Plastic Tree @ 両国国技館

Plastic Tree @ 両国国技館
Plastic Tree @ 両国国技館
Plastic Treeの「アンモナイト(大)」ツアーファイナル。春に行われた「アンモナイト(小)」ツアー、夏のイベントシーズンを経て、今年4月にリリースされた最新アルバム『アンモナイト』を巡る一連の旅は、今夜の両国国技館公演をもって千秋楽を迎える。MCでは「『アンモナイト』は色んな思いで作られたアルバム」と何度も語っていた有村。いつもより長いツアー行脚の最終地点、バンド初の国技館公演という特別感も手伝って、2時間半に及ぶアクトは万感の想いが溢れた感動的な時間となった。

関係者受付でもらったセットリストを見て、まず驚いた。

セットリスト
1.ブルーバック
2.みらいいろ
3.アイラヴュー・ソー
4.水色ガールフレンド
5.雪月花
6.バンビ
7.懺悔は浴室で
8.ムーンライト――――。
9.アリア
10.退屈マシン
11.テトリス
12.バリア
13.ヘイドレッド・ディップイット
14.デュエット
15.さびしんぼう
16.Thirteenth Friday
アンコール1
17.プラネタリウム
18.spooky
アンコール2
19.Ghost

アルバムの1曲目で、春の「アンモナイト(小)」ツアーでもオープニングを飾っていた“Thirteenth Friday”が本編ラスト、逆にアルバム終盤の“ブルーバック”がオープニングを飾るという、時計を逆回しにしたような構成。ステージ装飾も、無数のスティック・ライトがそびえ立ち近未来的なムードを醸し出していた「アンモナイト(小)」ツアーとは一転して、天女の羽衣のような白い布がステージ天井から吊り下げられ、優雅で幻想的な空間を演出している。それが「終わり」からはじまる新たな物語の美しさを暗に象徴しているようで、なんともプラらしい。

ライブに至っては、二度のツアーを経てグッと豊かになった『アンモナイト』の世界をありありと感じさせる内容だった。暗転とともにレーザー光線の波が場内をたゆたい、アンモナイトのイメージ映像が映し出されたオープニングを経て、1曲目“ブルーバック”では極彩色のサウンドがゆらゆらと浮遊し、続く“みらいいろ”“アイラヴュー・ソー”では鋭利なリフとビートが火花を散らして駆け抜ける……。豊かなイメージとロマンチシズムに裏打ちされた轟音で、時間も空間も飛び越えた壮大なサウンドスケープを描いてきたバンドだが、そのスケールと濃密度が飛躍的に増しているということが、この冒頭3曲だけでも明らかだった。

「やあやあ」「やあやあやあ」というお馴染みの挨拶の後は、「みんな『アンモナイト』聴いてきた? ごっつぁんです」と有村。「国技館でドスコイしますか?」(有村)だったり、「ようこそ、幕内バンギャども」(ナカヤマ)だったりと、メンバー自身もはじめての国技館公演を楽しみ尽くしていたけれど、今夜は会場の特性を十二分に活かした演出も冴えていた。曲ごとに多彩なライトで照らされるステージ上の羽衣がたまらなく美しかったり、どこまでも伸びていくレーザー光線がたまらなくカッコ良かったり。“懺悔は浴室で”では、有村がステージ上のサーチライトを客席に向けて挑発的に煽り立てるシーンもあった。中でも圧巻だったのは、“ムーンライト――――。”。無数のライトとレーザー光線が場内を回遊し、ステージ後方のスクリーンに月のイメージが映し出される中で、透明なサウンドがメランコリックな情景を広げていくさまは、個人的に前半のハイライトだった。秋の夜長にプラを聴くって、こんなに趣深いものかと思わず感じ入ってしまう。

Plastic Tree @ 両国国技館
Plastic Tree @ 両国国技館
“退屈マシン”で幕を切った後半は、攻撃性を湛えたアップ・チューンの連打。弾むリズムに乗って観客の力強い拳が振り上げられた“テトリス”、全身の血が逆流するようなカオティックな轟音が吹き荒れた“バリア”、オイ・コールとヘッドバンキングの嵐が巻き起こった“ヘイトレッド・ディップイット”……と、場内は1曲ごとにスリリングなムードを高めていく。そして観客一丸のドスコイ……もといハイジャンプが国技館を揺らした“デュエット”で頂点へ上り詰めると、一気に照明を落としたステージ上から聞こえてきたのは、繊細なアコギ・サウンド。そう、“さびしんぼう”だ。《燃えてく日々の灰が降る夢で 埋もれてく僕がもう/見えなくなって居なくなっても こゝろの形は残ってほしい》という歌詞が、孤独の色で塗り込められた暗闇の世界を優しく照らし出していく。そして本編ラストは“Thirteenth Friday”。春のライブでは物語のはじまりを告げるプロローグのように鳴っていたこの曲が、今夜はここまでの狂乱も混沌も哀しみもマーブル模様で溶かし込む鎮魂歌のように鳴っていて、それがまた素晴らしかった。

アンコールでは、ステージ背後のスクリーンにメンバーの姿が映し出される中で“プラネタリウム”“spooky”を披露。ダブル・アンコールでは、「いやー、楽しいツアーだったなぁ。終わりたくねぇよ、マジで」という有村の言葉から大ラス“Ghost”で再び絶頂を極めて大団円!……と思いきや、「本当はここで美しく終わる予定なんだけど、今日はファイナルじゃん」とナカヤマ。ステージを去ろうとする有村に「早く楽器持てよ」と促す。なんと有村に内緒で、最後にもう1曲やることをメンバー3人で決めていたらしい。動揺する有村を尻目に「じゃあ、ツアーでもやっていた曲を」と鳴らされたのは、“メランコリック”! 残りのエネルギーを使い果たすかのように渾身の勢いで放たれる有村のヴォーカル、怒涛のギター・サウンド、観客のオイ・コールとシンガロングで国技館の空気を一気にスパークさせて、華やかなクライマックスを迎えた。

終演後は、12月28・29日にTOKYO DOME CITY HALLにて恒例の年末ライブ、その名も「水曜スペシャル・木曜スペシャル」が催されることを発表。来年2月のシングル・リリースを予感させる告知も行われた。アンモナイトを掲げた旅は今日をもって終わりを迎えるが、プラの旅はこれからも続いていく……。
ちなみに。蛇足ですが、国技館は客席が東側・西側・正面に分かれていて、場内に大きく「東」「西」「正」と表示されている。それをベース・長谷川正の名前にもじって「東―! 西―! タダシー!」とコール&レスポンスをしていた有村の悦に入った姿が、とてもおもしろかったです。(齋藤美穂)
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