10-FEET@ZEPP TOKYO ゲスト:B-DASH

10-FEET”thread”TOUR 2012-2013

※全71本のツアーの11本目なので、文末にセットリストは載せませんが、以下、本文を読んでいくと演奏曲目の大半がわかる内容になっています。知りたくない方はご注意ください。

ニューアルバム『thread』から、いや、正しく言うと、その『thread』にも収録された1年前のシングル『その向こうへ』から、10-FEETは変わったんだなあ。ということが、とてもよくわかるライヴだった。以前から、アルバム1枚ごとに、ツアー1回ごとに、変化すること、進化することを自らの義務もしくは使命としているみたいに、ずっと変わり続けてきたバンドだけど、そういうこれまでの変わり方とは違うものを、とても感じた。

演奏技術とかアレンジとか表現したいマインドとか、そういうすべてに関して、「今、自分たちができる範囲で音楽を作る」ということを、しない。「やりたいけどまだできない範囲」「やりたいけどどうやったらいいのかわからない範囲」にまで無理矢理手を伸ばして、だから大変な思いをながらアルバムを作って、その後のツアーによってそれを「できる範囲」のものとして、力ずくで肉体化していく。10-FEETはそんなふうにして進んできたバンドだ、と僕は思っているが、そのようなこれまでの進み方とは違う、一気に違う次元に飛んだような感触が、『thread』の曲たちにはある。
ということが、『thread』全12曲中11曲が演奏された(“求め合う日々”以外は全部やった)この日のライヴでわかった気がした。
その11曲以外は“VIBES BY VIBES”とか“RIVER”とか“goes on”とか“4REST”あたりの鉄板曲がずらっと並んでいるんだけど、それに負けてない、どの新しい曲たちも。ただ、それは、「鉄板曲たちと同じくらいアガれる」とか、そういうシンプルな尺度における「負けてなさ」だけではない。
なんというか、どの曲にも、パンクじゃなくてもいい、ミクスチャーじゃなくてもいい、ラウド・ミュージックじゃなくてもいい、というような感触があるのだ。と書くと批判してるみたいだが、そうではなくて、パンクであることに、ミクスチャーであることに、ラウド・ミュージックであることに「頼っていない」感じがする。つまんない言い方をしてしまうが、メロディと言葉がとにかく強い。で、その強さは、これまでの10-FEETが持っていた才能や技や芸風の中から生まれたような、「ああ、TAKUMAのメロディってこういう感じだよね」という類いのものではない。もっと先にある、もっと普遍的なものである、もっと大きな強さだったり美しさだったりする、そんなメロディと言葉になっていると思う。

僕の席の位置のせいもあったと思うが、この日は、自分がこれまで観てきた10-FEETのライヴのアベレージに比べると、PAの出音がいい方ではなかったし、各楽器の音のバランスも、演奏も、ツアー後半のようにガシッとまとまってはいなかったし、TAKUMAの喉も絶好調ではなくて、ちょっと声がつぶれ気味だったように感じた。が、そういう細かいことはどうでもよくなるくらい、3人の思いやテンションがつんのめるくらい前に出た、すばらしいライヴだった。
あと、最初から、バンドが驚くくらいのものすごいテンションでもって、それに応えていたオーディエンスもすごいと思った。TAKUMA、1回目のMCで「よけいなあおりとかなくても、ぶっとんでんなー」と、思わずもらしてました。

あと2つ。
ゲストのB-DASH、「さすがだなあ」としみじみしてしまうほどの、安定したアゲっぷりでした。「安定した」と「アゲっぷり」って矛盾しているが、本当に何にも考えず、裏を読んだり勘ぐったりバンドのコンディションを心配したりすることなく、頭空っぽにして楽しめるライヴ。彼らが登場した頃、僕はGONGONのことがなんかどうも怖くて「この人は本当はいったい何を考えているんだろう」と思いながらライヴを観てたよなあ、ということを思い出したりもした。しゃべると落語家、歌うと小5みたいなあの声と、メロディそのものが持っている素朴なせつなさ、何度聴いても何度観ても、本当にいいなあと思う。
それから、10-FEET、ライヴ中に演出というかサプライズというかびっくりさせることが2つくらいあったんだけど、それ、今後もあるだろうから書かないでおきます。おきますが、それ以外でひとつだけ、TAKUMAのMCより。「NAOKI―!」と飛んだ歓声に「呼びすけにされてるぞ! 俺、小6まで『呼び捨て』を『呼びすけ』やと思ってた」と言ったTAKUMAが、さらに披露したネタです。
この間、「ふとん大作戦」で集めた物資を東北に送るので、みんなで梱包作業をしていた時のこと。その模様をツイートしようとするも、何度iPhoneの画面に入力しても、「梱包」という漢字が出てこない。と、背後から、一緒に作業していた京都MUSEの店長が、「TAKUMAさん、それ、『こんぽう』ですよ」。
TAKUMA、この年まで「梱包」を「ほんぽう」と読むと信じて生きてきたそうです。何度変換しても「奔放」としか出ないと思ったら……と、顔が真っ赤になるくらい恥ずかしかったという。
と、ここまで話して、「恥ずかしいからツイートすんなよ!」「FACEBOOKに書くなよ、『TAKUMAワロス』とか!」などと何度も念を押す感じが、明らかに上島竜兵が熱湯風呂のそばで「押すなよ、絶対に押すなよ!」とアピールする時のそれだったもんで、以上、肥後克広的義務感でもって、熱湯に蹴落とさせていただきました。(兵庫慎司)
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