昨年リリースされた５曲入りのＣＤ『Human Orchestra』の発売以来、話題が話題を呼び、めきめきとその頭角を表している北海道出身３ピースバンドtacica。今夜は今年４月にリリースされた待望の１stフル・アルバム『parallel park』を携えての全国ツアー追加公演『TOUR parallel park わくわく編』ファイナルということで、tacicaと同じく今後のギターロックシーンで目覚ましい活躍が期待されるルーキー３バンド、People In the Box、THE NOVEMBERS、serial TV dramaを迎えた対バン形式でのライブが行われた。

まずトップバッターで登場したのは、７月２日に１stフルアルバム『シリアルキラー』をリリースしたばかりのserial TV drama。アルバムのオープニングを飾る“ガーネット”で始まり、透明感のある歌声と骨太なロック・サウンドでオーディエンスをぐいぐい引っ張っていく。バンド・アンサンブルはものすごくゴリゴリした質感なのにやたら瑞々しく響くのは、幾重にも重なったような澄み切ったコーラスにあるだろう。そのコーラスこそが彼らの楽曲を味付けするスパイスとして絶妙なハーモニーを生み出している。ハードロック寄りの激しいグルーヴに清涼感のあるポップなメロディーが折り重なるこの不思議な感覚は、音源よりもライブの方がより新鮮に響いてきた。

続いて登場したのは、THE NOVEMBERS。小林がMCで「静けさを壊しにきました」と言っていたとおり、まさに静寂を鋭利な刃物で切り裂くような、ひりひりとした感情が場内に渦巻いていた。“こわれる”や“Arlequin”などどうしようもない絶望感を吐き出すように歌い叫び、狂ったように頭を振り乱しながらギターを上下に叩き付けるように奏でる姿はスリリングで見る者を圧倒する。自らを自らで破壊しているような自虐的なパフォーマンスを観ていると、そのリアルな痛みがグサグサと胸に突き刺さってくる。静まる会場に物憂げなギターのアルペジオが鳴り響き始まった“ガムシロップ”では、静寂から徐々に爆発していく様が非常にシリアスでたまらなかった。

続いて、先日ベースの中山が脱退し、６月から新ベースの福井が参加した新体制でのPeople In The Boxが登場。３ピースならではの絶妙な間の取り方や、一瞬の音の隙間が心地よい。光に導かれるようなキラキラしたメロディが響き渡り、変則的なリズムで次々と曲が展開していく。新体制でのコンビネーションもバッチリだ。前２バンドと比べるとボーカルがギターを一手に担っているので視覚的に感じられるアグレッシブさは少ないけれども、楽曲の繊細さやメロディーを大事にしたバンド・アンサンブルでオーディエンスもその世界観に吸い込まれていくようだった。

そして、最後はもちろんtacica。ＳＥでプライマル・スクリームの“Jailbird”が流れるとゆっくり３人が登場。一斉に音を鳴らした瞬間、目も眩むようなライティングに照らされ、３人の姿が浮き彫りになる。そのまま、肩慣らしのようなセッションが鳴らされ、アルバム『pararell park』から“ヌーの休日”“ゼンマイ”と流れに沿って幕を明けた。猪狩は大きく目を見開いて歌う。ものすごい声量だ。演奏はもちろんのことだが、歌に全くブレがなく完璧に歌えている。UNITは満杯のオーディエンスで埋まり、みんな拳を掲げて盛り上がっていた。「マジ、泣きそうだ」とMCで猪狩が言っていたのだけど、昨年から今年にかけての彼らの周りを取り巻く環境は劇的に変化している。この変化を本人たち自身がまだ受け入れられていないのか、満杯の観客を見て「ホント良かった。ありがとうとしか言えません」と、ぎこちなく話す猪狩がすごく印象的だった。でも、演奏はとても堂々としていて潔い。ディレイ・ギターで重ねられた音が神秘的で、どこまでも広がる大地を思わせる壮大なロック・ナンバー“アースコード”やアンコールで披露された『Human Orchestra』にも、今回のフルアルバムにも収録されている“HERO”を聴いて、これからtacicaがどこへ進んでいくのか、まだまだ未知数なだけに期待がどんどん膨らんでいった。

９月には再びtacica、People In The Box、THE NOVEMBERS、serial TV dramaの４バンドで東名阪クアトロ・ツアーを行うことが決定！ タイトルはずばり『確か、人々は11月に連ドラを演ズル』というそれぞれのバンド名を捩ったもの。今後のギターロック・シーンを牽引していく存在として、この４バンドの対バンは見逃せない。（阿部英理子）

serial TV drama
1.ガーネット
2.まえぶれ
3.シーフード
4.宿り
5.THE DANCE
6.赤いパーカー

THE NOVEMBERS
1.こわれる
2.Arlequin
3.僕らの悲鳴
4.ガムシロップ
5.she lab luck
6.バースデイ
7.白痴

People In The Box
1.始まりの国
2.6月の空を照らす
3.失業クイーン
4.月曜日消失
5.ユリイカ
6.She hates December
7.ペーパートリップ

tacica
1. ヌーの休日
2. ゼンマイ
3. 黄色いカラス
4. 人間1/2
5. ウソツキズナミダ
6. バク
7. アースコード

en1.HERO