THE BACK HORN @ 新木場スタジオコースト

「どうもこんばんはTHE BACK HORNです! 『マニアックヘブン』も7回目を迎えました! 今年は仙台(22日)と東京で開催ということで、仙台でもやってきたんですけど……まあマニアックな夜でしたよ! 外は極寒ですけど、コーストの中だけは、心も身体もホットに熱く、マニアックにいきたいと思います!」という松田晋二の言葉そのままに、序盤から“イカロスの空”(06年シングル『声』カップリング)、“浮世の波”(06年アルバム『太陽の中の生活』収録)、“走る丘”(00年インディー2ndアルバム『甦る陽』収録)と、ただでさえエモーショナルでカオティックなバックホーンの楽曲の中でもひときわでっかいカオスがとぐろを巻く楽曲群。だが、この日新木場スタジオコーストを埋め尽くしたオーディエンスは、まさにそれを待っていたわけで、ディープ&ヘヴィの極みのような選曲の1つ1つが、あたかも感情の秘部をまさぐるように心の奥深くまで侵入し胸を掻き乱し、フロアをむせ返るような熱気で包んでいく。

もはや年末恒例となったTHE BACK HORNのライブ・シリーズ『マニアックヘブン』の通算7回目となる『マニアックヘブン vol.6』(7回目で「vol.6」なのは、05年の初回が「vol.0」だったため)。そのタイトル通り、普段のリリース・ツアーではやらないような、シングルのカップリング曲やアルバム収録曲の中でもとりわけディープでマニアックな楽曲にスポットライトを当てるのがこの『マニアックヘブン』であるーーということは、これまで参加したことのある人や、今月21日に発売されたばかりの2枚組DVD『マニアックヘブン ベストセレクション』全36曲を観た人なら知っているはずだ。で、この日の本編セットリストもシングルのタイトル曲は一切なし、潔いくらいにマニアックな一夜だった。

01.イカロスの空
02.浮世の波
03.走る丘
04.プラトニックファズ
05.マテリア
06.フラッシュバック
07.怪しき雲ゆき
08.カラビンカ
09.新世界
10.世界の果てで
11.春よ、来い(松任谷由実カバー)
12.グラディエーター
13.栄華なる幻想
14.警鐘
15.上海狂騒曲
16.コオロギのバイオリン

アンコール
17.母さんの唄
18.シリウス(新曲)
19.さらば、あの日

松田のブラスト・ビートと栄純のスカ的カッティングとパンクな衝動が赤黒く渦巻く“イカロスの空”。暗黒舞踏の妖力をバンド・サウンドに置き換えたような“走る丘”。地下300mでうねるムード歌謡の如き“プラトニックファズ”。菅波栄純のギターから流れる美しいトレモロ・サウンドが逆に不穏な空気を醸し出す“フラッシュバック”。狂騒ビートでスタジオコーストを揺らしまくった“怪しき雲ゆき”。超硬質リフを軸に4人が一丸となって疾駆する“カラビンカ”……人間の生も死も憎しみも愛も極限まで突き詰めるバックホーンだからこそ生み出した、いや生み出してしまった異形の楽曲の数々。それは取りも直さず、観ている僕らすべての中にある異形でいびつな感情そのものだ。そして、そこにロック・ミュージックとしてのダイナミズムを与え、触れる者を鼓舞し励ますエネルギーを内在させ得ているのは、他ならぬ「今」のバックホーンの4人の強靭な意志と結束とアンサンブルあればこそだ。ということが、そのアクトからびりびり伝わってくる。特に、“カラビンカ”のエンディング、ギターを山田将司に渡しギターを弾かせた栄純がパタパタと鳥のような羽ばたきのアクションでマイクスタンド倒しながらステージ狭しと練り歩き、岡峰光舟がライトハンド速弾きベースを披露している間に栄純はオーディエンスの中に飛び込んでフロア中央で担ぎ上げられてパタパタ、ステージに戻った栄純が舞台下手の岡峰アンプに、山田がギター抱えたまま上手の栄純アンプによじ昇って同時にジャンプ!ーーという場面には、楽曲の変幻自在さ以上にスリリングだった。「今日は『マニアックヘブン』ってことで、マニアック情報を……ここ『菅波禁止』って書いてある(笑)」と、さっきまで栄純が乗っていた岡峰アンプを指差す山田。汗と歓喜にまみれたフロアをさらに爆笑が包んでいく。

会場内にメンバーのイラストやライブ写真が展示されるギャラリーが設けられたり、メンバー考案のオリジナル・カクテルが販売されたりするのも『マニアックヘブン』ならでは。ちなみに岡峰特製カクテルが「世界の果てで」、山田が「白夜」、ノンアルコール・カクテルが栄純「神の悪戯」、松田「太陽の仕業」。
松田「ギャラリーとかドリンクとか、楽しんでくれた? 『白夜』とか……『マズい』とか言わないで、『マニアック!』って言いましょう(笑)」
岡峰「マッコリ入れてるっしょ?」
山田「うん。マッコリとズブロッカ」
岡峰「栄純はなんでコショウ入れたの?」
栄純「や、最後物足りなくなって(笑)」
……というMC(というか会話)も、この日ならではのスペシャル感に満ちたものだし、「1年に1回の聖なるマニアックヘブンにお越しいただきましてありがとうございます!」という松田のコールに鳴り響くフロアの拍手も、ライブが進むたびにさらにじりじりと熱を帯びていくのがわかる。“世界の果てで”のどこか軽快に響くサウンドも、このディープな空間では逆に思いも寄らない「異物」として響くし、「トリビュート以外では初めての……ことでしたね?」と後で松田も話していたユーミンのカバー“春よ、来い”では山田&栄純のWギターが織り成すギター・サウンドが会場の熱気と不思議なモワレ模様を描いていく。

「今年は震災があったりして大変な1年だったし、来年も再来年も東北が復興するまで支援していきたいと思うんですけど……」と語り始めた松田。「バックホーンはもう13年やってるんですけど、俺たちと出会った人が、バックホーン歴とか関係なくまた集まって、バックホーンっていう場がバーッてできていって……また離れていっても、いつかまたこうして集まってこれるように、バックホーンの音楽をやり続けたいと思います!」。沸き上がる魂の歓声が「新木場スタジオコースト! 熱く熱く盛り上がっていきましょう!」という言葉でさらに高く噴き上がる! “グラディエーター”“栄華なる幻想”の鋭利な音も、“警鐘”の獰猛なリフも、会場一丸大合唱を生んだ“上海狂騒曲”も、すべてがここにいる人すべてのための燃え盛る凱歌として鳴り渡る。 “コオロギのバイオリン”の、真っ白にスパークする轟音をも貫いて響く山田の絶唱が圧巻のフィナーレを飾り……本編終了。

アンコールでは山田&松田がパート・チェンジ、松田ヴォーカルを山田/栄純/岡峰がコーラスが彩って“母さんの唄”を披露。そして、「ニュー・シングルのリリースが決まりました!」という山田の言葉から、3月7日リリースの新曲“シリウス”へ。激しさと性急さに満ちたハード・ワルツとでも言うべき不可思議な楽曲世界がしかし、混沌とした「今」を生きる僕らの最高のアンセムとしてダイレクトに胸を震わせてくる。最後は“さらば、あの日”でスタジオコースト激震の大狂騒空間へ! 去り際の「来年いい年にしましょう!」という松田の言葉が、もうもうと立ち込める熱気と混じり合って、心地好い余韻をいつまでも僕らの中に残していた。音楽と生命に真摯に対峙してきた己のアイデンティティを懸けて闘い抜いた2011年のTHE BACK HORN。来年の「その先」の姿が、そして次なる『マニアックヘブン』が、今から楽しみで仕方がない。その前に、30日には大阪『RADIO CRAZY』に、そして31日には『COUNTDOWN JAPAN 11/12』GALAXY STAGEに登場!(高橋智樹)
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