Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX

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Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
昨年秋のアルバム『新呼吸』を引っ提げての全国ライヴハウス・ツアー、その追加にしてファイナルとなったSHIBUYA-AX公演。急遽、ニコニコ生放送の中継も行われたのですでにご覧になった方も多いと思うが、アルバムのテーマである“次のフェーズに進んだバンドの姿”を全国つぶさに披露して来た達成感、あるいは充足感といったものを再び確認するような丁寧なステージだった。

今年はバンドの結成10周年を記念する年でもあるのだが、最新アルバム『新呼吸』はそういった祝賀ムードはあまり意識していない実直なもの。ソングライター・小出祐介が10年というキャリアを経て、新たに得たノウハウや視線で改めて楽曲作りの原風景~自身の内面と恋愛観に立ち向かっており、それは同時にこれからの新たな10年間を見据えた次のスタート地点ともなっている作品だった。従ってライヴも、アルバムの楽曲をほぼ順番通りに進行する実にストイックな姿勢を見せるものとなっていた。

Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
開演予定時刻をちょっと過ぎた頃、場内のBGMがフェイドアウトし始めると、そこにギターのフィードバックノイズのような音が混じり始め、それに連動するように場内が暗くなり始める。すると、まず上手から湯浅将平がひとりで足早に登場。大きな拍手が起こる中、早速ギターをセッティングするやノイズをさらに増幅させ、アルバム『新呼吸』の冒頭部分と同じフリーキーな音像を再現させていく。その轟音が充分に場内に響き渡ると、今度は下手から小出祐介、関根史織、そして堀之内大介の3人が登場。それぞれの位置に就くと、ドラムのフィルからまずはアルバムの1曲目と同じく“深朝”のゆっくりとした、長いドラマの始まりを告げるようなスタートと相成る。一日の始まりの風景=早朝をイメージした楽曲に対応して、照明もややくすんだ夜明けを連想させる淡いトーンに染まり、楽曲そしてアルバムのイメージを効果的に視覚化していく。時は経っても夢はやはり同じようにそこにある…そんな歌詞で10年間を噛みしめ、そして次のステージを目指すステップを確認するように歌う小出祐介の歌声も実にクリアーで、アルバムそしてこのツアーに賭ける新しい決意を物語る。アルバムと同じく2曲目に披露された“ダビングデイズ”も、ファンキーなナンバーながら解放感で盛り上がるというよりは、低い重心を持ったリズムの中「同じことの繰り返しの日々」を描くシニカルなトーンが強め。と、少々じらし気味のメニューでもったいぶりながら始まったこの日のライヴだが、3曲目に初期の人気曲であり当時はライヴでのクライマックス曲だった“ELECTRIC SUMMER”を唐突に投入するや、場内がここぞとばかりにコールで応える場面も登場するなど、新しい姿とお馴染みの光景を交錯させることで10年間の重みを一層感じさせるアイデアも発揮されていく。

最初の挨拶で小出は、まずオーディエンスへ追加公演の感謝の意を述べつつ、ニコ生を視聴中の方々には「全世界同時中継ですね」とおどけたところも見せながら、それでも「今日は『新呼吸』の世界を楽しんでください」と手短に締め、ライヴの趣旨を再確認する。続く“school zone”は平熱感と日常の風景をテーマとした、タイトル通り学生時代の回想を歌ったものだが、そこにある懐かしさを歌うことで相対的にあの頃とは違う“今の自分”を浮きあがらせる手法も冴えており、ミディアムナンバーながら場をふつふつと湧きあがらせていく。このアルバムに対する思い入れに沿った流れはさらに続き、“転校生”~“スローモーションをもう一度”と曲が徐々にテンポアップしていく中では、メンバーそれぞれが向かい合いながらギターフレーズをしっかりと重ね合わせて行く様子を見せたり、オーディエンスとのコール&レスポンスでステージ前方に4台並んだお立ち台の上に関根や湯浅が飛び乗り身を客席へ乗り出していく姿も現れるなど、彼等にしては派手目のアピールを見せる場面も多々登場。ただ、それらのアクションも場内を煽るというよりは、メンバー間の呼吸を深めようとするかのような極々自然体なもので、時折こぼれる笑顔がオーディエンスに大きな安心感を抱かせる、そんな時間が続いていく。

Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
そんな堅実な流れで曲はほとんど間断無く続き、中盤でようやくカジュアルなMCが入る。小出は「ここでしか長いMCは入れられないんで」と前置きしつつ、ツアー・ファイナルとして今日を大成功のうちに終えたい!という熱い想いを述べる。彼によると、追加公演の場所・SHIBUYA-AXは長い活動の中にあって良いヒントを与えてくれた印象深いスペースとのことで、ツアーを一回りした最後の場所として最適の会場である旨が熱心に語られる。だからこその感慨深げなMCぶりにこちらも素直に納得しつつしみじみ聞き入っていると、話の後半はいきなり「ここでドラマーの堀之内がとっておきの話をしますんで、みんな爆笑してください。それがあれば、今日一日、とても素敵な日になると思うんで」と半ば反則な誘導とともに彼のトークへ。こうなると話が始まる前から団結感充分の場内は彼の何気ない一言一言にいちいち「おぉ~っ」と合いの手を入れる用意周到ぶりで、その白々しさが却って可笑しく、それはそれで着実に場内のムードを良いものへと変えていくから、ここは小出祐介、お見事! 堀之内の話そのものは、部屋にヤモリがいたので写メを撮ってメンバーに見せたら「これって、トカゲじゃない?」と言われたという、まあ他愛ないものながら、とりあえず場内は用意していた大爆笑の渦に。やれやれ…といった空気も一瞬漂うものの、しかしながら彼がドラムのイントロによる“short hair”をタイミングよくスタートさせる手際の良さもあり、場内一致団結感そのままにライヴは後半に突入していくという、これはこれで上手い展開となった。

そこからは、アルバム後半戦の楽曲を中心に最後まで一気に聞かせるタイトな流れで駆け抜ける。アッパーな曲が続くメニューは、“青い春、虚無”にてお馴染みの湯浅将平ダンスタイムが登場する一方、“ヒカリナ”で小出が「ギター、俺!」と叫んでソロを取りながらステージ前面に出てくる場面もあり、そして堀之内の長尺ドラムソロが登場したかと思いきや(5分くらいありました)、関根史織の歌声をフィーチャーした“夜空1/2”等々、各人が見せ場をしっかりと全うするファンサービスも忘れない進行。そんな演出でステージを彩りながらも、やはりラスト2曲はアルバムに沿った“yoakemae”~“新呼吸”というシリアスな2曲でクロージング。今現在の決意表明を赤裸々な言葉で描いた、アルバムのテーマ曲ともいえるナンバーの連発でしっくりと締め括り、深い余韻の中、4人は静かにステージを去っていった。

Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
しばしの間、そんな空気を噛み締めているかのようなオーディエンスだったが、ほどなくアンコールを求める声が沸き起こり、しばらくしてメンバーが再登場する。ライヴ中はほとんど触れられなかったものの、実はこの日は新ミニアルバム『初恋』のリリース日であり、ここでようやくそんな話がじっくり語られる場面に。小出が自ら「我が神!」と語る岡村靖幸にプロデュースを委ねた“君はノンフィクション”や、映画「図書館戦争革命のつばさ」主題歌の表題曲“初恋”など語りどころは多いアルバムなのだが、そこにはヒャダインこと前山田健一との初コラボ曲もあり、そんな話から小出の「それでは、スペシャルゲスト、ヒャダイン!」という唐突な一言で彼が登場するサプライズも。早速コラボ曲“ぼくらの frai awei”を彼のキーボードとコーラスを含めて演奏することになったものの、小出曰く、彼等が4人以外の演奏者を加えてプレイするのは初めてのこと(ヴォーカルやラップでゲストが加わったことはありましたが)。一体どうなることかと思いきや、ヒャダインも前半こそ懸命に鍵盤に向かい合っていたものの、後半からはお約束のようにステージ中央に移動するや、歌う小出の真後ろで舞うわ跳ねるわのやりたい放題状態に。予想通りの展開に加え、そもそもの曲調のユーモラスさもあり小出もニヤケ笑いが止まらず、今日のライヴの中では珍しくオーディエンスも笑いが止まらない時間が続く。しかしながら、ステージ上が4人に戻ると再び今日のライヴの趣旨に立ち戻り、2008年の楽曲ながらライヴで繰り返されることで今や彼等の代表曲のひとつとなった“changes”を演奏し、今度はツアーを終えた満足気な表情を見せた4人は手を振りながら下手へと去っていった。

その直後、すぐに客電が点きBGMも流れ始めたのだが、さらなるアンコールを求めるオーディエンスの声は鳴り止まず、すると予定を変更して三度、彼等がステージに登場。ツアー最終日ならではのはからいだが、小出の「さぁ、もう、ぶっ壊れちゃいましょうか!」という一言とともに始まったのは、イントロ一発で盛り上がるライヴでのキラー・チューン“祭りのあと”。最後の最後はライヴ定番のナンバーで、アルバムの内容とはまた別に、ライヴの現場力にも滅法強いことをアピールしながらツアーを終えた彼等の最後の一言は「この夏はフェスでお会いましょう」。この夏には各地のフェスへの出演が決定している彼等だが、また何か特別な仕様でも考えているかのような不敵な口調とともに姿を消した4人だった。(小池清彦)

Base Ball Bear @ SHIBUYA-AX
1 深朝
2 ダビングデイズ
3 ELECTRIC SUMMER
4 school zone
5 Transfer Girl
6 転校生
7 スローモーションをもう一度
8 short hair
9 SHE IS BACK
10 青い春、虚無
11 ヒカリナ
12 夜空1/2
13 kodoku no synthesizer
14 4D界隈
15 yoakemae
16 新呼吸

アンコール
1 ぼくらのfrai awei
2 changes

ダブルアンコール
1 祭りのあと
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