水曜日というド平日であるにもかかわらず、盛大に催されたハロウィン・パーティ『MAN WITH A MISSION & BLITZ presents AKASAKA HALLOWEEN “TRICK OR TREAT”』。会場内にはオバケやジャックランタンを模した風船が揺れ、来場者も思い思いの仮装(セーラー服やら狐面の巫女姿、パンダの一団、BLUE MANまでいる)によって目を楽しませてくれていた。
18時の開演時間を迎えると同時に、いきなりそのブキミ可愛いガレージ童謡とでも呼ぶべき表現世界にオーディエンスを叩き込んだ犬彦。ガッチリなヘヴィ・グルーヴとセミの鳴き声のシンクロが楽しい上、芸達者ぶりを存分に発揮したセミメタルバンド=Cicadas。そしてこの夜の出演者唯一の「人間枠」でありながら白塗り(スカルもしくはゾンビ?)メイクにマントという用意周到なデスロック風の仮装でオーディエンスをシンガロングに導いたMUCCと、それぞれの持ち時間は「今夜の出し物」といった感じで短いが本気度をひしひしと感じさせるパフォーマンスが次々に繰り広げられる。
MUCCの達瑯が「マンウィズのメンバーさんの顔が可愛くて。マンウィズのシルバニアファミリーとかあったら絶対買うよね」と思わず頷いてしまうような一言を残して更に気持ちが昂ったところに、いよいよこの夜のホスト役であるMAN WITH A MISSIONが登場である。Spear Rib(スペア・リブ:Dr.)は三角帽子をオオカミ頭に乗せ、DJ Santa Monica(DJ サンタ・モニカ)がスーパーマンの姿なのは究極の生命体だから納得だけれど、Kamikaze Boy(カミカゼ・ボーイ:Ba)がスギちゃんみたいだったりJean-Ken Johnny(ジャン・ケン・ジョニー:Vo./G.)が飛脚みたいだったりするのは、つまり彼らにとっては人間の姿が仮装ということか。スタッフはもとよりサポートのE.D.ヴェダーも仮面以上の仮装をしていて、念入りなことこの上ない。
さっそく“Mash UP the DJ!”からハイブリッドにしてタイトなパーティ・サウンドを繰り出しつつ、パワフルな歌声を届ける合間にTokyo Tanaka(トーキョー・タナカ:Vo.)は傍らの角付きカブト(THE冠こと冠徹弥の装備品に酷似している)を被ろうとしてみたり、サイズが合わなくて諦めたりしている。LEDスクリーンの背景ではハロウィンの愛らしいCGイラストがクルクルと入れ替わって、“Trick or Treat”や“Smells Like Teen Spirit”といった『Trick or Treat e.p.』からの外せないナンバーも続くのだが、“ニュートラルコーナー”までの瞬く間の6曲でメンバーが立ち去ってしまった。早い。
ここでステージ上のスクリーンには『今回のミッション』ビデオが映し出された。その内容をざっくり書くと、ジョニーが折角フランスから取り寄せたフランスパンをスペア・リブが食べてしまい(口に咥えているのが可愛い)、一人でフランスまで行って買って来い、というもの。現地の芝生でウサギと戯れたり寝転がったり、アイドルのイメージ・ビデオばりのサーヴィス・ショットが満載だ。結局パンは買い忘れたようだが、映像の中のスペア・リブがクイーン“We Will Rock You”の名ビートを刻み始めて「後半戦、未知との遭遇が起こる!」と煽り文句が入る。
オーディエンスによるハンド・クラップ&コーラスを巻いて歌われる“We Will Rock You”。本来のタナカの位置について高笑いとともに伸びやかな歌声を繰り出すのは、なんとオオカミ頭の帽子を被ったデーモン閣下だ。そのままマンウィズとのセッションで相撲の博識ぶりが散りばめられた“雷電為右衛門”が《オオカミさんと相撲をとれ〜》と歌われる。マンウィズのテクニカルな演奏と閣下の迫力の歌声が、またすこぶる相性が良くて困ってしまう。楽曲の合間には閣下からジョニーへの「世を忍ぶ仮の姿、つまり人間になることはないのか?」といった怒濤の質問攻勢が。体に怪我をしたら人間の血液を、頭部に怪我をしたらオオカミの血液を輸血するといった新事実も次々に暴かれるという、閣下の秀逸な絡み方にはさすがに舌を巻く。それにしてもジョニー、悪魔との会話の中で「オー、ジーザス!」は禁忌だと思うのだが、いかがだろうか。
ハロウィン・パーティならではのスペシャル・セッションで勢いに乗ったまま、タナカが再登場して本編ラストの“FLY AGAIN”まで、そしてアンコールは“DANCE EVERYBODY”と、平日の赤坂ブリッツのフロアを熱く愉快な仮装ダンスの坩堝へと変貌させたマンウィズ。ジョニーは本編終盤に「日本デハマダ余リ馴染ミガアリマセンガ、遊ビニ来テテクレタYOUタチ、本当ニアリガトウ!」と告げていた。そうか、マンウィズとは、ハロウィンなのだ。元を正せば、ロックも宗教も、人間(とかオオカミとか悪魔とかセミとか)が生活のために生み出したものだ。自由に使って、楽しむべきなのだ。そのとき日常は祭典と化す。貪欲にさまざまなエッセンスを取り入れながら突き抜けた高揚感のために組織されたマンウィズのパフォーマンスは、まさにそれじゃないか。フロアにお菓子を散撒き、濃密な楽しさに満ちた夜は、万感のフィナーレを迎えるのだった。
さあ、この11月にはいよいよ待望の『MASH UP THE WORLD TOUR』の国内編もスタートする。また、自身のツアーだけでなく、相変わらず各地のイヴェントから引く手あまたのマンウィズは、12/28には『COUNTDOWN JAPAN 12/13』への出演を予定しているので、こちらもぜひお楽しみに。(小池宏和)
※レポートの終盤に、事実誤認の箇所がありましたので修正しました。MAN WITH A MISSION、各関係者、ファンの皆様にご迷惑をおかけしたことを、お詫び致します。
MAN WITH A MISSION セットリスト
01: Mash UP the DJ!
02: distance
03: Trick or Treat
04: Smells Like Teen Spirit
05: DON'T LOSE YOURSELF
06: ニュートラルコーナー
07: We Will Rock You (with デーモン閣下)
08: 雷電為右衛門 (with デーモン閣下)
09: 太陽がいっぱい (with デーモン閣下)
10: WELCOME TO THE NEWWORLD
11: Get Off of My Way
12: TAKE ME HOME
13: FLY AGAIN
EN: DANCE EVERYBODY
『MAN WITH A MISSION & BLITZ presents AKASAKA HALLOWEEN “TRICK OR TREAT”』 @ 赤坂BLITZ
2012.10.31