BLACK LIST 015 “ROCK FOR JAPAN” (The Birthday×BRAHMAN) @ Zepp Tokyo

BLACK LIST 015 “ROCK FOR JAPAN” (The Birthday×BRAHMAN) @ Zepp Tokyo
「俺たちは、ロックって名前がつく音楽にずいぶん助けられてっから。その名前の下で何か貢献ができるんだったら、喜んでこの身捧げます。明日世界が終わったとしても、喜んで――BRAHMAN始めます!」。1曲目の“FAR FROM...”ですでにピークポイントに達していたZepp Tokyo満場のオーディエンスの熱気が、そのすぐ後のTOSHI-LOWのMCで怒号のような歓声と雄叫びへと変わる!……『BLACK LIST』。ライブ参加歴10年以上の方にとってはかなりアツい名前のはずだ。2000年にミッシェル×ブランキーを迎えて敢行された『BLACK LIST 001』を皮切りに、2003年の『013』までここZepp Tokyoを舞台にロックの核心そのもののような顔ぶれで行われてきたライブ・シリーズ。2006年の『014』(浅井健一、The Birthday、大江慎也+池畑潤二)以来、今回が実に5年ぶりの復活開催となり、“ROCK FOR JAPAN”というサブタイトルの通り、今回の収益はすべて震災復興への義援金として寄付される。ロックに今何ができるか?という命題を前にして、日本のロックの核心と向き合ってきた『BLACK LIST』の旗印のもとに、The Birthday/BRAHMANという2組の豪傑が結集したのである。

先攻はBRAHMAN。“THE ONLY WAY”から“SEE OFF”“NO LIGHT THEORY”……と息つく間もなく曲を畳み掛けていくKOHKI、MAKOTO、RONZI、そしてTOSHI-LOW! 久々のニュー・シングル『霹靂』(9月7日発売)から“最終章”も盛り込みながら、それこそ1曲1曲死力を尽くして極限の音楽風景を描き出していく図は圧巻。ロックを「エンターテインメント」から隔離し、爆発的なサウンドの中に「嘆き」「怒り」「祈り」といった荘厳な歌詞世界を盛り込むことで、触れる者の魂を瞬時に燃え上がらせる神秘的な領域にまで達しつつあるBRAHMANの「今」の衝撃とスケール感が、Zeppの壁も屋根も吹っ飛ばしかねないくらいダイナミックに炸裂していた。オーディエンスもその熱演に応えて……というか、誰もが噴き上がるエモーションのままに、我を忘れてステージに向け歌い叫び拳を掲げ身を投げ出していた。“BEYOND THE MOUNTAIN”までノンストップで連射して一旦小休止……かと思いきや、さらに“時の鐘”“ANSWER FOR...”“BASIS”“PLACEBO”と、全曲アンセム状態のBRAHMANの中でも究極にアンセミックな瞬間を描き出していく! 

ここで再びTOSHI-LOWのMC。「あの、バーチーがさ……チバね? 酔ったらひどいんだよあの人。ああいう人に送電線をつけて電力を送信すれば、電力も足りると思う」とか「そんなバーチーも、シラフでは優しくて。今日ちょっと肌寒くて、喉ガラガラで来て楽屋行って『ちょっと声出ねえんだけどさあ』っつったら、『おう、ハチミツなめろ』って。マヌカハチミツいただきました(笑)」とかいうMCでいちいち笑いを誘っていくTOSHI-LOW。そんな空気が、「またこうやって肌寒くなって……心配してて。3月、あの瓦礫の上に雪が積もって、避難してる人も寒いんじゃねえかな、ひもじい思いしてねえかな、ってまた心配してる」というTOSHI-LOWの言葉で一気に引き締まる。「何ができるかよくわかんねえけど、できる限りの心配をして、それを行動に移して、できるだけ現地の人に届けたいと思ってる。まだまだ、まだまだ続けて、あの街が直るまで、ずっとずっと心配してる。心配し続ける」……被災地のために支援活動に奔走しながら、音楽を通して自らのメッセージと信念を形にしてみせる彼らに、惜しみない拍手と歓声が送られる。最後は“霹靂”の、真摯な静寂が徐々に熱を帯びて大爆発するような壮絶な展開でフィニッシュ!

BLACK LIST 015 “ROCK FOR JAPAN” (The Birthday×BRAHMAN) @ Zepp Tokyo
そしてThe Birthday! いきなり高らかに鳴り響く、“Buddy”の目映いコード・ストローク! 《夢のような時間が来たのさ》《パーティーがまた始まる》という言葉をダイレクトに「今」へジャック・インして時代丸ごと転がすような、強烈なロックンロールの推進力! 5年前の『BLACK LIST 014』ではまだ生まれたばかりだったThe Birthdayの音が、今や日本のロックンロールの核心とも言うべき図太い迫力と切れ味を獲得している――というだけでも誇らしいくらいの嬉しさがこみ上げてくるが、やはり驚くべきは、フジイケンジ加入後のThe Birthdayの、圧倒的なポジティビティに満ちたドライブ感だろう。

たとえば“シャチ”。前任ギタリスト・イマイの、あの巨大な重い鉈のようなサウンドも、The Birthdayというバンドのサウンド・キャラクターを決定づける大きな武器になっていた。が、ソロからパワー・コードから快速カッティングまでレスポールを自在に操るフジイの軽快なギター・プレイは、イマイとはまったく異なる破壊力を持っている。鉈のひと振りから、日本刀のしなやかなストロークになった……と言えば少しはイメージしやすいだろうか? そして、そんなフジイのギターと明らかに化学変化を起こしたのがバンドのビートとグルーヴ感だ。鋭利なカッティングと競り合うように前へ、先へと性急に突き進んでいく“ホロスコープ”や“SとR”の疾走感に身を委ねながら、改めてそう感じた。さらに、“Red Eye”でおもむろにギターを置いたチバは、ギター・パートを完全にフジイケンジに任せ、ハンドマイクで歌っていた。去年夏のZeppとかでも「途中までハンドマイク」はやっていたが、「1曲丸々ハンドマイクで歌うチバ」を観るのは何年ぶりだろう?と感慨深く思ってしまった(この前にも今年はやってるらしいが)。

“シャチ”“涙がこぼれそう”、そしてアンコールの“Nude Rider”以外を最新作『I'M JUST A DOG』の楽曲で構成してみせたのは、フジイのレパートリーの問題云々ではなく、チバ/クハラ/ヒライ/フジイの4人が新しいThe Birthdayのヴァイブを全身で謳歌していることの表れだろう。このイベント自体の所信表明はTOSHI-LOWのMCに任せたということなのかどうか、“なぜか今日は”の前の「今日は日曜日?……そういうこと!」、“涙がこぼれそう”の前の「今日はお台場に来てみたよ!」というチバの言葉以外はMCらしいMCもなく、本編全12曲を駆け抜けていったThe Birthday。しかし、何よりその音が、歌が、今の4人のロックンロールの熱量を雄弁に物語っていた。一転、アンコールではTシャツに着替えたキュウちゃんの「Tシャツは涼しくていいですね!」という物販宣伝MCに「……何て言うんだっけ、そういうの?」とチバが絡んだり、“Nude Rider”の途中でチバの「フジイケンジ!」というコールからフジイが「東京! いやあ暑いね! みんなも汗びちょびちょになってる? そのまま帰ったら風邪引くからTシャツ買ってってね(笑)」と宣伝MCをかぶせてみせたり……と、早くも「この4人のバンド感」を感じさせる一幕もあったりして、なおいっそう嬉しくなった。最高の一夜だった。猛者同士のロック頂上決戦的なこの日のアクトが見せてくれたのは、日本のロックの逞しい力そのものであり、僕らが/日本が「その先」へ向かうための強靭な力そのものだった。(高橋智樹)


[SET LIST]

■BRAHMAN
01.FAR FROM...
02.THE ONLY WAY
03.SEE OFF
04.NO LIGHT THEORY
05.SPECULATION
06.THE VOID
07.最終章
08.CHERRIES WERE MADE FOR EATING
09.EPIGRAM
10.BEYOND THE MOUNTAIN
11.時の鐘
12.ANSWER FOR...
13.BASIS
14.PLACEBO
15.霹靂

■The Birthday
01.Buddy
02.ホロスコープ
03.2秒
04.BABY YOU CAN
05.Red Eye
06.爪痕
07.SとR
08.シャチ
09.I'm just a dog
10.READY STEADY GO
11.なぜか今日は
12.涙がこぼれそう

EC1.Nude Rider
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