銀杏BOYZ、実に3年半ぶりのツアー、水戸・いわき・仙台・盛岡の4本を回る『スメル・ライク・ア・ヴァージン・ツアー』の1本目、水戸ライトハウス。この4本だけ、ということ、そもそも今ってこのバンド的にはツアーとかやってる状況ではまったくないこと(前のアルバムから6年半も空いてるし、シングルとかのリリースもないし)から明らかなように、つまり東日本大震災のあと、急遽やることを決めたツアーです。
で。考えたら俺、銀杏のライヴ観るの、映画『少年メリケンサック』公開の時のライヴ・イベント以来だ。赤坂BLITZのやつ。いつだっけあれ。確かこのRO69でもライヴレポ書いたよな。検索してみました。2009年2月10日でした。うわあ。そんな前かあ。ライブレポはこちら。http://ro69.jp/live/detail/17605
って、ただ僕がごぶさたしてた、というだけかもしれないが、銀杏BOYZがちゃんとライヴをやること自体、確か去年のガガガSP主催のイベント以来だから、ほとんど1年ぶり、ということになります。
というわけで、私、終わったあと楽屋で本人たちにもつい言ってしまったんだけど、はっきり言って、今日のこのライヴ、失敗すると思ってました。で、2本目、3本目でだんだんましになっていって、4本目でなんとか形になる、というもんだと思っていました。
なんで。だって、久しぶりすぎるから。あと、そのブランクをパッと埋められるような、器用なバンドではまったくないから。なので、「終わったあと峯田激ギレ」とか「チンくん泣きじゃくり」とか「峯田、本番中フラストレーションに耐えかね、よくない暴れ方をしてケガする」とか「むちゃな歌い方をして喉をぶっつぶす」とか、そういう展開を予想しており、ハラハラヒヤヒヤしながら特急フレッシュひたちに乗って、水戸に向かったのですが。
大ハズレでした。すんげえよかった。鳥肌もんだった。びっくり。1stアルバム2枚を出してケガしまくりながらのツアーを回り終え、ちょっと経ったあとの銀杏BOYZって、もんのすごいライヴをやるバンドになっていたが(ってことは2006年とかそれくらいだ)、その頃の手に負えない銀杏BOYZが戻ってきたよう。で、そこに、さらに新たな武器が装着されて、もっともっと手に負えないことになっているよう。そんな感じだった。
その新しい武器、開演前に楽屋で峯田から教えてもらった時は、「えーと、それ、うまくいくのかなあ?」と思うようなものだったが、おそろしいことに本番では80%くらいがうまくいって、すさまじい効果を発揮していた。今いちはまらなかった20%くらいも、この先のツアーで、改善されていくと思う。
えーと、どう書こう、ネタバレなしで。そうだ、こういう時は、箇条書きにするのがいいですね。
・新機軸その1:メンバー4人それぞれの手元に、サンプラーが。
・新機軸その2:チンくん。足元に、「ウォーレン・ククレロか、あんた」と言いたくなるほどの、すさまじい数のエフェクターが。……ダメ。失敗、このたとえ。80年代育ちのチャラい洋楽好きしかわからない。じゃあ、えーと、そうだ、「avengers in sci-fiか、あんた」と言いたくなるほどの、すさまじい数のエフェクターが。これなら大丈夫ですよね。
そしてチンくん、ギター・アンプ、なんと4台。
・新機軸その3:アビちゃん。ほかのメンバーは「担当楽器+サンプラー」だったけど、彼は、それだけではありませんでした。
・新機軸その4、ではないけど(確か前にもやってたので)、村井くん。イヤホンを両耳に装着してドラムを叩く曲、何曲かあり。
・曲目は、具体的には書けないんですが、書ける範囲でいうと、まず、6年前の1stアルバム2枚からの曲、当然あり。で、その後にリリースした何枚かのシングルの中からの曲も、あり。
そして、新曲もあり! そしてそしてさらに言うと、「えっ? これ、銀杏BOYZでやるんだ?」という曲も、ありました。ちょっとびっくり。
・そして、峯田。震災後に決めたライヴである、という趣旨のせいか、単にライヴ自体が久々でうれしかったのか、それともほかに理由があったのか、わかりませんが、MCにおいても、歌や演奏においても、なんか、ファンに対する感謝の気持ちや愛情が、前面に出たライヴだった。というか、以前なら、それを出しすぎることを、本人的にあまりよしとしていなかったのが、今日は「いいやもう、正直に出しちゃえ」っていうふうにふんぎった、そんなライヴだったように、僕は感じた。
そうすると、どうなるのか。すんごい両極端になるのです。暴れまくり叫びまくりツバ吐きまくる曲では、もうロックの悪魔のように。メロディと言葉をじっくりと聴かせる静かめな曲では、もうロックの天使のようになるのだ、この人は。って、前から銀杏ってそういうバンドだし、峯田ってそういうミュージシャンだけど、それがよりクリアに、くっきりと出ている気がした。
MCで峯田、こんなことを言っていた。「最近、銀杏BOYZって名前が怖くなることがある。自分で付けた名前なのに。でも今日、楽屋にいる時、みんなが『銀杏BOYZ-!』って叫んでくれてるのをきいていたら、怖くなくなった」と。ほんとかよ、って言いたくなるくらい、いい話すぎるけど、でもこれ、結構、本音だと思う。
これ、あとの3本でも言ったほうがいいと思います、峯田くん。ついぐっときてしまったので、俺も。というか、俺でも。
あと、アンコールの時のMCで、必ずアルバムを作ってツアーをやって、またみんなに会いにここに来る、というようなことを、峯田、言っていた。このセリフ、前にも何度もきいた気もしないでもないけど、でも、バンドがこんなにいい状態なら、どうやら、ほんとに近々アルバムが聴けそうだなあ、と思いました。
楽しみにしてます、峯田さん。1stアルバム2枚が出た時、俺、37だったけど、42になっちゃったし。まもなく43だし。もう老眼始まっちゃったし。ぜひよろしく。
それから、これからツアーに参加するラッキーなみなさん、ぜひお楽しみに。(兵庫慎司/写真も)
銀杏BOYZ @ 水戸ライトハウス
2011.06.27