のあのわ@東京キネマ倶楽部

のあのわ@東京キネマ倶楽部
のあのわ@東京キネマ倶楽部
のあのわ@東京キネマ倶楽部
ボーカル/チェロを担当するYukkoの透明感のある歌声と、深みのあるチェロの音色。そしてその周りを固めるメンバー達の緻密かつ遊び心たっぷりの演奏によって、まるでおとぎ話の世界のように煌めくポップな世界を描き出すのあのわ。そんな彼女達のワンマンライブツアー「MAGICAL CIRCUS TOUR 2010」のファイナルを飾る本日の会場は、鴬谷にある東京キネマ倶楽部。昭和中期に流行したグランドキャバレーの内装をそのまま残した独特の雰囲気を持ったライブハウスで、そのレトロでロマンを感じる内装は、のあのわのようなドラマチックな音楽にぴったり合いそう。そんなことを考えているうちに開演時間。客電が落ち、幻想的なブルーのライトがフロアのあちこちを照らしだす。そしてどこからともなくハンドクラップが始まった会場に、ベネチアンマスクを着けたゴウ(G)、本間(Dr)、荒山(Key)、そしてピエロのマスクを着けたnakame(B)が登場。そのままオーディエンスのハンドクラップをパーカッション代わりにして、4人で横並びになりながらリズムをとっていると、ステージに併設されたバルコニーからYukkoが登場! そのまま階段をゆっくりと下りながら、メンバーと掛け合いをするように“lalala-uh-uh-yeah!”を揚々と歌い上げる。まるでミュージカルのような華やかな演出だ。

そして各々が配置についたところで、“愛をこめて”の演奏が始まった。ギター、ベース、ドラム、キーボード、チェロという、情報量の多いバンドアンサンブルにのって、どこまでも伸びやかなYukkoの透き通った歌声が会場の空気を心地良く振るわせる。そして疾走感のある“グラデーション”、ハンドマイクを持ったYukkoがステージの至る所でダンスを披露しながら歌う“マイガール”というような、思わず心が躍り出す、カラフルな楽曲を連続でプレイ。その高揚感と比例するかのように、フロアの温度もどんどん熱を帯びていく。

ライブ序盤はひたすらワクワクするような楽曲を連続させてきた彼女達だったが、浮遊感のある打ち込みの音を導入したバンド初となるエレクトロチューン“FOCUS”の後に披露された“スクォンクの涙”での、《正解こわして 狂って狂っていく》という歌詞が、のあのわのポップさの裏側に隠れた、ほんのわずかな狂気の匂いを会場に漂わせ始める。やや抑制気味だった演奏が、Yukkoのシャウトを合図に解き放たれて一気に広がっていくというドラマチックな一幕もあった。そして一度メンバーがステージを去り、残されたYukkoが1人でキーボードを弾きながら、大切な人との別れを描いた“つないで”を、優しくしっとりと歌い上げる。

その後はYukkoの紹介と共にステージ袖からメンバーが登場するという、少し変わった趣向のメンバー紹介を経て、“星が見える日は”をプレイ。この曲には会場全員でコーラスをする部分があって、その練習を曲中にコールアンドレスポンスを使って行い、最後は、フロアの前の方だけでなく、後ろの方も、更には2階のオーディエンスまでも巻き込んだ壮大な大合唱に発展! ここで生まれた一体感をそのままに、オーディエンスのハンドクラップに彩られた“もぐらは鳥になる”では、荒山とゴウのドラマチックできらびやかなアンサンブルの中を、リズム隊の生み出す疾走感のあるビートにのってYukkoの伸びやかな歌声が跳ねるように駆け抜けていく。

終盤は、好きな人と、友達でも恋人でもない微妙な距離にいる女の子の気持ちを歌った“Sweet Sweet”、遠くにいなくなった大切な友達に贈った“流星”というような、胸が締め付けられる切ない楽曲を披露して、フロアは少ししんみりとした空気に。しかしいつまでも落ち込んでばかりじゃだめだと言わんばかりに、彼女達は次の“ゆめの在りか”によって、《もう一度ゆめの国へ行こう》と、我々の心を歓喜の色に染め上げてくれた。ここでの、途中でブレイクが入って、そこからクライマックスの大サビに突入していく流れは感動的なまでに素晴らしかった。また、ゴウとnakameが本間の近くまで行って向き合いながら、それぞれの楽器を同じリズムで鳴らす場面は、彼らの様子が本当に仲が良さそうで楽しそうで、見ているこっちがなんだか幸せな気持ちになった。

ラストは、「みんなに歌った歌なんです。みんながこうやって来てくれるとがんばろうって思えるし…だからみんなにこの歌をプレゼントします!」というYukkoのMCから、明るく前向きな気持ちにさせてくれる“ネバーランド”を披露して、本編は終了。チェロの弓を置いて両手を広げて歌を届けようとするYukkoの姿は、堂々とした迫力と力強い活力に満ちていた。

アンコールでは、「今日のみんなと一緒に写真をとりたいんだけど…」と言うYukkoの声から、記念写真を撮影。そして、「みんなが来てくれるから、こうやってキネマ倶楽部でライブができたし、本当にみなさんに感謝しています!」と、ここまで一緒にライブを作り上げてくれたオーディエンスへの感謝を口にして、「とっても優しい歌なので、この気持ちを家に持って帰ってください!」と言って“夜明け”をプレイ。最後はバルコニーにのぼって横一列でおじぎして、少し名残惜しそうにステージを去っていった。彼女達への感謝をこめた拍手は、照明が点いて、BGMが流れ始めても、いつまでも鳴り止むことはなかった。

キラキラした夢のような幸福感。時には我々の胸をえぐるような大きな悲しみ。そしてそれを跳ね飛ばして笑っていられる強さ。その全てが、のあのわの描く世界にある。本当に、心が洗われるようなライブだった。(前島耕)


[セットリスト]

1. lalala-uh-uh-yeah!
2. 愛をこめて
3. グラデーション
4. マイガール
5. カエルのうた
6. ループ、ループ
7. FOCUS
8. スクォンクの涙
9. ハク
10. つないで
11. 星が見える日には
12.もぐらは鳥になる
13. STAR HOUSE
14. Sweet Sweet
15. 流星
16. good day
17. ゆめの在りか
18. ネバーランド

アンコール
1. 夜明け
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