ZAZEN BOYS @ SHIBUYA-AX ゲスト:坂田明

ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION 2012

ZAZEN BOYS @ SHIBUYA-AX  ゲスト:坂田明 - pics by Kikuchi Shigeopics by Kikuchi Shigeo
ZAZEN BOYS @ SHIBUYA-AX  ゲスト:坂田明
ZAZEN BOYS @ SHIBUYA-AX  ゲスト:坂田明
ありとあらゆる言霊たちが音を連れ、跳ね回り、たなびき、遊んでいた。新作『すとーりーず』を携え9月にスタートし、2本の追加公演を合わせて計30本の公演を駆け抜ける、ZAZEN BOYSの全国ツアー終盤戦。前日にもステージが行われたSHIBUYA-AXである。12/24にツアー・ファイナルとなる名古屋CLUB QUATTROでの公演を控えているので、そちらへの参加を楽しみにしている方は、以下レポートの閲覧にご注意を。

無数の電球が無造作にぶら下がり、背景も何も無い殺風景なステージに、これまたオープニングSEもなく、向井秀徳を先頭にしたZAZEN BOYSが登場。「1エン2エン3エン4!!」の掛け声から、まずは大音量の音出しを一発かまし、BPMの速い“サンドペーパーざらざら”が、ソリッド極まりないバンド・サウンドと共に繰り出されていった。「くり、くりくり、繰り返される、諸行は無常。それでもやっぱり蘇る、性的衝動」と向井によるお馴染みの口上がリズムを掻き回し、硬質な16ビートにカシオマンこと吉兼聡のギター・ストロークがじわりと滲む“SI・GE・KI”では、ステージの背景にメンバーの巨大な影が映り込んで蠢く。「シブヤ・シティー!!」と昂った声を上げる向井は、序盤からその歌声も凄まじい。浪曲のような節回しが映える“RIFF MAN”は、以前ならファルセットで歌い上げていた箇所も、芯の強いシャウティング・ヴォーカルで押し切っていた。

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バンドの変態的なアンサンブルはツアーを通して更に磨き抜かれ、オーディエンスの間の手を巻く“HIMITSU GIRL'S TOP SECRET”は、コンビネーションも音圧も強烈なのにどこか涼しげな表情でプレイされているところがある。柔道二段・松下敦による表情豊かなタム・ロールが轟く、アレンジが大幅に改変された“Honnoji”では、吉兼がギクシャクとユーモラスなロボット・ダンスを踊ってみせていた。「MATSURI STUDIOからMATSURI SESSIONを……ふ……ふぬぐりあがってやって参りました、我々ZAZEN BOYS。今日は皆さん、寒い中お越し下さいましてありがとうございます。次は、4年ぶりぶりのニュー・アルバム『クソまみれの青春』から“電球”、やってみよう」と向井。ステージの天井から吊り下った無数の電球がここで点灯する。

向井はこの後にも、「これまでは(アルバムに)数字のタイトルを付けていたんですけれども、心持ち新たに名付けてみようと思いまして。その新作『クソだらけの青春』から“天狗”」と、心持ち新たにボケまくって結局一度も『すとーりーず』の正しいタイトルをコールしなかったのだが、なにしろその“天狗”の、奇妙奇天烈な歌詞なのになぜかノスタルジーを喚起しまくるパフォーマンスに触れると、タイトルのことはどうでも良くなってしまう。そしてエンヤトット・グルーヴを吉田一郎のベースがブリブリと牽引してゆく“TANUKI”の後には、“IKASAMA LOVE”、“気がつけばミッドナイト”、“You make me feel so bad”、“DARUMA”といった往年のシングル収録曲も絡めるセットが進められていった。ワン・コードが延々と繰り返される間に向井がオーディエンスをじっくりと睨め付けて突如演奏を再開したり、フェイント混じりにトリッキーなカウントを数えたりと、定番でありながらいつでもスリリングな真剣勝負のZAZEN BOYSである。

ZAZEN BOYS @ SHIBUYA-AX  ゲスト:坂田明
しかしやはり、『すとーりーず』収録曲の「日本語からロックが始まっている」成果は、とんでもないレヴェルにある。「邦楽・洋楽」や「J-ROCK」といった音楽ジャンルのカテゴライズにはたいした意味を感じないが、『すとーりーず』は「日本語ロック」の大傑作である。日本語の歌詞でしか生まれ得ない、ロックのアンサンブルとグルーヴが突き詰められている。ロックに日本語を乗せるのではなくて、日本語がロックしている。“ポテトサラダ”を経て、「次は新作『臭すぎた青春』の中から“パンツ行進曲”」と遂に楽曲タイトルまでが正しく紹介されなかった“サイボーグのオバケ”は、歌詞の中の《村田英雄》が《中村勘三郎……中村屋!》に差し替えられてオーディエンスの歓声を誘っていた。《パンツ! パンツ! ○○の真っ白パンツ! ●●の汚れたパンツ!》とヒート・アップしてゆくアドリブ部分に登場した実名については、本人と向井の名誉のために伏せておきたい。

ZAZEN BOYS @ SHIBUYA-AX  ゲスト:坂田明
“Weekend”の後、「今夜はステキなお客様をお迎えしております」と呼び込まれたのは、ゲストのサックス奏者・坂田明だ。“泥沼”での、ZAZEN BOYZの4人を追い抜く勢いでバースト・アウトしてゆくサウンドがいきなり凄すぎて笑ってしまう。ディープな音像の“暗黒屋”にこのフリーキーなサックスが加わるのも最高だし、ダメ押しの“COLD BEAT”では向井のトリッキーな指揮にも楽々と応えてしまう。チャルメラのメロディで「泣かないで、微笑んでよー♪」「抱きしめて、口づけてよー♪」とメンバー&坂田に、そして向井が指名した男女ひとりずつのオーディエンスにハモらせる一幕は、会場全域の大合唱にまで規模が拡大していった。「最後は、みなさんそれぞれのリズムで歌ってください」と、カオティックな歌声にフロアが満たされる。でも、この「それぞれのリズムで一斉に歌う」混沌とした音像こそが、ZAZEN BOYSであり、『すとーりーず』なのではないか。SHIBUYA-AXが、シブヤ・シティーが、ZAZEN BOYSになった瞬間だった。

ZAZEN BOYS @ SHIBUYA-AX  ゲスト:坂田明
坂田明を拍手で送り出した後も、熱を帯びたオーディエンスは“WHISKY & UNUBORE”を向井と共に高らかに歌い上げ、ミラーボールの下、同期混じりのアップリフティングなダンス・ビートと化した“すとーりーず”で体を揺らしていた。ステージでは、無数の電球がランダムに明滅していて奇麗だ。そして“破裂音の朝”と“はあとぶれいく”で本編をフィニッシュ。アンコールでは、吉田・松下・吉兼はそれぞれの楽器を手に取ることもなくマイクに寄り添い、“KIMOCHI”を歌うのだった。そこに差し込まれる、再登場した坂田明のムード一杯なサックスも最高だ。万感のフィナーレは、狂ったエモーションが踊るダンス・グルーヴ“Asobi”。追いつめられた感情が呼び起こすのは記憶か、幻覚か。それが新たな可能性と表裏一体になって押し寄せる、音と言葉の2時間半であった。ZAZEN BOYSは12/29(土)に、『COUNTDOWN JAPAN 12/13』GALAXY STAGEへの出演も予定している。(小池宏和)
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