モーモールルギャバン @ 新木場STUDIO COAST

「楽しんでるかー! 幸せかー!」のゲイリー・ビッチェ(Dr/Vo)の呼びかけに、凄まじい歓声で応えるオーディエンス! さらに「妊娠したかー!」の声に「イエー!」という野太い声が沸き起こり、「マジか。もっと妊娠させてやるー!」の大絶叫……今年は4thアルバム『僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ』をリリースし、その全国ツアーでは初のZepp Tokyoワンマンも成功させたモーモールルギャバン。その「2012年打ち止めワンマン」と称されたスペシャル・ライヴが新木場STUDIO COASTで行われた。ライヴ終盤には「こんなところに立てるのは一流のミュージシャンだけだと思ってたから、ちょっと申し訳なかったりもするけど。これからもモーモールルギャバンをよろしく!」というゲイリーの感極まるMCも飛び出して、凄まじい狂騒と歓喜に包まれた今夜のアクト。年納めというにはいささか早い気もするが、まさに盆暮正月が一度にやって来たような、モーモーならではの圧倒的なエンタテインメントが結実した最高のステージだった。

11月30日の大阪公演を控えているのでセットリスト掲載は控えるが、ゲイリーの爆裂ビートとT-マルガリータ(B/Vo)の「かなしくないよ! かなしくないよ!」の悲痛な叫び声が交錯した〝いつか君に殺されても”や、祝祭をそのまま音に変えたようなユコ・カティ(Key/Vo/銅鑼)のカラフルなオルガンの音色が壮烈に響きわたった〝スシェンコ・トロブリスキー”など最新アルバムの曲あり、「バンド結成のきっかけになった曲」という〝パンティー泥棒の唄”などの往年の定番曲ありの、モーモーのキャリアを総括したような豪華絢爛なライヴ。最早お約束となっている数々のネタもキッチリと実行し、オーディエンスの一糸乱れぬシンガロングやオイ・コールを誘うという、どこまでもエンタテインメントなステージだった。その一方で、”野口、久津川で爆死”の恒例の口上では、「もうね、大変なんですよ。ライヴのたんびに爆死してね。もう500回ぐらいは爆死してるんじゃないかと思います。その結果、ついに『野口、死亡説』が出たそうです。巷でそういう噂が流れているみたいでね、つい3日ぐらい前にも『野口くん、爆死したって本当?』というメールが友達から野口くんに届いたみたいです」(マルガリータ)→「死亡説が流れるのなんて、志村けんと野口ぐらいだぜー!」(ゲイリー)と繋いだり、〝サイケな恋人”ではゲイリーがヒョウ柄のパンティーを脱いだ下に黒のパンツを履いていて、「散々『クロなら結構です』と歌っておいて、黒のパンツでごめんね。でも最近思ったんだ。なんやかんやで、黒はエロい! だからこれからは黒いパンツを愛していこうと思います!」と言ってみせたり……と、新たなネタでフロアを爆笑の渦に落とし込む貪欲さ。高い演奏力と激情迸るプレイスタイルで最大級の熱狂を描き出すモーモーのライヴは音のダイナミズムだけを取ってみても十分エキサイティングなものだけど、そこに甘んじてなるものかという気概で新鮮なネタやアイデアを次々とブチ込んでくる姿勢には、いつ観ても恐れ入る。

また、この日はほぼ全曲にわたってステージ背後のスクリーンで流れていた映像も冴えていた。ある曲では歌詞に沿ったシュールなアニメーションが流れたり。ある曲では半裸の男性によるユーモラスなダンス映像が流れたり。またある曲では汗だくで演奏する3人の姿をリアルタイムで捉えたライヴ映像が流れたり……。モーモーならではの血沸き肉躍るような狂騒感が、1曲ごとに凝った演出が施された映像によって、よりクッキリと浮かび上がっていた。特に印象的だったのは、いくつかのアンセムで大写しにされていた、笑顔でジャンプしシンガロングするオーディエンスの姿。こんなにも個性的なモーモーの音楽が、「僕らの唄」となって盛大な大合唱を巻き起こしている風景は、感動的ですらあった。

MCでは、銀ラメハット&銀の付け髭&柄タイツでひときわ煌びやかにキメたマルガリータに、「あなた今日、シルク・ドゥ・ソレイユみたいね」と突っ込むユコ。それを受けて、「一番低予算なゲイリーです。でも(ライヴに備えたカラダづくりの為に通っている)スポーツクラブに金かかってるんだよ!」とゲイリーが応戦する。その直後に披露された、ユコのオルガンやグランドピアノをフィーチャーしたスロー・バラードも、この日の忘れられないハイライトだった。ユーモア&悪ノリたっぷり、だけど気づけば切ないエモーションが押し寄せて、目も眩むような美しい幻影が描かれる――。「パンティー!」や「ユキちゃん!」などリビドー全開の絶叫も、悲哀に満ちたセンチメンタルな感情も、一切の妥協や手加減なしにひたむきに解き放つモーモーならではのマジックが、そこには作用していた。

アンコールでは、ドでかいサプライズも! 詳しい内容は明かせないが、モーモーらしい遊び心と愛情に満ちた、とてつもなく馬鹿馬鹿しくてハッピーな時間であったことだけは伝えておこう。大阪公演に足を運ぶ人は、大いに期待していてほしい。(齋藤美穂)
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