藤巻亮太@渋谷公会堂

藤巻亮太@渋谷公会堂
「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012」や「ap bank fes '12 Fund for Japan」をはじめ、この夏は各地の夏フェスに“新人”として乗り込み(何しろ2月末にソロ・デビューを果たしたばかりなのだ)、気合いみなぎるステージを繰り広げてきた藤巻亮太。8月15日には2ndシングル「月食/ Beautiful Day」を発表、そのレコ発的意味合いの東阪ワンマンがこの日初日を迎えた「藤巻亮太 LIVE 2012“ECLIPSE”」だ。来週9月19日には大阪なんばHatch公演が控えているので部分的なハイライトを書くに留めておきますが、あるいは大阪参加予定の方はそれ以降にお読みいただいたほうが賢明かもしれませんので、あしからず……。

というわけで、今年2度目となるワンマンを見終えての率直な感想は、要約すると「とても挑戦的だった」ということ。それはライブ冒頭から顕著で、暗がりのなかバックバンドと共に登場した藤巻は、10月17日にリリースされる1stソロ・アルバムの表題曲=“オオカミ青年”を、何か重大なことでも宣告するような緊迫感でもって歌いはじめたのだ。苦悩に悶える胸中を綴ったリリックと共に、楽曲のトーンも重く、暗い。誤解を恐れずにいえば、それはエンターテインメントとしてのライブの幕開けには必ずしも相応しいとはいえないナンバーで、前回のソロ初ワンマン@赤坂BLITZ(レポートはこちら→http://ro69.jp/live/detail/66481)がそうであったように、本来なら“キャッチ&ボール”のようなパッと場が華やぐアッパーなムードの楽曲から始めるのが順当だろう。しかし、今の藤巻はこの曲から始めなければならなかったし、この曲から始めることで、以降の藤巻は憑き物が取れたように晴れ晴れとした笑顔も見せて、伸びやかな歌声を響かせていくのだった(それは、ひとつの“通過儀礼”のようなものだったのかもしれない)。「いきなり声が枯れちゃったよ!(笑)」、「自分でもびっくりするくらい気合い入りすぎて、気合いがカラ回ってます(笑)」とMCでは冗談めかして語っていたけれど、中盤にも内省的な楽曲を立て続けに披露する場面もあって、観ていて圧倒されるほど決意とエモーションみなぎるパフォーマンスが繰り出された。

藤巻亮太@渋谷公会堂
思えば、7月に出演したつま恋の「ap bank fes '12 Fund for Japan」でもそうだった。決してホームとはいえない環境のなかで、ソロとしての新曲で畳み掛け、楽曲の即効性以上に溢れ出る気迫がオーディエンスを席巻し、広大なフェス会場を沸かせたのだった。レミオロメンという“成功体験”にいささかも寄りかかることなく、裸一貫の藤巻亮太として次なるステージに挑んでいくその姿はとても頼もしく思えたし、そんな夏フェスでの武者修行が藤巻にとっても大きな自信となったのだろう。未発表の新曲でも歌いながら手拍子を煽ったり、堂々たる手さばきでオーディエンスをソロ藤巻の物語へと引き込み、大きな一体感で渋谷公会堂を包んでみせたのだから。「(この日のライブが)楽しみで楽しみで、昨日は寝られないかと思ったけど、昼寝をしたらサッカー(日本代表vsイラク戦)が始まるくらいまで寝ちゃって、で、サッカー観て11時くらいに寝て、結局朝の10時くらいまで、トータルすると昨日は16時間くらい寝てました(笑)」というMCも、今の藤巻の“図太さ”が伺えるエピソードだ(大一番を前に睡眠十分すぎて、ちょっとどうかと思うほどですが・笑)。

藤巻亮太@渋谷公会堂
個人的なハイライトは、中盤に披露された“月食”。ライブを重ねたことでそのアンサンブルは見違えるほどの完成度を誇っていて、ミラーボールを巧みに駆使したライティングとあいまって深淵なサウンド・スケープが出現。お客さんはビートに乗ることも忘れ、固唾を飲んで見入るといった具合で、楽曲の持つ説得力が何倍にも引き出された手ごたえがあった。スクリーンに桜のつぼみが次々に開花していくシーンが映し出された終盤の“光をあつめて”も、サウンドと見事にシンクロした演出がことのほか素晴らしく、満場のオーディエンスを残らず魅了した。バイクで転倒して鎖骨骨折した話(!)や、バック転して顔面から落ちてしまった話(!!)など、MCでも渋公を(悲鳴混じりに・笑)沸かせたこのワンマン。それはソロ藤巻の充実を余すところなく伝える、見所満載の90分だった。「アルバム出ますけど、今も新曲たくさん作ってるんで、今後も楽しみにしていてほしいと思います」と頼もしいくらいに宣言していた藤巻から、しばらくは目が離せなさそうだ。(奥村明裕)
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