SOIL&”PIMP” SESSIONS @ 恵比寿リキッドルーム

SOIL&”PIMP” SESSIONS @ 恵比寿リキッドルーム
「みんなでニコニコ!」「みんなでニコニコ!」「飲んで飲んで飲んで!」「飲んで飲んで飲んで!」「踊って踊って踊って!」「踊って踊って踊って!」……と、とびきりお茶目なコール&レスポンスで社長が煽ると、地鳴りのような歓声が沸き起こる。SOIL&”PIMP” SESSIONSがゲスト・アーティストを招いて東名阪をサーキットする「ニコニコツアー 2011」。大阪公演ではPE’Z、名古屋公演と昨日の東京公演初日ではハナレグミときて、最終日の今夜はカルメラとquasimodeが参戦。どちらもSOILを「SOIL兄さん」と慕ってワールドワイドに活躍するインスト・ジャズ・バンドということで、躍動感と緊張感に満ち溢れたインプロヴィゼーショナルな音の競演が展開された。

19:00ジャスト、揃いのグレイのジャケット・スタイルでオン・ステージしたのはカルメラ。昨年5月に1stアルバムをリリースした、大阪を拠点にライブ活動を続ける8人組である。今回はSOILが期待を寄せるPICK UPアーティストとして参戦。東京ではまだまだ知名度の低い彼らだけど、初っ端でいきなりSOILの“マシロケ”をお見舞いしてオーディエンスの心をガッチリと掴んでいく。その後はサンバやサルサなどのラテン風味漂う軽快なナンバーでフロアの熱をじりじりと上げていく。トランペット×2、トロンボーン、アルト・サックスという4本のホーンが織り成す分厚いサウンドが印象的。8人という大所帯で鳴らされているせいか、時折アンサンブルにバラつきがある箇所も見られたが、そんな荒削りな部分すらも牽引力へと変えていくパワフルなエネルギーがその演奏には漲っているように思えた。7月2日には2ndアルバムもリリース。今後さらなる活躍を期待したいバンドだ。

2番手は、ジャズ・レーベルの最高峰「BLUE NOTE」から数々のアルバムをリリースしているquasimode。SEなしでステージに上ると、松岡”matzz”高廣(Perc)の「今日はノンストップで行くからついてきてくれー!」というシャウトからキック・オフ! matzz&
今泉総之輔(Dr)が打ち鳴らすコシの強いミドル・ビートに乗って、グランド・ピアノ、フルート、ホーン、ウッド・ベースが息をもつかせぬソロ・リレーを繰り広げていく。特に素晴らしかったのが、今泉のキレのあるドラミング。ダイナミック且つ正確にリズムを刻んでいく清冽なビートが、彼らのグルーヴィーなサウンドに独特の透明感を与えているように思えた。NHK教育(Eテレ)番組『資格☆はばたく』のオープニング・テーマに起用されている“OK, Take Off”など、流れるようなクラブ・ジャズ・サウンドでフロア
をじっくりと揺らした60分。とても濃密で優雅なアクトだった。

そして21:20、ついに真打・SOIL&”PIMP” SESSIONSが登場! いつもの荘厳なSEに乗せて秋田ゴールドマン(B)を先頭にメンバーが登場すると、「うぉー!」という雄叫びが沸き起こる。そして1曲目“KEIZOKU”へ! 丈青の性急なピアノのフレーズを皮切りとして元晴のサックスとタブゾンビのトランペットがけたたましく鳴り響くと、フロアは早くもヒートアップしていっせいに踊りはじめる。続く“閃く刃”では、青白い稲光のようなセッションと社長のアジテートが場内の戦闘モードを高めていく。組んず解れつ疾走するサウンドはスリリングでありながら、一音一音がとにかく艶っぽくてクリア。一切の歌詞がない中で、衝動、快楽、激しさや美しさなどさまざまな感情と情景を鮮やかに呼び起こす饒舌なサウンドにただただ恍惚としてしまう。

しかし何より目を見張ったのが、そのステージ・パフォーマンス。フロアを縦横無尽に駆け回りながらサックスを吹き鳴らす元晴、お立ち台から伸びやかなフレーズを響かせるタブゾンビは勿論のこと、メンバー全員がアクロバティックなパフォーマンスを次々と炸裂させていく。とても10本の指だけで鳴らされているとは思えないぐらいスピーディーな手さばきでビートを奏でていく秋田ゴールドマン(“Mature”)、肩がけのキーボードをエレキギターのように弾き鳴らす丈青(“GO NEXT”)、曲間にプリミティブなドラム・ソロを披露するミドリン(“SAHARA”)……と、一瞬たりとも見逃せないパフォーマンスの連続。自身の見せ場以外ではステージ脇でプレイを盛り上げるメンバー同士の息の合ったステージングも含めて、まるでブロードウエイか超一級のミュージカルのような煌びやかなムードがステージ全体に満ちている。勿論ステージ中央の卓上でエフェクターを操ったりフロアをアジテートしたりしながら、それらすべてを統率する社長のパフォーマンスも見逃せない。とにかくカッコつけるときはとことんまでカッコつける、そんなマインドが貫かれたショウマンシップ漲るアクト。そこにはどんなに凶暴でソリッドなサウンドが吹き荒れようとも、聴き手を一人残らず快感へと導く最高にオープンでキャッチーな空気が流れているということを、改めて証明するシーンだった。

SOIL&”PIMP” SESSIONS @ 恵比寿リキッドルーム
♪ラーラーラーという大合唱を生み出した“Fantasic Planet”では、カルメラをステージに招き入れて肉厚なグルーヴを放出。さらには「ちょっと時間が押しているんで進行を無視して突っ走ろうと思います。今から始まることは一切打ち合わせしていません!」として、quasimodeも加えての即興セッションをプレイ! 次に何が飛び出すかわからない、セットリスト無視のスリリングな展開で絶頂へと上り詰めて3時間半に及ぶアクトを終えた。ダイレクトに快感のツボをつくサウンドの凄みは勿論のこと、シーンを力強く引っ張る存在となったソイルの頼もしさがビシビシと伝わる貫禄のアクト。期待通り最高の一夜だった。(齋藤美穂)
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on