SWEET LOVE SHOWER 2010(2日目) @ 山中湖交流プラザ きらら

SWEET LOVE SHOWER 2010(2日目) @ 山中湖交流プラザ きらら
SWEET LOVE SHOWER 2010(2日目) @ 山中湖交流プラザ きらら - エレファントカシマシエレファントカシマシ
夕闇に包まれた山中湖畔に響き渡る、「夏の総仕上げだよエヴリバディ!」というエレファントカシマシ・宮本浩次の絶叫MC! そして、堂々のヘッドライナー=エレカシを迎える満場のオーディエンスから沸き上がる熱い拍手と大歓声!……大阪で開催された『RUSH BALL 2010』とともに8月の終わりを飾るロック・フェス=スペースシャワーTV主催『SWEET LOVE SHOWER 2010』の模様を、1日目レポに続いてここ「山中湖交流プラザ きらら」からレポート! と言いつつ、昨年同様各アクトの詳細なレポやセットリストはSLSオフィシャル・サイトに瞬時にUPされているので、フェス全体の雑感なども交えつつお届けすることにします。

まず会場。メインの2ステージ=LAKESIDE STAGE/Mt.FUJI STAGE、そして山中湖畔のボードウォークに設置された小ステージ=WATERFRONT STAGEという3ステージに加え、昨年まで駐車場の一部だった木立の中の1区画にステージカーを停め、そこをまんまステージ・エリアにしてしまった、という「FOREST STAGE」ができて計4ステージ制に。両日ともWATERFRONT STAGEは1日2アクトのみなので「実質3ステージ制」と言えなくもないのだが、それでもいよいよ1人で観て回るのは困難なーーそれは取りも直さず、ロック祝祭空間ならではの自由で混沌とした動線と、そこから生まれる高揚感と狂騒感を孕んだフェスへと成長した、ということだ。乗りたければ気球にも乗れるしカヌーにも乗れるし……という「このロケーションならでは」のスペシャルな幸福感もさることながら、毎年開催期間中は見えそうでなかなか見えなかった富士山が、夕刻近くなって雄大な姿を見せてくれた瞬間の感激も、その幸福を幾重にも倍増するものだった(今回含めて山中湖SLSは4回中3回参加しているが、当日に富士山を見れたのは今日が初めて)。

そして……例年にない酷暑&超晴天のもと、出演アーティストも午前中から熱い! 朝イチのプレ・オープニング・アクト=Predawn&アルカラは中央高速の大渋滞のおかげで観損ねてしまったのだが、オープニング・アクト=小林太郎の空を焼くような歌と爆音ギターがフェス全体のハードルを思いっきり上げていたのが爽快だった。ポジティヴとメランコリーがせめぎ合うような新曲バラード“サナギ”も最高だったし、「年末にワンマンやります! 10月20日にアルバム出します! そんなわけで9月3日に『Mステ』出ます!」という告知までが速射砲のように心地好く響く。

「今日は切り込み隊長として、LAKESIDE STAGEに火ぃつけていくんでよろしく!」のシャウトの主はLAKESIDE STAGEのトップバッター=NICO Touches the Walls・光村龍哉! 「みなさん、体調にだけは気をつけてくださいね。倒れる時は俺も一緒だ!」と会場の熱気と競い合うようにヒート・アップ、短い時間の中に“Broken Youth”“THE BUNGY”に新曲“サドンデスゲーム”まで盛り込んだ鉄壁のリストで圧倒! 一方、FOREST STAGEの一番手は黒猫チェルシー! “正義感ある殺しは許される”や“廃人のロックンロール”“ベリーゲリーギャング”などただでさえ危険な薫り漂うロックンロールが、ステージカーというゲリラ・ライヴっぽい舞台によってさらにそのアンダーグラウンド感と攻撃性を増して見えた。そして、珠玉のファルセットでMt.FUJI STAGEに一陣の涼風を吹かせたのは清竜人。ポップの妖精のような佇まいで“ワールド”や“ヘルプミーヘルプミーヘルプミー”などを演奏し、オーディエンスにひらひらと手を振りながら、その柔らかくも芯の強い歌声で1人1人の心を揺さぶっていく。

続いて……「今年は例年になくあちぃから、イヤー!とかウオー!とか言うと悪いかなと思って」とLAKESIDE STAGEでだらりと語るのはもちろん奥田民生。その言葉通り“愛のボート”“えんえんととんでいく”“The STANDARD”とゆったりナンバーを重ねていくのだが、小原礼(B)/湊雅史(Dr)/斉藤有太(Key)という鉄壁のラインナップで(民生いわく「金かかってるメンバーで」)奏でられるそれらの楽曲の、怒濤の滋味と快楽! たった30分ほどとは思えない悠久の時間が流れていた。民生のステージ終了と同時に、満員のFOREST STAGEにさらに人が流れて……サンボマスターの登場! 「こんなもんじゃねえだろ山中湖!」「みんなで日本一の日にしましょうね!」と全身アジテーターと化した山口、渾身の叫び! “世界をかえさせておくれよ”“できっこないをやらなくちゃ”“ラブソング”“そのぬくもりに用がある”“世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”という超凝縮型セットリスト! 最高。さらにMt.FUJI STAGEにはSISTER JETが登場! 「あの雲をぶっ飛ばすくらいクレイジーにパーティーしようぜ!」と“恋してクレイジー”“LaLa Dance”などでフィールドを沸かせまくっていた。特にワタルS。MCでは「山中湖の勝手に1日村長」を自称して「恋愛の悩みとか何でも訊いて!」とゴキゲンだった彼は、この後にFOREST STAGEで行われた『爆裂★エレキングダム!!』イベント(「ぴったり20秒を叩く」というスポーツ・ドラム大会。他にも9mm・かみじょう/NICO・対馬/黒猫・岡本/怒髪天・増子、そしてこのイベントだけのために凛として時雨・ピエール中野も来ていた)でも登場したり、会場内を闊歩してはファンと写真撮りまくったり……と、この日の絶好のマスコットと化していた。

“Alright!!”“How Do I Survive?”で「国民的シンガー」としての存在感を見せつけたのはSuperfly。「今年ずっとアルバムを録ってて……」という彼女。新曲“Wildflower”で花開いていた、さらに豊潤でダイナミックな表現力に、「その先」の可能性が垣間見えたひとときだった。続いてMt.FUJI STAGEに響き渡るのは、秦基博の静謐と迫力に満ちた歌。“鱗(うろこ)”“今日もきっと”もさることながら、“アイ”前半の弾き語りパートの、音楽の黄金律そのもののような揺るぎない声とメロディが、湖畔の空気に凛としたヴァイブを忍ばせていく。そしてBEAT CRUSADERS! これを含めあとライブ2本で解散!というオーディエンスのセンチメンタルな切迫感すら「どうもー! 来週解散しますBEAT CRUSADERSでーす!」というヒダカのMCで粉砕し、「みんな、そんなにBEAT CRUSADERS好きなの? 解散しないでほしいの? ……さようならー!(笑)」とドSっぷりを発揮。1曲目の“GHOST”からLAKESIDE STAGEは揺れっ放し。もちろん「大人の授業」こと会場一丸のおま●コールも! “SUMMEREND”でのbloodthirsty butchers・吉村秀樹の轟々たる音響ギターが、そしてラストの“FOOL GROOVE”でのYOUR SONG IS GOOD全員の乱舞が、残り少ないビークルの日々を彩る大玉花火のように美しく胸に残った。

WATERFRONT STAGEを日比谷野音かってくらいに満員にしてみせたのはCaravan。ビークルで真っ赤にスパークした会場の熱気をアコギ弾き語りで蒼く涼しく塗り替えるように、“TRIPPIN' LIFE”“FREE BYRD”などを歌い上げていく。ほぼ時を同じくして、FOREST STAGE・2日目のラストを飾るPONTIACSのアクトがスタート! “アメリカ”“GALAXY HEAD MEETING”などロックンロールを「表現」でなく「体現」するぶっといグルーヴ、しなるギター、鋭利な歌……陽が傾きかけた会場の空気を、「ベース、照ちゃん!」(ベンジー)、「ドラム益男! ギター・ヴォーカル、ベンジー!」(照井)というMCがさらに熱く燃やしたのは言うまでもない。

いよいよ2日目も終盤へ。Mt.FUJI STAGEではCHABO BANDが“I'm Crying”“ハローI Love You”のみならず初期RCの“お墓”、そして「オーケー、チャボ!」とあたかも清志郎が呼んでいるかのように自らの名前をコールして“雨あがりの夜空に”へ! このロックの至宝的ナンバーを謳歌するべく、次々とキッズが集まってくる。ラスト“Little Wing”で聴かせた濃密なブルース、そしてジェフ・ベックかってくらいの壮絶なギターさばきも圧巻! 一方、LAKESIDE STAGEには9mm Parabellum Bullet! 1組あたりの持ち時間が少なかったこともあり、先日ライジング・サンで飛び出した「お前をヴァンパイアにしてやろうか!」「お前をエレヴェーターにしてやろうか!」的な決め技MCこそなかったものの、「俺たちは今年は、今日で夏フェス終わりなので、爆裂して帰ろうと思います。みんなも、1人1人の富士山を爆発させて帰ってください!」と“Cold Edge”“The World”“キャンドルの灯を”“Black Market Blues”など必殺曲連射で会場激震の熱狂へと導いていく。特に滝。見た目はもちろん、演奏とアクションに至るまで、それこそトム・モレロとザック・デ・ラ・ロッチャが間違って合体しちゃった的な、ギター・モンスターとしてのパワーとダイナミズム! 9mmが9mmを超えてさらに爆走しようとする瞬間を観ているような、実にスリリングでドラマチックな時間だった。

Mt.FUJI STAGEのトリはサニーデイ・サービス! 療養中の丸山(Dr)の姿こそなかったものの、サポートに高野勲/新井仁も擁した鉄壁のメンバーで“baby blue”“恋人たち”と名曲を夜空に放っていく。空の闇に突き刺さる、“ふたつのハート”の曽我部の圧倒的な歌! 「心地好い」とか「美しい」とかではなく、一種の凄まじさすら帯びて、この日の彼の歌声は山中湖の空気を震わせていた。“サマー・ソルジャー”“胸いっぱい”まで全6曲のコンパクトなセットながら、クライマックスの高揚感と緊迫感を十二分に与えてくれる時間だった。そして、ヘッドライナー=エレファントカシマシがLAKESIDE STAGEに登場! “今宵の月のように”“悲しみの果て”といった「お茶の間レベルで誰でも知ってるエレカシ」と、“俺の道”“デーデ”といった「エレカシの核心」を交互に織り交ぜながら、何よりその、ばりばりと夜空を引き裂く勢いの宮本の歌が、そしてバンド渾身のアンサンブルが、聴く者すべてをロックのど真ん中へ巻き込んでいく。“デーデ”がクラップ満開のフェス・アンセムになっている図は、かなり感動的なものがあった。「よく見えないけど、みんなー! いい顔してるぜー!」と宮本が叫び上げて“ガストロンジャー”“ファイティングマン”を畳み掛けて本編終了! アンコールは“風に吹かれて”、そして“俺たちの明日”でピースフルに大団円!……かと思いきや、喉も裂けよとばかりの《誰も俺には近づくな》《きさまに人が信じらりょか》絶唱……“待つ男”! 熱狂の火照りとロックの爪痕を観る者すべてに残す、最高の幕切れだった。

こうして、2日間のすべてのアクトが終了。別れを惜しむオーディエンスのちょっとセンチな心を、アニソンから郷ひろみまでフィーチャーして歓喜の異次元へと導いたクロージングDJは、もちろん怒髪天・増子直純。ありがとう山中湖! また来年!(高橋智樹)
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