UNISON SQUARE GARDEN@Zepp Tokyo

UNISON SQUARE GARDEN@Zepp Tokyo
“世界が変わる夢を見たよ、だけど今日も一人ぼっち”という冒頭の歌詞も潔い、昨年7月リリースの最新アルバム『Populus Populus』。孤独を恐れず世間との違和感に真正面から向き合い、自身のメッセージで少しずつでいいから良き世界を構築していこうと戦い続ける姿勢は、やや使い古された観のある“ロック”という言葉に、今新たな息吹を吹き込んでくれるもの。そんな使命感を背負った若き3人組UNISON SQUARE GARDENにロックの未来を垣間見ているリスナーは当然のこと血気も盛んな若者揃いで、この日集まったオーディエンスも男子率が約半数とかなり高い。女子もライヴハウスに集うには少しく真面目な表情の子が多く、このバンドの本懐がリスナーの心の深いところに訴えかけてくるシリアスなものであることが、そこにいるだけでしっかりと伝わってくる。

従って、2階の立ち見エリアまでぎっしり埋まった場内のムードは、開演直前の“それでは間もなく開演です”のアナウンス終了とともに大歓声が起きてしまうくらいに誠実なもの。しかしながら、そんな場内を諭すように1曲目、このツアーのために作った軽いタッチのインスト曲で始まったライヴは、このツアーがこれまでとは違った趣旨で組まれたものであることを、その時点で静かに宣言するものとなっていた。

そう、このツアーは作品リリースとは関係なく、バンドの最新型の姿をリアルタイムで伝えることを主眼としたもの。今年初頭にも渋谷CLUB QUATTROでの3日間の対バンのシリーズ・ライヴを行っていたことからも明らかだが、現在の彼等の意欲はリリース・ペースを上回る速さで膨張しており、その勢いがそのまま持ち込まれたこのツアーは新曲が2曲も披露されるなど、バンドが新しいギアに入ったことを強く感じさせるものになっていた。

斎藤の赤いテレキャスターが奏でるシンプルなカッティングによる1曲目。ちょっと冷静なメンバーの佇まい、しかも未聴ナンバーの登場にややとまどう場内だが、それでもはちきれんばかりのエネルギーは斎藤が特に煽るわけでもないまま、早くも“イェー、イェー”の自発的な合唱へと進んでいく。その後、2分ほどで曲が唐突にブレイクするや、斎藤の「お待たせ」の一言ともに2曲目「フルカラープログラム」のスピード感たっぷりのイントロになだれこんでいくのだが、こういうもったいぶった手法は彼らには珍しいもので、まずこの日のライヴのポイントが分かりやすく披露された瞬間。

そして3曲目には“何か違う”と連呼する焦燥感もたっぷりの「プロトラクト・カウントダウン」で彼等の核となる部分が披露されるなど、いきなり起伏に富んだ展開へ。こちらもマインドのスイッチ切り替えがなかなかに忙しい曲順だが、それでもどの曲でもイントロが鳴った瞬間に大きな声援が起きるなど、オーディエンスが完全に曲を把握している様子が彼等のライヴらしさでもあり、頼もしくもあるところ。その光景が今回挑戦的なメニューを組んだ彼等に徐々に安心感を与え始めたことが伝わってくる様子に好循環の気運が漂い始め、さらにノンストップで続いた4曲目「23:25」で各人のソロ・パートをフィーチャーしたアレンジへ続く頃には、メンバーもすっかり今日のぺースを掴んだ模様。佇まいも自信を感じさせるものへと様変わりし、激し過ぎることで知られる田淵のステージ・アクションも飛ぶ・跳ねるが加速するだけでなく、笑顔も満面なものへと変貌していく。

ここでようやく最初のMCタイムながら、すでにハイ・ぺ―スに乗っている斎藤は挨拶も後まわしに、先日夢で見たというこの日のライヴの話に早口で突入する。なんでも、満員なのは良かったのだが肝心の演奏がボロボロで、やっていくうちにオーディエンスがだんだん憐れみの目に変わってきて焦り始めた頃、なぜかマネージャーがステージ上にいて“一旦楽屋に戻ろう。その方が結果的に良いライヴになるから”とアドバイスされたという話だったそうな。そんな話でまず場内を笑いの渦に巻きこみ、と思いきやそこからいきなりキッパリとした口調で「正夢にならなくてよかった! こんばんは、UNISON SQUARE GARDENです!」とようやく挨拶するという、これまたなかなか珍しい展開を見せる。まぁ今にして思えば強気の姿勢で最後まで駆け抜けた、まさに時間が矢のように駆け抜けていったライヴの冒頭として、なかなかオツなものだったような気もしますが、最初はちょっとハラハラさせられました。

冒頭がそうであったように、ここからもスピード・ナンバーとゆっくり聞かせる曲をほぼ交互に配置した緩急織り交ぜたメニューで、じっくりとUNISON SQUARE GARDENの何たるかを浸透させていく時間が続く。スローなテンポの中にも歌の熱量はやたらと高い「空の飛び方」、ビート感は性急ながらどこか醒めた視線がユーモラスな「デイライ協奏楽団」など、多くの魅力が多層構造で織り重なった楽曲達はどの曲も紛れも無くUNISON SQUARE GARDENの本懐を示しており、そんな楽曲達をテンポ良く自信たっぷりに披露していく形で中盤を作っていく。

そんな中、斎藤がギターを白のストラトにチェンジしたかと思いきや、いきなり飛び出した新曲「誰かが忘れているかも知れない僕らに大事な001の事」は、彼等には珍しいストレートなラヴソング。“愛してる、それだけで充分”という歌詞が繰り返されるミディアム・ナンバーながらメロディーは彼等らしい苦みの効いたもので、次なる冒険の姿勢が端的に出ていた一曲。特にこの曲についてのMCは無かったものの、場内もこの時ばかりは新しい言葉にじっくりと聞き入る静謐な時間に。もっとも、この曲が終わるやすぐさま荒々しいギター・カッティティングが鳴り響く「マスターボリューム」へとなだれ込み、場内は再び爆発的な盛り上がりへと突入していくのだが。

という、新旧もひっくるめてバンドの全てを披露しようとする意欲も旺盛なこの日の彼等だったのだが、「アルバムを3枚も作ると曲も増えてきて、ライヴでやりたいのに出来ない曲が多くなって、こりゃいかんな、と。なので、ここから20分ノンストップ!ついてこれる人はついてきてください!」と斎藤が叫ぶや、そこから8曲メドレーというサプライズ企画が登場。「等身大の地球」「MR.アンディ」など初期における重要レパートリーが凝縮されたコーナーは懐かしくもあるようで、しかし彼等のアティテュ―ドが今なお不変であることもしっかり伝える選曲になっており、後半に挿入された鈴木のドラム・ソロのこのハコにしては明らかに大き過ぎる生音の迫力も相俟って、今一度彼等のポテンシャルを再確認する時間となる。

メドレー終了後はさすがに一息いれるタイミングで「7月にシングルが出ます」という斎藤の告知が入り、場内のモードは再び最新の時間軸へと移動する。しかしながら「というと、ここでその新曲をやらなければいけない雰囲気ですが、ここではそれではない新曲いきます」といって「シャンデリア・ワルツ」に入っていくくだりは、往来のヒネクレ節の健在ぶりにちょっと笑うところ。しかしながらこの曲も、軽快なビート感がパーティライクな雰囲気を作っていくという、これまた彼等にしてはレアなナンバーで再び場内が全身を耳にして聞き入る瞬間に。ただ、歌詞はシンプルに“ハロー、グッバイ”という掛け合いで作られており、新曲ながら2番から早くもコーラスを合唱するオーディエンスの姿も多々垣間見られるなど、また新たな布石を見た瞬間だった。

そして終盤、秋には全国ツアーを今回は18か所で行うことを発表し場内を沸かせたところで、そこからは最後のブロックへ。ここは4曲続けてスピード・ナンバーで構成し場をクライマックスへと導いていくのだが、それでも「シュプレヒコール~世界が終わる前に~」「場違いハミングバード」など、闇雲に熱狂するのではなく戦うべき敵の姿をきちんと脳裏に据えた共闘ソングで締め括る、彼等の業に感じ入る流れで本編は幕となった。

そのまま客電も点きBGMも流れ始めたのだが、当然のことアンコールを求める声は鳴り止まず、待つほどもなくメンバーが再びステージに登場。ここで、今日はアクションも一段と派手だった田淵が初めてMCを行ったのだが、まずは「楽しそうじゃないか!」という一言に続いての「君達の聴いているUNISON SQUARE GARDENというのは、そんなにカッコいいのか? だったら、今度CD貸してくれ」という台詞は、今日の収穫がいかに大きなものだったのかを如実に感じ取れた瞬間だった。

そのまま田淵の「信じてくれなんて頼んでいないけれど、それでも君達がまたこうして来てくれるなら、君達を飽きさせない自信はある。また遊ぼうな!」というMCに引き続き始まったアンコール1曲目は、シンプルなリフが場内の一体感をさらに加速する「アイラブニージュ―」。ここでフロアに白・青・黄の直径1.5メートルくらいありそうな巨大風船が投入され、一気に華やいだ色になるという派手な演出が登場。オーディエンスの頭上を巡り巡った青の風船が、中盤にステージ上まで移動してきたのだが、それがちょうど斎藤がギター・ソロに入る直前のタイミングで、ゆっくりと下降してきた風船を目指し彼がステージ中央までスルスルっと移動するや、落ちてくるところをピックで破裂させおもむろにソロに突入していった絵は、完全に偶然の産物とはいえ現在良い流れに乗ってる彼等の姿を象徴しているようでもあり、この日、場内がもっと沸き立った瞬間となった。

そして最終曲「kid,I like quartet」では特効の銀テープ発射まで飛び出すなど、アンコールではとことんショーアップされたステージを見せた彼等。オーディエンスが手に手にテープを握り、タイトなビートとともにフロアを銀色の波で揺らしている光景は、煌びやかさと逞しさの両方が同居したもので、あたかも彼等のこの先を示しているかのような壮大な風景とともに、この日のライヴは幕となった。

起承転結という定番のパターンではなく、山谷を繰り返していくことでバンドの全貌をきちんと浸透させていこうとしたこの日のライヴだが、そこにオーディエンスがどこまでも実直についてきてくれたことは、今の彼等にとって大きな自信になったことと思う。なにより、オーディエンスがほとんどの曲を熟知しているところが素晴らしく、こういところは時間をかけてゆっくり人気を上昇させてきたバンドならではの風景で、この調子が先々のリリースそして秋のツアーでも拡大していくとしたら、それはかなり大きなステップボードになる瞬間だろう。そういう強い希望を抱かせてくれた、アルバム・ツアーでは余り見られない貴重な時間だったのではないかと思う。(小池清彦)


UNISON SQUARE GARDEN@Zepp Tokyo
セットリスト

01 inst~Spring Spring Spring~
02 フルカラープログラム
03 プロトラクト・カウントダウン
04 23:25
05 空の飛び方
06 デイライ協奏楽団
07 スカースデイル
08 誰かが忘れているかも知れない僕らに大事な001の事(新曲)
09 マスターボリューム
10 スペシャルメドレー
ライドオンタイム~等身大の地球~MR.アンディ~ CAPACITY 超える~ワールドワイド・スーパーガ―ル~コーヒーカップシンドローム~センチメンタルピリオド~ドラムsolo~ガリレオのショーケース
11 シャンデリア・ワルツ(新曲)
12 クローバー
13 シュプレヒコール~世界が終わる前に~
14 cody beats
15 オリオンをなぞる
16 場違いハミングバード

―ENCORE―
01 アイラブニージュ―
02 サンポサキマイライフ
03 kid,I like quartet
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