサウンドを取り払ったメロディは、昭和歌謡にも通ずるような、懐かしくて親しみやすいポップ・ソングであった。

3番目にステージへ上がった八十八ヶ所巡礼は、肩をすっぽり出したユニセックスないでたちのマーガレット廣井(Vo/B)、黒シャツに黒サングラスをかけたちょっとサイバーなKatzuyaShimiz(G)、上半身裸族の賢三(Dr)からなる3ピースバンドだが、これには驚いた。執拗に攻撃的な音を鳴らすことにこだわるベース、人を不安にさせるようなカッティングからライトハンド奏法まで無駄にテクニカルなギター、スネアを軽くぶち抜きそうな破壊的なドラミングと、3人の演奏技術は超ド級。しかもグルーヴはどしゃめしゃなのに荒削りな感じはなく、3人でリフを鳴らし、3人でリズムを練り上げているような強靭で統率されたアンサンブルである。中盤にはいきなり「チューーニング!!!」とどなり声で宣言して大爆笑を誘い、オーディンエンスの心を掴むとそこからラストまでは一気にヒートアップ。見事、自分達の世界にオーディエンスを引き込んでみせたのだった。

そして、このイベントのトリとして登場したオワリカラは、アンコールを含めた全6 曲という短いセットながらも、オーディエンスに強烈なインパクトを与えるライブを披露した。変拍子の鍔迫り合いのようなドラムを叩き出すカワノケンタ、ただでさえ符割りの細かそうなベース・ラインを激しく蛇行させるツダフミヒコ、何かに取り付かれたように鍵盤を叩くカメダダク、鉄板のギター・リフを鳴らすタカハシヒョウリ、とにかく4人の演奏技術はすさまじい。楽器と格闘しているかのようである。

“MANGA” という楽曲でボーカルのタカハシヒョウリは、ひたすらに《TOGASHI! MANGA KAKE! TOGASHI!》(富樫!漫画書け!富樫!)と、とある漫画家の度重なる休載への憤りを叫ぶ。「何か」を叫ばずにはいられない彼は、こんなどうだっていいことを(時にはどうだってよくないことも)歌うのだけど、その「何か」は何だっていいのだという自由さであり、オワリカラのサウンドはまさしくそれである。レッド・ツェッペリンがファンカデリックをカバーしているような“勇敢なるビイヒヤナウ”、井上陽水の“夢の中へ”を連想させる《探し物をしています》のような古き良きジャパニーズ・ポップスの意匠を含んだ言葉とメロディを、変拍子を多用したビートに乗せて歌う“ドアたち”。ここまで凄まじいライブを体感すると、CDはあくまで彼らの録音物でしかないのかもしれない。そう思えてしまうほど素晴らしいライブだったのだ。

アンコールで披露された“砂場”では、ブライトなノイズを振りまきながら美しいサイケデリアを描いたオワリカラ。もっともっと見たかったのが正直なところだが、彼らは11月からアンコールツアーをスタートし、ファイナルは12月3日の渋谷O-WEST、しかもワンマンである。期待しています!(古川純基)
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