flumpool@横浜アリーナ

flumpool@横浜アリーナ
flumpool@横浜アリーナ - pics by hajime kamiiisakapics by hajime kamiiisaka
ステージ中央には3面の巨大なLEDスクリーンがどんと設置され、会場内が暗転すると“Snowy Nights Serenade~心までも繋ぎたい~”のPVが映し出される。……いや、何か違うぞ。雪の降りしきる夜の公園のベンチ、という舞台シチュエーションはオリジナルのバージョンと同じなのだが、メンバー4人が横に並んで座り、そしてサラリーマンや女子学生etc.までが参加してコーラスを加えているのである。その映像が終わると、つい立てのようなその3面スクリーンがそのままゆっくりと上昇し、その背後に控えていたflumpoolが演奏をスタートさせる。華やかなオープニング・ナンバー“reboot~あきらめない詩~”で、ステージの幕が切って落とされた。まるで止まっていた時間が動き出すように、バンドの手前でパントマイムのような振り付けを踊る4人のダンサーたち。大阪城ホールで2日間、横浜アリーナで2日間という日程で行われてきた、flumpoolの2010年末スペシャル・ライブは、いよいよ千秋楽だ。

観客席が照らし出されると、スタンド席からアリーナ席から零れ落ちんばかりの(←みなさん気をつけて)人また人、という光景で視界が満たされる。オーディエンスは総立ちになって歓声を上げ、ステージに向けて掲げた腕を振っていた。冬休みということもあってか、学生、それも十代前半と思しき若いオーディエンスも多く目につく。そんな光景を目の当たりにしてか、スティックを振るう小倉誠司(Dr.)はさっそく、込み上げるものを押さえ切れない、とばかりに満面の笑みを浮かべている。flumpoolのダイナミックなバンド・サウンドに、サポート・キーボード奏者・高藤大樹が制御するスケールの大きなストリングス・アレンジが重ねられてゆく。上昇した3面スクリーンはステージ上方に落ち着いた形だが、それだけではなくステージ後方の壁面一杯がLEDスクリーンになってド派手なCGアニメーションを映し出している。動員数もサウンドもビジュアルも、とにかく異様にスケールがでかいのである。

“Calling”で山村隆太(Vo./G.)は、それまで掻き鳴らしていたギターを手放し、ハンド・マイクに切り替えて中央にせり出した花道を進む。音楽的な部分でも視覚的な部分でも、これだけ大掛かりな演出に押し負けないflumpoolのバンド基礎体力は凄い。デビューしてから瞬く間に大型会場での舞台に立つようになった彼らだが、観る度にまたその懐が大きくなっていることを実感する。シンガロングを煽り立てた山村に続いて、それぞれの楽器をプレイしながら阪井一生(G.)と尼川元気(B.)も花道に躍り出てくるのだった……それはちょっとファッション・ショーみたいだぞ、という思いも一瞬、脳裏をよぎったのだが。

舞い散る桜の花びらの映像とともに、一陣の風が吹き抜けるようなコーラスが歌われる“今年の桜”。山村がアコースティック・ギターを抱え、キラキラとしたバンド・サウンドで聴かせる“最後のページ”。そしてエキゾチックかつエモーショナルな、阪井の跳ね上がるギター・リフに導かれた“サイレン”と、約1年前にリリースされたファースト・アルバムからそれぞれ表情豊かな楽曲群が届けられる。多彩なメロディを生み出して作曲でイニシアティブを執りながら、スタイリッシュかつ爆発力のあるギター・プレイを披露する阪井は本当に素晴らしい。と思っていたら、その阪井がこんなことを話し始める。

「今回の年末ライブは楽しみでもあり、不安でもあったんですよ。で、占ってもらったんです。そしたら、最後に見てもらった占い師、《あなた自身が意志をしっかり持っていれば、必ず成功する》って言ってくれたんですよ! すごくないですか!? ただその人、ひとつだけ欠点があって、語尾に《たぶん》って付けるんですよ。占い師が《たぶん》って付けたら、あかんやろ。そしたら俺でもええやん! 追々聞いたらその人、人生で初めて占ったのが僕らしいんですよ。熱い握手を交わしたら、その人の手、尋常じゃなく震えてました(笑)。今日は、その人のためにも絶対に成功させなきゃならん。終わったら、成功したよ、って言いに行くんだ!」

普段は率先してイジられ/笑かしキャラを買って出る阪井の、繊細さと人の良さが垣間みられた一時であった。しかし、ピアノの旋律が寄り添う静謐な“残像”、オーディエンスによる視界一面のタオル回しが壮観な“回転木馬(メリーゴーランド)”などを経たのち、メンバー紹介の段では例によって山村に徹底的にイジり抜かれてしまう阪井であった。武道館ライブでも披露されていた、幼少期~少年時代の写真を持ち出すメンバー紹介なのだが、顔面全域にモザイクを入れられるわ、アバター風に画像処理されてしまうわで、阪井はまともな写真すら出して貰えない始末。ただし、今回は阪井もこっそりと、復讐を試みていたのだった。曰く「人生最大の汚点」、禿げヅラで漫才を披露する山村の図である。

南東⇔北西に横長な建物内の、南東側にステージが設置されていたため、北西側のオーディエンスに配慮して設けられたセカンド・ステージで楽曲を披露する一幕もあった。“タイムカプセル”を歌う気満々の阪井の前で、「カズキ(阪井)の歌、聴きたくない人!」という山村の振りに正直に手を挙げてしまうオーディエンスも心得たものである。“花になれ”イントロのストリングスによるメロディには、鋭く反応して一斉に大きな歓声を上げる。そしてメイン・ステージに戻って美しい映像の中、今回のステージ・タイトルとなった“Snowy Nights Serenade~心までも繋ぎたい~”が披露された。豪華なサウンド、派手な演出が続く中で、時折クリスマス・シーズンらしい、ホーリーで静謐な瞬間が会場内にもたらされるのも効果的だ。

“MW~Dear Mr.&Ms. ピカレスク~”。この曲を聴くたびに、荒々しくダイナミックな表現を見せるflumpoolのロック・バンドとしてのポテンシャルもまだまだ計り知れないな、と思う。尼川にリード・ボーカルが譲り渡される“ハイドレンジア”からは、コール&レスポンスを交えた“labo”、そして“星に願いを”と鉄板のキラー・チューン連打によって、ライブ本編を締めくくったのであった。小倉はまたも嬉しそうに笑いながらドラムを叩き、口元では歌詞をなぞっているのが分かる。先に熱いドラム・ソロも見せてくれたが、彼は「歌の呼吸に寄り添い、歌を支える」ドラマーだ。

マイケル・ジャクソンに扮したかのような阪井が、ひとりステージで踊り始める。そしてそのまま、登場したダンサー達とともに振り付けをレクチャー。アンコール1曲目“夏Dive”のためのものだ。つくづく、サービス精神旺盛な男である。そして、『あいのり2』のテーマ曲としてオンエアされ始めたばかりの新曲“two of us”も披露された。年が明けて1/26には、いよいよニュー・アルバム『Fantasia of Life Stripe』がリリースされる。そして4月からは全国ツアーが行われるそうだ。山村は、最後にこんなふうに語っていた。「今回は遠くから来てくれた人もたくさんいると思うけど、次は僕たちが会いにいくから。音楽でしかみんなのこと応援できんけど、2011年を素晴らしい年にしましょう」。(小池宏和)

セット・リスト
1:reboot~あきらめない詩~
2:Quville
3:Calling
4:今年の桜
5:最後のページ
6:サイレン
7:残像
8:回転木馬(メリーゴーランド)
9:Hello
10:春風
11:タイムカプセル
12:花になれ
13:Snowy Nights Serenade~心までも繋ぎたい~
14:君に届け
15:MW~Dear Mr.&Ms. ピカレスク~
16:ハイドレンジア
17:labo
18:星に願いを
EN-1:夏Dive
EN-2:two of us
EN-3:フレイム
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