そしてKuboty(G./Cho)の、ガンメタ色のフライングVから繰り出されるテクニカルな速弾きフレーズに焚き付けられ、フロアを埋め尽くすオーディエンスのシンガロングが広がる。身動きがとれないほどの埋まり具合に見えるのに、一曲毎に音が鳴り出すと一瞬で揉みくちゃになってしまうのだ。闘争心がそのままパフォーマンスに宿ったような“Predator”では、KubotyとJoseによる感情が昂ったリード・ギター対決も披露される。新作収録曲を中心に、序盤から出し惜しみなしのTOTALFATである。
「遂にやってきました! さっきオープニングのときに幕がかかっててオープニングSEが鳴って、こっち側でスタンバってるじゃん? 号泣! 日本シリーズでの優勝を目前に、守備位置で泣く清原の気持ちが分かりました!」とShun。相変わらず熱くキレの良いMCだけど、ずいぶん古い話を知ってるなあ。そして陽性のビート・ポップ風ナンバー“Summer Frequence”からバンド・サウンドが一丸となって迫る“Sacrifice”、ファストでアグレッシブな“Ain't Gonna Kill”と、さらに『OVER DRIVE』からのナンバーが続く。現在進行形の活動に対する自信がそのまま描かれるような、正しい「新作ツアー」の形だ。
“Just for What”でアクロバットのようなビートを繰り出していたBunta(Dr.)は、“Light a Fire”へと突入する前にタンクトップを脱いでその肉体を露にする。彼はこの2日前にLOW IQ 01のライブにゲスト参加してステージ丸々一本をツイン・ドラムの一人として叩き切っていたわけだが、このファイナルにおいても底なしのバイタリティを見せつけるように、バンドの推進力としての役割を全うしているのだった。
「ここがどこだか知ってるかい? 赤坂ブリッツだよ! いっぱい来たよ赤坂ブリッツ。そこの最前列でも観てたよライブ。ちょうど一年前ぐらいにここでライブやってね、ワンマンやったらどんなに気持ちいいだろうって、思ってました。ここはデカイけど、俺たちにとってはライブハウスです! みんながスピーカーから出る音より大きな声で歌ってくれて、熱くしてくれるから、ここで胸張って立っていられるわけです」とShun。いや、本当にそうだ。その後に披露された“Bruised”の、音で埋め尽くすよりも「間」で聴かせるアンサンブルのように、そりゃあTOTALFATにも新境地はある。より広く、遠く、音と言葉を届けるためにバンドは成長して、ライブ会場のサイズに見合った作曲をするようになったりもする。でも一方で、ライブハウスでのTOTALFATの熱狂は、損なわれていないのだ。それがそのまま赤坂ブリッツに持ち込まれているというような、そういう手応えがあるのだ。「10年と半年やってきて、この舞台に立つことが出来ました。みんなも、音楽じゃなくても、心を燃やして、考えて、ときには挫折して涙を流しながら、夢の舞台に向かって進んでいってください」。
メンバー全員の両親が観に来ている、ということが告げられると、フロアから2階席に向けて一斉に声が上がる。そして1月恒例の自主企画『PUNISHER’S NIGHT』が2011年にも開催されることが発表されていた。「じゃあ、新曲やります。俺たちがただツアーしていたわけじゃないってところを見せてやる! ただし、速いです。短いです。分かりづらいです。知ってる感じで、盛り上がってください!」と新曲の“Longest Dreamer”が披露された。いや、聴いてみれば言うほど分かりづらくないし、キャッチーでかっこいい曲なのだが。TOTALFATの天性のポップなバランス感覚が機能している、と言えば良いだろうか。
本編終盤も、強く聴く者の背中を押すような“Hide and Seek”、切ないメロディとともにバンドが爆走する“One Last Time,I'll Try To Be With You”、そして「最高の笑顔で行こうぜー!」という言葉から放たれた、ビートやリフの一発一発に渾身のエネルギーが宿る“Overdrive”と、最新作からの楽曲群でフィニッシュした。照明に照らし出されたフロア一面のオーディエンスが、一様に汗を光らせた顔で笑みを浮かべている。それは本当に美しい光景だ。
ShunとJoseによる、それぞれのリード・ボーカルと巧みなハーモニー・ワーク。鬼神のような高速ギター・フレーズを弾き倒すKuboty、そしてブルース・リーの如き引き締まった肉体から圧巻のビートを叩き出すBunta。目に見えて明らかな個性の集団であるはずのTOTALFATは、しかしひとたび演奏をスタートさせると、何よりもそのパフォーマンスにおける目的意識の一体感、塊となって届けられるエネルギーの「迷いの無さ」に気付かされることになる。ロック・バンドがバンドであること、バンドでなければならないことの意味が、極めて健全に、ブレることなく、ステージ上に描き出されるのだ。
アンコールでShunは言った。「メシ代よりもずっと高いCDを買うのはなぜ? 水よりもずっと高いチケットを買うのはなぜ? そこには勇気とか、仲間とか、そういう熱いものをもたらしてくれる何かがあるからだと思います! テレビでもインターネットでもない、自分の足で、TOTALFATのツアー・ファイナルに来てくれてありがとう! 俺たちは最高の仲間です!」。最初はメンバーだけで世界に立ち向かったバンドが、長い時間の中で一人、また一人と仲間を増やし、舞台を大きくしてゆくということ。フロア中央からはオーディエンスたちによるメッセージ・フラッグがステージに向かってパスされ、Shunの手に渡された。そのフラッグを広げて、オーディエンスとともに記念撮影をパチリ。終わってみれば2時間弱という時間ではあったけれど、たっぷりと思いが詰め込まれた、見事なステージであった。(小池宏和)
セット・リスト
1:Invention ~Good morning,my treasures~
2:Ryan,Don't Worry
3:Highway Part2
4:Smile
5:Predator
6:Summer Frequence
7:Sacrifice
8:Ain't Gonna Kill
9:Life Like Movies
10:Just for What
11:Light a Fire
12:Bruised
13:Rest In Peace
14:I Wanna Make You Feel Alright
15:Longest Dreamer
16:Balance
17:Starting New Life
18:Longest Dreamer
19:Dear My Empire
20:Hide and Seek
21:One Last Time,I'll Try To Be With You
22:Overdrive
EN1:DA NA NA
EN2:Time To Wake Up
EN3:Show Me Your Courage
EN4:Good Fight & Promise You