19:05。ビートルズのSEが鳴り響いて万華鏡のようなイメージ映像が流される。暗転したステージにまず現れたのは、ダース・ベイダーばりの黒装束に身を包んだアイゴン(G)。さらにシド・ヴィシャス風パンク・ファッションの斉藤(G/Piano)→胸元に「P」の文字をあしらったオレンジ色のつなぎ……つまりPOLYSICSまんまのユニフォーム(!)を着たコテイスイ(Dr/Perc)→白装束をまとったフィリポ(Dr/Perc)→顔面包帯ぐるぐる巻きの宮川(B)が次々に登場し、各々の楽器を鳴らしていく。無数のライトが妖しい光を放つ中、場内に渦巻く分厚いグルーヴ。そこにド派手なアフロキャップと仮面をかぶった須藤(Vo/G)が登場し、“有限の脳でマスターベーション”でゆるやかにキック・オフ! フィリポがステージ前方でダイナミックにアクションした2曲目“髭よさらば”を終えた頃には、サイケデリアとアナーキズムが交錯するドラッギーなHiGEちゃんワールドが場内を完全制圧していた。
今夜のセットリストは、HiGEがもつエッジーなパンキッシュ・サイドと甘美なロマンチック・サイドをバランスよく堪能できる内容。“黒にそめろ”、“テキーラ!テキーラ!”などの地を這うビートが炸裂するナンバーと、“サンシャイン”“せってん”などの酩酊感たっぷりのスロウ・チューンが交互に繰り出され、場内の時空を否応なしにゆがめていく。「13日の金曜日たのしみにしてたよ。クリーチャーども、ありがとう!」「恵比寿の街はジェイソンしてた?」という、須藤の愉快犯的なMCも絶好調だ。しかしなんと言っても今夜の聴きどころは、中盤にプレイされた3つの新曲。牧歌的なメロディが心地よいミドル・チューン、疾走感あふれるシンプルな楽曲、アバンギャルドなグランジ・ナンバー……と、そのどれもが一筋縄ではいかないひねくれ感と無軌道な浮遊感に満ちていて、胸が躍った。
さらに素晴らしかったのが“ダーティーな世界(Put your head)”“ロックンロールと五人の囚人”のアッパー・チューン2連打に続いて終盤に鳴らされた、“虹”。「サンキュー!」「愛してるよ!」を連発しながら両手をいっぱいに広げて歌う須藤、多幸感に満ちたダイナミックな音像には、聴き手の心をダイレクトに動かす熱がバンド史上最高に満ちていた。もちろん『サンシャイン』のツアーでもそのビックリするような開けっぷりは既に感じられたけど、今夜のライブではそれがより堂々と、確信的に放たれているような気がしたのだ。本編ラストを攻撃的なナンバーではなく、「あまり最後にやらない曲なんだけど」という前置きとともに珠玉のバラード“君のあふれる音”で締め括ったあたりにも、現在HiGEが最高にエモーショナルでロマンチックに極まっていることが見て取れてた。
アンコールでは斉藤の暴走でDeep Purpleの“Burn”をおもむろに演奏したり、コテイスイがつなぎに貼りつけた「POTEISUI(POLYSICSの「P」にちなんでます)」というワッペンをネタに爆笑トークを展開したりと、悪ノリ感満載でフロアを沸かせていく。さらに“ボニー&クライド”“ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク”“ギルティーは罪な奴”でフロアを絶頂に導いて終幕。偽悪的でトリッキーでありながら、伸びやかなポジティヴィティに満ちたパフォーマンスの連続に、現在のバンドの好調っぷりをそのまま目撃したような2時間だった。
ちなみに、須藤はライブ途中にこんなことを言っていた。
「今どんどん曲ができてるんだよね。今年後半には音源ができると思うよ」
HiGEちゃんの2011年の快進撃は今まさにはじまったばかりだ。(齋藤美穂)