5月7日に最新アルバム『ブー・ヒューマン』を発売したばかり、という絶好のタイミングで実現した今回の来日公演は、“ジョーン・オブ・アークとして”実に7年半ぶりの来日公演でもある。
というのも、ティム・キンセラはシカゴの伝説的ハードコア/エモコア・バンド=キャップン・ジャズの元メンバーであり、ジョーン・オブ・アークのほかソロ名義、オーウェン、メイク・ビリーヴなど多数のバンド・プロジェクトを展開(各プロジェクトにはジョーン・オブ・アークのメンバーも参加)しており、それらの活動を通して計50枚以上の作品を発表。昨年初頭にメイク・ビリーヴとして来日公演を大成功させたばかりなのだ。とはいえ、それらの派生プロジェクトの本山であるジョーン・オブ・アークとしてのパフォーマンスを待ちわびていた人は少なくないだろう、と満員の会場を見渡し実感する。
今回のツアーはティムに加え、ポール・クウ(B)、トッド・マッティ(G)、ボビー・バーグ(Key)、テオ・カソウアス(Dr)の計5人編成。ついつい、ピンク・フロイド『ザ・ウォール』のTシャツを着たティムのぽよんとメタボなお腹(太っても顔に出ないタイプですね)に視線がいってしまうのだが、そのファニーなたたずまいからは想像できないほどパフォーマンスはスリリングな展開をみせていく。音程取りもヘロヘロなティムのヴォーカルは、しかし、実にソウルフルであり、時としてとてつもないエネルギーを爆発させる。
それと並行して確かなテクニックに裏づけされた演奏が、これみよがしなところを一切みせずフォーク、ロックン・ロール、ハードコア、ジャズなど様々な音楽の間をしなやかに、縦横無尽に行き来し、時に穏やかに、時に獰猛に、時にシリアスに、時にメランコリイに聴き手の心をゆさぶる。聞き手の色んな感情に突き刺さる。
キャッチーなフックなどもなく、心地良いメロディの反復ののち意表をつく転換があったりと、時に複雑でひたすら予定調和を拒む、聴き様によっては落ち着かないこのサウンドに、でも、じわじわと引き込まれていく。彼らのサウンドが、聞き手に寄り添い、心のヒダの隙間に入りこんでくるのは、決して単純化できない複雑で実に人間くさいエモーションに根ざしたサウンドを誠実に鳴らしているから。サウンドの多様性は彼らにとって目的なのではなくただただ結果なのである、ということは熱量の高いパフォーマンスで何よりも実証していたと思う。
ティムによるエレキギターの弾き語りコーナーもまた独特で、自身の歌声とギターの音色のみで曲の世界観を完結させることなく余白と余韻を残し、聴き手の想像力すらも動員させていく、という展開には唸るほかなかった。
「また来るからアンコールの拍手いらないよ」というようなことを言って舞台の袖に引っ込んで茶目っ気をみせながらも、続くアンコールではすでに一度パフォーマンスしている“just pack or unpack”をよりアグレッシヴなアレンジで披露したりと、最後まで意表をついてくれた。(森田美喜子)
1.Shown and Told
2.If There Was a Time
3.Many Times I’ve Mistaken
4.Pioneering New Emotions
5.The Infinite Blessed Yes
6.I oNce Loved Someone Etc.(A Friend/Enemy song)
7.For half-Deaf Girl Named Echo
8.PLease Sleep
9.Lets Wrestle
10.Who’s Afraid of Elizabeth Taylor
11.Staying Alive and Loveless
12.Gripped by the LIps
13.A Tell-Tale Penis
14.you(i)can not see you(me)as I(you)can
15.Sea of Umbrellas
16.I’m not A Robot-Barbarian(from a solo record ep)
17.Laughter Reflected Back
18.Eventually All At Once
19.Just Pack or Unpack
20.So Open Hooray
21.When the Parish School Dismisses