ザ・サースト @ 渋谷クアトロ

ザ・サースト @ 渋谷クアトロ - ザ・サーストザ・サースト
ザ・サースト @ 渋谷クアトロ - ザ・サーストザ・サースト
ローリング・ストーンズのギタリスト、ロン・ウッドに見出され彼が立ち上げたレーベルからアルバム『オン・ザ・ブリンク』でデビューを飾った、イギリスは南ロンドンに位置する移民街、ブリクストン出身の4ピース・バンド、ザ・サースト。待望の単独来日公演の2日目。

CDを初めて聴いた時、前へつんのめるようなリズムや何かに追われているかのような性急なビートが変態的で狂っているとしか言い様がないと思っていた。だからこそ、その変態性がライブにどんな風に表れるのか、すごく期待していたのだけど意外や意外、これがライブパフォーマンスとしては物凄くマジメなバンドだった(って失礼だけど)というのが第一印象だ。飛び道具的なパフォーマンスは一切なし。ひたすら懸命に演奏し、懸命に歌うというもの。

最初にメンサー一人がステージに表れ、「コンバンハ!」と日本語で律義に挨拶をするとアルバムの冒頭を飾る“They Don’t Know”を静かにオーディエンスに語りかけるように唄う。うっかりしてると吸い込まれそうになるほど大きく目を見開き、大きく口を開いて唄うメンサーの姿は一瞬にして観客の視線を独り占めにしてしまった。

続く、“Watch Me Now”から一気に爆発するかのように、スピード感のある楽曲が畳み掛けるように展開される。とにかく、元々突っ走ってる楽曲が多いから、勢い重視で多少リズムが荒削りな部分もあったけど、ギターのカッティングはリズムが正確だし、陶酔するようにギターリフを弾く姿は、平均年齢23歳といっても小さなライブハウスからグラストンベリーまで数多くの場数を踏んできただけの貫禄が漂っていた。さらに、バンドから生まれるグルーブは、何かを訴えようと必死に迫ってくる感があり、最初こそ棒立ちで黙って観ていた観客もそのグルーブに身を任せて徐々にノッていくようだった。

すごく印象的だったのは、今作のアルバムの中でも一際ポップな“Acre lane”の時のメンサーの表情だ。これまで、鋭い目つきで襲い掛かってくるんじゃないかと思うほどの勢いで唄っていたメンサーの顔がほころんでいるのだ。メンバー全員が黒人で、ストリートで悪さを避けるためにひたすら音楽に没頭してきたというプロフィールからも分かるが、彼ら自身が一番音楽に救われ、音楽に希望を見出しているんだと思う。ライブの絶頂の瞬間にそんな希望を見つけたかのような優しい笑顔に満ち溢れていて、観ている側としても優しい気持ちになった瞬間だった。

そして、メッセージ性の強い歌詞だからこそ、きちんと伝えるために演奏を崩さないという姿勢もある。スピード狂のように駆け抜けながらも、そこから一転、極上のバラード曲“I’m Falling”では、丁寧にアコースティックギターを奏でしっとりと歌い上げる。パフォーマンスを重視するというよりかは、忠実に演奏していくというアクトからは彼らの音楽への真摯な向き合い方も伝わってきた。

アンコールのラストでは“Ready To Move”で、最高に振り切れたテンションでオーディエンスをグイグイと煽っていく。躓いてもへこたれない精神で前へ前へつんのめっていくような高速のビートにスカのリズムを乗せたキラー・チューンでフロアの盛り上がりは最高潮に達した。

このバンドが生み出す性急感は、「自分達には音楽しかない」という想いからくる真剣に音楽と戦う姿勢なんだなと、あまりにマジメなパフォーマンスを観て妙に納得させられてしまった。(阿部英理子)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on