在日ファンク@東京キネマ倶楽部

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SAKEROCKのハマケンこと浜野謙太(Vo)率いる7人組のファンク集団=在日ファンクのセカンド・アルバム『爆弾こわい』のリリースツアー、追加公演の東京キネマ倶楽部ワンマン。SAKEROCKでは何度かやっているけれど、在日ファンクとしては初のキネマ倶楽部ワンマンとなるこの日のライヴを見事ソールドアウトで迎えた彼ら。MCで仰木亮彦(G)が「夢みたいな状態になってる」と語っていたように、その喜びもひとしおだったらしく、途中でハマケンが「俺、なんか感無量になっちゃってさぁ…!」と言葉を詰まらせるシーンも。ただその時、フロアから送られた拍手喝采の中に結構な割合で「笑い声」が含まれていたあたりは、さすがハマケンでした。

定刻となり、まずはSE無しでハマケン以外のメンバーが登場。人力でディレイをかけた仰木の「我々は、在日ファンク」という言葉を合図にオープニングを飾る“イントロの才能”が立ち上がり、しばらくの後に白スーツ姿のハマケンがステージ・イン! ひとしきりスキャットを飛ばしてフロアを沸かせてから“こまくやぶれる”へ突入。そして立て続けにJBマナーのタイトな“ダンボール肉まん”、ワウペダルを駆使した仰木のギターソロが映えまくっていた“毛モーショナル”を投下。「鼓膜」「ダンボール肉まん」「毛モーショナル」など、何となく湿っぽいニュアンスを持った歌詞のフックと、ハマケンの刻むステップの何とも言えない「引力」にあてられた場内は、セットリストの進行に併せてじわじわと興奮の度合いを高めていくのであった。

「今日はみんなありがとね、日々の嫌なことがあるのに。週明けからまた耐えがたい毎日が始まると思うけど、せいぜい今日は楽しんでいってね!」。そんなハマケンのモヤッとくるMCからのグルーヴィーな“環八ファンク”の後は、JBの影響圏から少し離れた、どちらかと言えばSAKEROCK寄りのバラード・ナンバー“夜”を披露。そしてハマケンが「無職! 残高照会! ソープ!」とネガティヴ・ワードを並べて始まった“罪悪感”から“もしも明日”へと繋いでいき、フロアの手を大きくスウィングさせたところで「しばし休憩!」(ハマケン)と第1部が終了(在日ファンクのワンマンは毎回2部構成)。ここまでで開始から約40分。この日のこの演出なんですが、個人的に、あまりにも唐突にサラッと行われたためか、カタルシス直前まで来ていたフロアのテンションがここで一旦ブツッと切れてしまい、ちょっと消化不良気味だったのがもったいない気がしました。

在日ファンク@東京キネマ倶楽部
10分間の休憩を挟み、間奏曲的なゆったりとしたインスト・ファンク“よみがえり”で幕を開けた第2部。まずは千鳥格子スーツ×真っ赤なフリルシャツに着替えたハマケンと、第1部から隙あらば後ろの方で胡散臭いダンスを披露していたジェントル久保田(Tb)の「やばいやばい」という掛け合いから、勢い良く“はやりやまい”を飛翔させると、みるみるうちに熱を取り戻していく場内。このあたりからハマケンのテンションもいよいよフルスロットルになってきたようで、“むくみ”の途中でマイクスタンドを放り投げ、すかさずコードを使って引き戻すというような、ド派手なステージ・アクションを次々と決めていく度に、場内からは大きな歓声が上がっていた。

そしてライヴ終盤には、岡村美央(ヴァイオリン)、古川淑恵(チェロ)、菊池幹代(ヴィオラ)によるストリング・セクションが合流。“におい将軍”“城”をプレイして豊潤なアンサンブルで場内を満たした後は、「大丈夫!? 100%のエンターテイメント提供できてる!?」(ハマケン)と、必殺ナンバー“京都”を発射。ちなみに、ハマケンよりも遥かに「良い声」を持つギタリスト・仰木によるライヴ定番の「京都アンドレスポンス」だが、この日はなんとキネマ倶楽部用のスペシャル仕様! スタートの「京都!」から「ストリングス!」「バイオリンヴィオラチェロ!」とコールが変化していき、それが「キネマクLOVE(手でハートの形を作って)!」を経て「キネマクLOVE注入!」へと移っていく頃には、場内はもう、お笑いのライヴかってくらいの大爆笑に包まれる。ここで高まった一体感をそのままに、再び7人に戻って“マルマルファンク”“爆弾こわい”“きず”と一気に駆けていき、ラストはハマケンの「メンバーの才能を見つけるコーナー」から“才能あるよ”で再び会場を揺さぶって、本編は終了。続くアンコールでは、“爆弾こわい”のリミックス・シングル(リミキサーはハマケンと、なんと岡村靖幸!)のリリースを発表し、会場をワッと沸かせてから「最後はみんなで歌って終わろう!」(ハマケン)と“最北端”でシンガロングを巻き起こし、この日のライヴはフィナーレを迎えた。
在日ファンク@東京キネマ倶楽部

以前とあるインタビューでSCOOBIE DOのソングライター・マツキタイジロウが語っていたように、日本人が日本語で、黒人のリズム・マナーに忠実なブラック・ミュージックをやる場合には、どうしても滑稽さがつきまとうことになる。だから多くのバンドは、それをいかに脱臭するかを模索していく過程でバンドのオリジナリティを身につけていくわけだが、在日ファンクはその真逆で、滑稽な状態をハマケンひとりに背負わせて、滑稽なままステージに持ってくる。で、その滑稽さを「芸」のレベルにまで昇華してしまっている。このあたりは恐らくハマケンの天性の「いじられキャラ」としての資質が大きいのであろうが、これってなかなかできないどころか、相当すごいことだと思う。日本語でJB直系のファンク・ミュージックをやるという点において、これ以上のフォームは恐らく無いのでは。つくづく面白いバンドだ、この在日ファンクは。(前島耕)

[セットリスト]
1. イントロの才能
2. こまくやぶれる
3. ダンボール肉まん
4. 毛モーショナル
5. 環八ファンク
6. 夜
7. 罪悪感
8. もしも明日
———休憩———
9. よみがえり
10. はやりやまい
11. むくみ
12. ウレロ!のテーマ
13. におい将軍
14. 城
15. 京都
16. マルマルファンク
17. 爆弾こわい
18. きず
19. 才能あるよ

アンコール
1. 最北端
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