「MATSURI STUDIOからやってまいりました、ZAZEN BOYS!」という軽い口上程度のMCで、ひたすらストイックな演奏を展開したZAZENの4人。個人的にも数限りなく観ているZAZENのアクトの中でも、キャパ300程度のFEVERは最小の部類だと思う。“I don’t wanna be with you”の鋼鉄ディスコ・ファンクも、切れ味鋭い“Honnoji”のテレキャス・サウンドも、今や核弾頭級の破壊力を獲得した音の1つ1つが至近距離からびしばし飛んでくる。この手のスペシャルな対バンの際には、相手バンドへのサービス・コメントの1つも期待するところだが、前述の「MATSURI STUDIOから~」、そしてメンバー紹介、退場間際の向井の「乾杯!」コール以外はMCすらなし。“HIMITSU GIRL'S TOP SECRET”“COLD BEAT”などをひたすら連打していく。だがそれがいい!という感じの、ストイックにして強靭なアクト。向井のみならず、カシオマンも吉田一郎も松下敦も、もはや「武士は黙して語らず」的な殺気すら感じさせるステージだった。約40分。
続いてiLL! “Zero”“Eden”“Seagull”“With U”など、『Turn a』からたった4ヵ月でリリースした最新アルバム『Minimal Maximum』の楽曲を中心に披露していくのだが、これがすごい。アンビエントとノイズとエレクトロが一緒になったような轟音セッションから、スチールドラムとノイズのハーモニーが乱反射する“Zero”、そして原曲のシンプルでミニマルな手触りから一転してグランジ爆音ギターの嵐が吹き荒れる“Eden”、そのエッジィなギター・サウンドでそのまま“Kiss”の軽快なビートを乗りこなし……と、ロックンロールとエレクトロニック・ミュージックの両極端を1つのアンサンブルに強引に凝縮したような戦慄のアンサンブル。“With U”ではギターウルフのセイジが憑依したか?ってくらいの勢いでギター・アンプの音量を上げ、agraph/西竜太/ナスノミツル/沼澤尚という強者揃いのバンドが繰り出すテクノなビートと極太ベース&シンセ・サウンドすらかき消さんばかりの轟音とフィードバック・ノイズを振り撒くナカコー。曲数こそ6曲ながら、約1時間にわたって電子音とギターが渦巻く壮絶なアクトだった。
やはりステージ中は一言も(オンマイクでは)しゃべらなかったナカコー。最後の“Flying Saucer”の後、「この後、ZAZENと、やるから。一時撤収! ちょっと待ってて」という言葉に色めき立つオーディエンス。ほどなくしてiLLチームが、そして向井&カシオマンがオン・ステージ! ステージ中央に向かい合うようにセッティングされたのは、向井のキーボードとナカコーのDJセット。ナカコー「セッションでございます」 向井「なんで見つめ合ってやんないといけないの?(笑)」と本人たちも言っていたが、90年代末にこの2人をそれぞれスーパーカー/ナンバーガールで観た時には、2010年にまさかこんな形での共演が実現するなんてまったく想像できなかったし、妙に感慨深いものがあった。
その後、「フリーでセッションして、何かやれれば、と」というナカコーの言葉とともに、荘厳と呼んでもいいくらいの轟音が轟く! そこからエレクトロニック・ファンクのフリーキーなセッションに突入。ギターとノイズとシンセ音を操りながら、それぞれにちびりちびりとビールを空けていく向井とナカコー。ビートがブレイクしたと同時に向井が“チャルメラ”弾いたーーと思ったら全楽器が真っ白にスパークしたような爆音を奏で、向井のキーボードにアサインされた「こらおもろい!」「あー!」「死ぬまでダンス!」といった向井語録を次々に再生してフロアを沸かせ、そのままiLL&向井の共演曲“死ぬまでDANCE”へと突入! 30分に及ぶノンストップ・セッションでキワキワの才気を見せつけた2組。セッションが終わった後、「こらおもろい!」の音を鳴らした向井に「うん、おもろい」と応えてみせたナカコーの満足げな表情が、いつまでも頭に残った。(高橋智樹)