Caravan @ 日比谷野外音楽堂

Caravan @ 日比谷野外音楽堂
『Caravan LIVE EXTRA 2011 灯』と銘打たれた、久々の日比谷野外音楽堂ワンマン。なるべく電力を使わない、ということで、歌とギターと時々ハープのCaravan・ウッドベース伊賀航・ギターとスチール・ギターの佐藤克彦の3名によるアコースティック編成でのライヴであり、照明の代わりにCandle Juneによるキャンドルが大量にステージ上に並べられている。この日の収益は、震災復興のために寄附される。MCで、Caravan本人とマネージャーで「届ける」という言い方をしていたので、振り込むのではなく持って行くのだと思います。という、東日本大震災に直対応した趣旨のライヴでした。
開演予定時刻は16:45、実際に始まったのはその10分後くらいだったので、まだ全然明るく、最初の1時間くらいはキャンドルの効果、ありませんでしたが、後半になり、日が暮れてくるにつれてだんだんキャンドルが効き始め、アンコールの頃には、とても幻想的な、美しい光景になりました。キャンドルが輝くのと反比例してCaravan本人の姿はどんどん見えなくなっていくんだけど、でも、こういうのもありだよなあと思った。
アンコールまで合わせて全20曲、ほとんど3時間近いステージだったけど、まったく長さを感じなかった。終わって時計を見て「え、もうこんな時間?」とびっくりした。

まず、前述の通り、足元にはキャンドル、バックに絵が1枚、あとモニターとかの機材と楽器、それ以外には何にもない、コンクリの壁むきだしのステージに、3人が登場。Caravanのギターから1曲目“Feed back”からライヴがスタート。続いて、歌詞がもう必殺の1行だらけの、どれくらい必殺の1行だらけかというとたとえば「ここではないという何処かへ 行きたがる人の群れを抜け 僕はここにいようと決めた」というラインだったり「心とか気持ちとか伝えきれない曖昧を 歌うよ」というラインだったりするのですが、とにかくそんな名曲“Stay”をプレイ。
ここまでは、ほぼ満員のお客さん、みんな座ってじっくりと耳を傾けていたが、Caravanの「行きますか」というひとことで始まった3曲目“Think”のイントロで、半数くらいの人がわらわらと立ち、リズムに合わせて身体を揺らし始める。といってもドラムもパーカッションもいないので、Caravan「じゃあみんな、今日はリズム隊よろしくお願いしますね。今日は3人でがんばってますから」と告げ、次もダンス・チューン(って書くと語弊ありますが、要は彼の曲の中ではBPM速い方でのりやすい方、ってことです)“Wagon”へ。さらに立ち上がるオーディエンスが増える。

歌い終えたCaravan、ここで今日1回目のMC。「雨降ってないね! これ、通じたんじゃない?」と、降らないことを祈ってくれたファンへの感謝の言葉をのべ、続いて震災のことに触れ、テレビのナレーションの仕事でアメリカに行ったことでできたという、まだタイトルも決まっていない新曲を歌う。続く“ハミングバード”では、客席の周辺数ヵ所とまんなか1ヵ所から、大量のシャボン玉が舞い上がる演出が。とてもきれいでしたが、Caravan「すごいねえ」と喜びながらも「でも、近くの人は怖かったでしょ。すごい勢いで出るから」とフォローしてました。で、4月に塩釜に無料ライヴをやりに行った時の話や、そこで出会ったファンの話をしてから、“SEED”へ。途中で、雨、すこーし降ってくるが、それ以上強くはならず。

ここで、伊賀航&佐藤克彦がはけて、Caravanひとりに。彼が「中盤はひとりでやります。みんな、お酒買いに行くとか、トイレと休憩とか、今がチャンスだよ」と言ったところ、すごい人数の人がそれに従い、客席内の通路がみるみるいっぱいになる。Caravan、「みんな素直だねえー」と苦笑い。ひとりでの1曲目は、「ありがとう、さよならという2つの言葉だけを信じた」というラインが印象的な“旅について”。次は「塩釜に行ったあとに作った新曲で、“黄金の道”という曲です」と前置きしてギターを弾き始めるも、8小節歌ったところで、「あ、キー間違えた」と中断。今度は客席が苦笑い。Caravan、曲紹介のMCをもう一度繰り返し、そこに「塩釜の人たちにエールの気持ちをこめて作った歌です」という言葉も足して、再度歌い始める。今度は完奏。
相変わらずすこーしだけ降り続く雨に、「降ってきた? 畜生! すぐに上がってくれることを祈って」と前置きして、“Glory days”へ。ボ・ディドリー・ビート(っていう言い方でいいのかな。あの「♪ドンドンドン、ドンドン」ってやつね)につられて、客席、この日初めてうしろまでみんな立つ。アコースティック・ライヴの、しかもその中のひとりのコーナーで初めて全員が立つって珍しい光景だなあ、でもCaravanらしいなあ、と思う。続いて、Caravanには何曲もある「音楽のことを歌った歌」の中でも特に強力な1曲、“Music”で、ひとりのコーナーは締めくくられた。

Caravan @ 日比谷野外音楽堂
12曲目からは再び3人編成。ようやく日が暮れ始め、だんだんキャンドルの光が目視できるようになってきたところで、“Folks“Trippin life”“Camp”“Soul Music”と、キラーチューン連発。“Camp”の後半では客席をシンガロングが包む。すこーし降っていた雨も、いつの間にか上がっている。Caravan、「なんとか、あれかね、伝わったかね」とうれしそう。続く“MAGIC”を歌い終えて、また震災のことに触れ、「ひとりに1コ、大事な仕事がある、それを淡々とやっていきたいと思います」としめくくり、大きな拍手が起きる。続くラストの“Song For You”、まったく踊れない曲なのに、客席、みんな立ったまま聴いていた。すっかり日は暮れて、Caravanの姿もよく見えない中、ステージではキャンドルが幻想的に輝き、そこに歌声が響く光景は、なんというか、かなりくるものがありました。

Caravan @ 日比谷野外音楽堂
Caravan @ 日比谷野外音楽堂
アンコールは3人で“Free Byrd”と“Sweet Home”。途中で、今日は塩釜から来てるお客さんもいることや、今日の収益をマネージャーとふたりで届けに行く、ということや、募金箱も設けていることを話す。2曲を歌い終わったところで、この日初めてちょっと照明が明るくなり、アンコールおしまい。が、もう一度コールが起き、ひとりで再度登場。今年になってから野外は3打数3安打(3回とも雨が降ったってことです)で、今日降ったらもう野外やめようかと思った、という話や、今野外でやるのははたしてどうなのか、と事前に放射能を測りに来たという話のあと、歌とギターとハープで“ほんのすこし”をプレイ。全編が終了した。

僕は普段、このように、その日あったことを時間軸に沿って追っていくタイプのライヴレポはあんまり書かないんだけど、何か、こういうように書きたくさせるライヴでした。自分が今ここで観て聴いたものを、頭から最後までひとつももらしてはいけない、という気持ちになったのかもしれません。違うかもしれませんが。でも、一応何度もこの人のライヴ、観ているが、その中でも屈指の出来だったのは、間違いありません。そんな夜でした。(兵庫慎司)
Caravan @ 日比谷野外音楽堂
1 Feed back
2 Stay
3 Think
4 Wagon
5 新曲
6 ハミングバード
7 Seed
8 旅について
9 黄金の道(新曲)
10 Groly Days
11 Music
12 Folks
13 Trippin’ life
14 Camp
15 Soul Music
16 Magic
17 Song For You

アンコール
18 Free Byrd
19 Sweet Home

アンコール2
20 ほんのすこしだけ
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