ロッキング・オンの音楽フェス『COUNTDOWN JAPAN 08/09』への出場権をかけたアマチュア・アーティスト・コンテスト「COUNTDOWN JACK」としてスタートしたのが「RO69JACK」の第1回目。それから夏・冬の年2回恒例のコンテストとして定着し、今年の年明けCOUNTDOWN JACK 10/11で早5回目が開催されたことになる。その歴代優勝アーティストが一堂に会するイベント、『JUMPIN'JACK FLASH』の2日目がSHIBUYA O-WESTにて行われた。本日集結したのはBxAxG、オーイェーズ、スメルマン、溝渕 文、ALL OFF、WHITE ASH、ブルボンズ、plentyの8組。音楽性はもちろん、音楽に向き合うスタイルや姿勢も8者8様のやり方で異なり、あらゆるジャンルを一手に体感することのできる贅沢な時間だった。
出演順にショートレポートをお届けします。
■ BxAxG
トップバッターに相応しい、エネルギッシュでパワフルなミクスチャー・ロックを叩きつけてくれた茨城出身6人組、BxAxG。2010年の夏に出演を果たした記憶にも新しいバンドだ。胸には「BxAxG」、背中には「楽」の文字をあしらったお揃いの赤いベースボール・シャツが眩しい。「今日は思い切り楽しんでいきましょう!」と初っ端“Believer”から縦横無尽にステージを行き来して、前のめりにフロアを温めていくNAOI(Vo)とHIRO(Vo)の二人。ストレートでポジティブな言葉をNAOIのエモーショナルなボーカルとHIROの畳み掛けるようなラップに託し、へヴィでタフなバンドアンサンブルを伝って炸裂していく。「まだまだエンジンがかかってないようですね」とコール&レスポンスで煽っていくと 、重厚で硬質なグルーヴを叩きつける“SBY”で一気にヒートアップしていく。「こうして当たり前のようにステージに立って、演奏できていることが本当にうれしく感じます」と感謝の言葉を語ると、軽快なリズムでフロアに笑顔の花を咲かせた“HANABI”、そして「生きてるだけで人は頑張ってるから」というNAOIの叫びがこだましたラストの“DAYS”まで、一気に駆け抜けていった。
■ オーイェーズ
マイケル・ジャクソン“Black Or White”をSEに登場したのは記念すべき第1回目の覇者としてCOUNTDOWN JAPAN 08/09に出演したオーイェーズの3人。どこまでもキャッチーで挑戦的なメロディが胸を突いて止まない“Good day,Good night, Good bye”で、オーディエンスのハートをがっちりと掴むと、そのまま“少年仮面サンシャイン”へと雪崩れ込む。少年の心を持った立派な大人3人が紡ぎ出す人懐っこくて甘酸っぱいメロディはキラキラとした輝きを放っていた。《嫌いじゃないけど 好きじゃない》と繰り返される“ラヴとヘイト”のセンチメンタルな響きは格別だ。そして、「僕たち、この曲でロッキング・オンに拾ってもらったんですよ」と2年前を思い返すようにして奏でられた“フューチャーマン”もやっぱり最高だった。最初に聴いたときと変わらないキレのあるメロディと、汗と埃にまみれて全力疾走するような懸命さが、観ている私たちをドキドキさせてくれる。そんな2年前からの成長を見せつけんとばかりに5月5日に発売されたばかりの新曲“桜むつき”を披露。いつに増して熱を帯びたカルメンの歌が胸を揺さぶる。これからのアンセムとなりそうだ。ラストは“アンドロメダ急行”。究極にロマンティックなメロディラインが涙腺を緩ませた素敵なステージだった。
■ スメルマン
RO69JACKの歴代優勝者の中で最も異彩を放っていたのはこの5人組だろう。「マイク5本でロックしにやってきましたスメルマンです!」という挨拶とともに会場に響き渡った5人のハーモニーは、いきなりオーディエンスを圧倒。とても人の声とは思えない重厚感たっぷりのナカシマダイゴのベースコーラスに、自由自在にリズムを繰り出していくハヤシヨシノリのボイスパーカッション、オーバードライブのかかったようなギターの音色を彷彿とさせるアイカワシンゴのエレクトリックコーラス。この3人の職人技のように放たれるサウンドにムトウダイスケ、ヨシタニアキラのロック・ボーカルが共鳴していくという切れ味の鋭い最強のパフォーマンスを展開していく。メンバー紹介のソロパートでその技量の高さを証明したところで、“SAKEⅡ”でさらにテンションを上げていく。極めつけは、「ロック好きなみんななら知っているであろうカバーを持ってきました」と言ってマキシマム ザ ホルモンの“ロッキンポ殺し”を披露。革新的に生まれ変わったスメルマンならではのカバーでオーディエンスを沸かせ、「ここにいるみんなに贈る曲です」といって“LIVE HOUSE”をプレイ。ジャンルやスタイルを超えて「音楽」を介して会場が一体となった瞬間だった。
■ 溝渕 文
続いて本日出演のアーティストの中では紅一点、ボーカリスト、溝渕 文。アコースティックギターとパーカッションの2人を率いてのアコースティック編成で届けられた今日のライブは、彼女の息遣いもが伝わってくる生々しい歌声がヴィヴィッドに映える編成だ。セットリストはすべて明後日5月11日に発売されるメジャーデビューアルバム『アサガタノユメ』の楽曲から。1曲目の“Color Color Color”から、彼女の歌声はさまざまな表情を見せていく。優しく包み込むような慈愛に満ちた声を響かせたと思えば、天にも突き刺さるような鋭い高音を響かせたり、艶のある低音を情感たっぷりに歌い上げたり……凛とした佇まいから生み出される歌の力に圧倒され、フロアはその世界にどっぷりと浸かっていく。歌声のみならずMCで見せるあどけない笑顔とその陽気さにも絆され、彼女のアーティストとしての魅力にどんどん引き込まれていく。そして、4曲目“CHARGE”での生命力が溢れ出すような瞬間、こんなにも幸せなことがあるだろうかと恍惚の表情で歌う姿から、観ているこちらもエネルギーを分けてもらったような気持ちになる。ラストは“雨粒”。メランコリーに歌い上げるオープニングから、サビメロに向けて開放感へと変わるドラマティックな展開で豊潤なボーカルを存分に発揮した。存在感抜群のステージだった。
■ ALL OFF
意気揚々とステージに現れ、終始挑発的に攻め続けていったのはCOUNTDOWN JAPAN 08/09に第1回目の優勝バンドとして出演を果たしたALL OFF。松浦(Vo)は常にモニターの上に立ち、フロアの一人ひとりに目線を合わせていくようにして「Put your hands!!」と煽り立て叫び続ける。「みなさんがどのバンドを見に来たか関係ありません。俺らは第1回目の優勝者として出させてもらっています。1バンドとして、そして最初のバンドとして責任持ってここを盛り上げるので、最後までついてきてください!」と強い責任感をもってこのライブに臨んでいることを宣言し、圧倒のグルーヴを叩きつける。COUNTDOWN JAPAN 08/09で観たときにも広い会場に負けないスケール感を持ったバンドだなと思ったけれど、2年の時を経た今も常に闘志を燃やし続け、さらなる勢いを感じることができた。「人生は人とのつながりがすべてだと思います。僕らがここに立てているのは、僕らだけの力じゃなくて、ここにいるみなさんとのつながりの恩恵を受けて立たせてもらっています」と感謝の気持ちを伝えて“I'll Be There”をプレイ。静謐なナンバーだが、拳を突き上げるタイミングをフロアに伝え共に絶叫するという一体感に溢れるステージを見せてくれた。
■ WHITE ASH
「今日はみんな、お目当てのバンドがいると思うけど、それを全部いただきに参りました」とのび太(Vo/G)がほくそ笑みながら、さらっと言い放ったその発言のとおり、ギラリと黒光りするような異様な存在感を放つ4ピース・ギターバンド、WHITE ASHはすべてかっさらうかの勢いで次々とへヴィーなナンバーを畳み掛けていく。オープニングで爆音を轟かせた“Ugly Marguerite”からの“Stranger”。鋭利なギターサウンドに濃厚に絡みつく低音と疾走していくリズムが快感だ。“Thunderous”で聞かせたセクシーで伸びやかな高音ボーカルは本当に癖になりそうなほど中毒性に溢れている。名前こそ「のび太」だが、彼が持つ魅力は果てない。先ほどまでのソリッドなギターロックが嘘のように甘美なアルペジオの響きが優しい“Hello, Afternoon”でオーディエンスを柔らかく包み込むが、再び“Ray”で強烈なグルーヴを浴びせかけフロアを突き放してはかき回し、翻弄していく。その緩急の激しさにすっかりオーディエンスは彼らの虜になっていたようだ。
■ ブルボンズ with 白井幹夫(ex. ↑THE HIGH-LOWS↓)
続いては第1回目のRO69JACKの優勝者、ブルボンズの登場。今回は元↑THE HIGH-LOWS↓のキーボーディスト白井幹夫をゲストに迎えた5人編成での出演だ。SEとともにまず姿を現したのはタクミブルボン(Vo/G)。カメラを手に会場に「ピース!」と声をかけながらフロアの写真を撮って場をわかせる。1曲目は“イッツオンリーロックンロール”。ブルボンズの王道のロックンロールナンバーを白井の弾むようなロック・ピアノが鮮やかに染め上げ、壮大な景色を描き出す。「うさんくさいことはいっぱいあるけど、ロックンロールだけは信じてやっていこうと思います」とロックンロールへの忠誠心を誓ったバカ正直で真っ直ぐすぎるメッセージ全開の“ロックンロール以外は全部嘘”ではアコギに持ち替え、カントリー調で陽気に攻めていく。正直すぎたり、感情を吐露しすぎたりすることは、時に誤解を生むことにもなるのだがブルボンズは決してそれを恐れない。強烈なメッセージはロックンロールを介することで彼らの最大の武器になることを知っているからだ。ラスト前に披露された“グリーン”は、そんな強さと生きていく術のようなものを兼ね備えた名曲だと思う。ロックンロールへの愛に溢れるステージだった。
■ plenty
JUMPIN'JACK FLASH、2日目のトリを飾ったのは、plenty。静謐なギターのアルペジオで始まる“東京”で幕を開けたのだが、最初の一音、一声を聴いた瞬間に、以前にも増して一つ一つの音を大事に、意味を持たせながら紡ぎだしているのを感じる。何度もライブで聴いてきた楽曲にこそ、その進化ぶりが表れていて嬉しくなる。続く2曲目は5月25日に発売予定の2nd epから“待ち合わせの途中”が披露される。かき鳴らされるストロークと高音で叫ぶような歌に、かきたてられるような焦燥感を憶える。しかし、今のplentyには頭の中をぐるぐると思考回路を張り巡らすようにして自問自答する段階から一歩その先を見た、他者との繋がりを求めている。それは楽曲にも表れているし、ライブでのオーディエンスとの向き合い方からしても表れている。江沼は「寝てもらってもいいですよ。僕らは勝手にやってるんで」なんてこぼしていたけれど、plentyの音楽が会場に鳴り響けば寝てなんかいられるわけもなく、plentyしか描けないその世界にどっぷり浸かっている。そして、奏でる音楽が正しく伝わっていることに彼ら自身が素直に歓びを感じ始めているのは、オーディエンスとの繋がりを求めていることほかならない。“人との距離のはかりかた”を聴いてそんなことを思った。ラストは“枠”。加速度を増し、熱を帯びていくグルーヴに身体も心も大きく揺さぶられ、圧倒の威光を残してステージを後にした。
2011年夏のROCK IN JAPAN FES.への出場権をかけた「RO69JACK 2011」の一次選考通過アーティストの発表もスタートした。次回はどんな優勝者が輩出されるのか、ぜひあなたの目で確かめて投票に参加し、ライブを目撃してほしい。(文=阿部英理子/撮影=柴田恵理)
JUMPIN’JACK FLASH @ SHIBUYA O-WEST
2011.05.08