すかんち @ 渋谷公会堂

すかんち @ 渋谷公会堂
「あの……感無量やね。17年ぶりの渋谷公会堂なんでね。その間、この渋谷公会堂さんも、違う名前になっていたりとかして(笑)。また今日演奏することができてすごく嬉しいです。最後までゆっくり、じっくり、むっちり、ねっとりと楽しんでくださいね!」。幕開け早々“OK! Baby Joe”“恋のT.K.O.”と名曲連射で熱気あふれる渋谷公会堂が、そんなROLLYの言葉でさらに熱を増していくーー1996年に解散、2006年の再結成以降は断続的に活動を行ってきたすかんち、1982年の結成から昨年でなんと30周年! ということで、2012年10月から行ってきたアニバーサリー・ツアー『すかんち結成30周年記念!オジタスの、謎のロックショウ。大作戦のさなかの大爆撃。薔薇を持ってオペラに行くと、甘い金のチョコレート。スケッキヨ!2012-2013』のファイナルとして開催されたのが、この日のライブ=『すかんち結成30周年記念TOUR Final! アメイジングすかんち2013』。「1996年以来実に17年ぶりとなる渋公ワンマン・ライブ」というだけでなく、事前にもアナウンスされていた通り、2009年の自宅階段での転落事故以降リハビリに励んできた紅一点ベース&ヴォーカル=Shima-changもステージに登場!ということで、開演前から客席の期待度ははちきれんばかりだったが、実際のステージはその遥か上を行くものだった。

グラム・ロックとハード・ロックとスペース・オペラとメルヘン・ポップの接点から生まれたロック異種生命体=すかんち。どこまでもグラマラスかつ奇抜でエキセントリックでありながら、どこを切ってもロックのロマンがあふれ出すバンド=すかんち。ツアー初日の対バン相手:筋肉少女帯・大槻ケンヂは「筋少とすかんちは日本ロック界の盲点」と冗談めかして言っていたが、この日のすかんちの音は盲点どころか極点そのもの。重戦車級の安定感のビートを途方もなく爽快に響かせるドラム:小畑ポンプ。鍵盤のみならずROLLYの熱唱との絶妙のハモリで曲を目映く輝かせるドクター田中。オルガンにアナログシンセにトイ・ピアノまで幅広くこなす鍵盤マジシャンぶりを見せつけた(本物の手品も披露していた)小川文明。Shima-changに代わり硬質ベース・サウンドでボトムを支えた佐藤研二(ex.マルコシアス・バンプ)。そして、今や日本屈指のギター・ヒーロー=ROLLY。聴く者すべてを快楽のレッドゾーンに叩き込む“恋のT.K.O.”や“Mr.タンブリンマン”の超絶ソロ・プレイ! 真紅のジャンプスーツに身を包み、飴のようにギターを操り変幻自在なロックンロール・サウンドを放射する佇まいは、それ自体が至上のマジックだ。

1stアルバム『恋のミラクル大作戦』(1990年)から6th『DOUBLE DOUBLE CHOCOLATE』(1995年)までの楽曲をアンコール含めぎっちり2時間強に凝縮しつつ、クイーンやツェッペリンといったロックのダイナミズムとは異なるルーツ感をはっぴいえんど“かくれんぼ”カバーで覗かせたりもする、充実のセットリスト。「今回ツアーをやってきまして。改めまして、我々すかんちの楽曲が、とてもいい曲だなあと再認識しました」とROLLYがしみじみとオーディエンスに語りかけていたが、そのロックとポップの過積載ぶりは今聴いても驚くばかりだ。「50歳にして若さを取り戻したすかんちの英雄、ドクター田中!」(ROLLY)というコールを受けて「ナントカは世にはばかる? たぶん、最後までやってるの俺やわ! 誰もおらんようになっても1人ですかんちやってるわ!」と意気揚々と“恋人はアンドロイド”をリード・ヴォーカルとして歌い上げたドクター田中が1曲でグロッキーになって医者(役のスタッフ)に担ぎ出される……といった演出も相俟って、会場の空気は刻一刻と密度を増していく。

すかんち @ 渋谷公会堂
そして中盤、「あの忌まわしい事件から3年、彼女は夢と現実の狭間を彷徨いながら、決死のリハビリテーションを繰り返してまいりました。彼女が心の中に掲げたキーワードは『すかんち』。そして今日、彼女はついに、ステージに戻ってきたのです!」というROLLYの声とともに、ステージ背後を飾っている「SCANCH 30th」のオブジェが動き、舞台下から満面の笑顔でせり上がってきたのは、紛れもなくあのShima-chang!(と、医者姿に扮したドクター田中)。天使の羽根のついた車椅子に座っての登場ではあったが、あのフリフリのコスチュームをまとって客席に手を振りまくるその姿が、満場の拍手と大歓声を巻き起こしていく。「えーっと……生きてます! 頑張ってます」「夢みたいです。夢の国に来たみたいです」と感激を口にしながら、“Sugar Sugar Baby”“好き好きダーリン”の2曲でキュート&スウィートな歌声を聴かせるShima-changに、渋公の熱気はさらにエモーショナルな色合いを強めいく。

10分以上に及んだ“かくれんぼ”の紅蓮のサイケデリック・ブルース・バージョンを経て、ステージはいよいよ終盤へ。ROLLYのみならず小川/ドクターがギターを構えてブルージーで濃密なトリプル・ギターを鳴らした“スローソンの小屋”からブルー・オイスター・カルト“Godzilla”へ雪崩れ込んだり、“必殺のハードラブ”の途中、リコーダーを奏でるドクターにROLLYがイアン・アンダーソン(ジェスロ・タル)の片足上げポーズをねだったり……といった場面のひとつひとつから、ステージ上の全員が今この瞬間を全身で楽しみきっていることが伝わってくる。「何も言い残すことはないです。ひとこと……ロックンロール!」というROLLYの言葉とともに突入した本編ラストのナンバーは“恋の1,000,000$マン”。極彩色のロック・アンサンブルがひときわ輝度と熱量を増して……終了。ギターを掲げてガッツポーズしながら退場するROLLYとメンバーに、惜しみない拍手が送られた。

すかんち @ 渋谷公会堂
アンコールを求める熱烈な声に応えて、再びオン・ステージしたROLLY、小畑、田中、小川、佐藤の5人。「DVDの収録中なのに、ハプニングがあって……ベソをかいてしまった……」と話すROLLYに続けて、「5月の末にDVDが出ます!」と小畑。「ステージ上、全部足すと250歳とか(笑)。お客さんも年を取ったと思いますけど、これからの高齢化社会、全然大丈夫。ローリング・ストーンズを見ろ!(笑)。あと20年、30年、応援してくれるかい!」というROLLYの言葉に、熱い歓声が湧き起こる。「30年以上ロックンロールをやってきたけど……最高! でも、まだまだロックンロールは終わらないぜ!」とROLLYは言っていた。そう、この日のライブで最も胸に強く飛び込んできたのは、そのサウンドやスタイルの奇抜さではなく、唯一無二のロックンロールとしてのあまりに真っ直ぐな冒険心だった。それが何より、この日のアクトを感動的なものにしていた。

すかんち @ 渋谷公会堂
ROLLYのスライド・ギターが冴え渡る“MANGO JUICE”の後、「もう1回、Shima-changを呼び込もう!」というコールとともに再びShima-changが舞台に現れ、会場は高らかな喝采に包まれる。「よかった! よかったよ、本当に! ロックをやってきてよかったし、音楽は最高だ! ロックだけじゃないよ、音楽はどんな音楽でも素晴らしい。音楽は人と人をつなげるし、心をひとつにする……最高だね」。一切の虚飾のないROLLYの言葉が、感激とともに胸に広がる。「じゃあ、我々のヒット・ソングみたいなのを……まだこれからリバイバル・ヒットとかあり得るよ! もし、我々が武道館公演をしたら、来るかね? その時は、自慢していいはずだ。『渋谷公会堂にも行った』ってな! 他のみなさんは新参者だ。仲良くしてやってくれ。教えてやってくれ、どアホのロックンロールの真髄をな!」というROLLYの最後の煽りが、満場のオーディエンスの魂に火をつけたところで、正真正銘のフィナーレとして炸裂させたのはもちろん“恋のマジックポーション”! すべての音が止んだ後、割れんばかりの歓声を受けて、感涙にむせぶShima-chang。小畑と抱き合いながら、ROLLYもこみ上げるものを抑えきれないようだった。会場限定で販売されていた30周年記念セルフ・カバー・アルバム『30th』だけでなく、すかんちの「これから」をもっと聴きたい! もっと観たい!と思ったし、それは誰よりもすかんち自身がそう感じたに違いない。最高の一夜だった。(高橋智樹)


[SET LIST]
01.OK! Baby Joe
02.恋のT.K.O.
03.Mr.タンブリンマン
04.ウルトラロケットマン
05.恋するマリールー
06.恋人はアンドロイド
07.Sugar Sugar Baby
08.好き好きダーリン
09.かくれんぼ(はっぴいえんど)
10.スローソンの小屋~Godzilla(ブルー・オイスター・カルト)
11.必殺のハードラブ
12.恋は最後のフェアリーテール
13.ロビタ
14.恋の1,000,000$マン

Encore
15.MANGO JUICE
16.恋のマジックポーション
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