ゆず @ 横浜アリーナ

YUZU ARENA TOUR 2012/13 YUZU YOU~みんなと、どこまでも~

ゆず @ 横浜アリーナ
「横浜、また帰ってきました。ただいま! 今日は横浜6デイズ最終日です! みんな元気か!」という北川悠仁のコールに、割れんばかりの歓声で応える横浜アリーナ満場のオーディエンス!(北川いわく、この日は12,721人の観客が詰めかけたそうだ)。昨年4月のゆず結成15周年記念ベスト・アルバム『YUZU YOU[2006-2011]』リリース後、大阪&東京のドーム公演、横浜/岐阜/山口/奈良のホール・ツアーと続いてきた一連のライブ活動の集大成とも言える、昨年12月からの全国アリーナ・ツアー=『YUZU ARENA TOUR 2012/13 YUZU YOU~みんなと、どこまでも~』。全24公演で30万人規模、2月8日・10日・11日・14日・16日・17日と6日間にわたって行われてきた横浜アリーナ公演に限ってもトータル8万人!という動員だけでも十分に驚かされるが、アンコール含めて3時間半に及んだ横浜最終日のこの日のステージは、その規模感すらあっさり凌駕するほどのエネルギーとサービス精神でもって、集まったすべての人を歓喜と高揚感ででっかく包み込んでいくような、渾身のアクトだった。

ゆず @ 横浜アリーナ
3月2日:サンドーム福井公演(ツアー中に北川がインフルエンザにかかったため、1/26に予定されていた同会場の公演が振替になった)が控えているのでセットリストや演出の詳細は割愛し、ここでは一部曲目に触れるに留めさせていただくが、“陽はまた昇る”“栄光の架橋”といった『YUZU YOU』収録曲のみならず、“少年”“いつか”など初期曲から1月にリリースされたばかりの“REASON”、さらに配信限定シングル曲“イロトリドリ”まで網羅した、まさに結成以降16年間の結晶のような内容だった。斎藤有太(Key)をバンマスとする「YUZU YOUバンド」とともに横浜アリーナ丸ごと抱き締めるように広がった“1~ONE~”の歌とアンサンブルのスケール感。オーディエンスの年代別にコール&レスポンスをしながら広大な会場をひとつにしてみせた“またあえる日まで”。フォーク・デュオとしてスタートした2人の原点に触れるような2人だけの弾き語りコーナー。“虹”をはじめ『WONDERFUL WORLD』『FURUSATO』の世界を凝縮して壮麗な風景を描き出してみせたメドレーのコーナー……北川悠仁&岩沢厚治が常にひたむきに音楽と向き合い、自らのメロディとハーモニーの訴求力を磨き上げ続けてきたその道程の険しさと、だからこそ到達したゆずの「今」の音楽の強靭さと優しさが、どの瞬間からも伝わってくる。

ゆず @ 横浜アリーナ
そして。この日のライブでひときわ際立っていたのは、北川の全身全霊傾けた弾けっぷりだ。アコギ弾き語りのスタイルに徹して一貫してストイックに至上のメロディを歌い上げていた岩沢の一方で、北川は時に岩沢と並んでアコギを奏でていたかと思うと、ハンドマイクで花道やステージの袖へと駆け出して今この瞬間の喜びを歌だけでなく全身で表現していたり、コスプレありありの衣装チェンジや演劇チックな演出も含めてヴィジュアル的にも楽しませたり、“イロトリドリ”では「YUZU YOUダンサーズ」やマスコット「ゆずマン」「ももちゃん」と一緒に横浜アリーナ一面を軽やかな「イロトリドリダンス」(開演前には「イロトリドリダンスを覚えてライブで盛り上がろう!」という振り付け映像がヴィジョンに流れていた)で埋め尽くしてみせたり……北川がフォワード的な立ち位置でぐいぐい攻めていく局面は、それこそ昨年のドーム公演の大阪・東京各2日目:エンターテインメント色全開の『みんな、どうむありがとう』でも顕著だったのだが、「フロントマン」を超えた「エンターテイナー」としてこの日の彼が放っていた圧巻の輝きは、彼が表現者として新しいステージに進んだことを何よりもリアルに物語っている。

ゆず @ 横浜アリーナ
「このツアー、本当にいろんなことがありましてね。年越しライブがあったり、私事ですけど誕生日ライブがあったり。そして、これも私事ですけど……インフルエンザにかかりました! ご迷惑・ご心配をおかけしましたけど、無事に復活しました。元気です!」とツアーを振り返りつつ、「伊勢佐木町の路上で歌ってる時に、まさか横浜アリーナで……成人式で岩沢くんが金八先生みたいな衣装で来たところでね(笑)、まさか6デイズやることになるとは思わなかったですね!」と序盤のMCでは笑いを誘いつつ語っていた北川。だが、「まだデビューする前、路上で、ちょうど今ぐらいの時期、寒い中がむしゃらに歌っていました」と後半のMCでは一転して、自らの想いを静かに、切々と伝えていた。「……その時の自分たちには、想像もできなかったと思います。16年にもわたり、こんなにたくさんの人が、僕たちの音楽を愛してくれて……本当に夢のようです! 本当にありがとう!」。惜しみない拍手喝采が、ステージへと降り注ぐ。「みんなのその笑顔が、その涙が、声援が、拍手が、そして一緒に歌ってくれる歌声が、僕たちを何度も支えてくれました。僕たちは20年、30年、40年、50年、100年は……ちょっと無理かもしれませんが、命が続く限り、待っていてくれる人がいる限り、歌を歌い続けたいと思います!」という決意表明の言葉が、ひときわ力強く、高らかに響き渡っていた。

アンコールの演奏を終え、エンディングのSEが鳴り始めてダンサーチームとバンド・メンバーがステージを降り、「みんなの大事な日曜日を、僕たちに使ってくれてありがとう! 明日からも頑張ろうな!」(岩沢)、「僕たちの大好きな街、横浜に来てくれて、本当にありがとう!」という北川の言葉を残して、2人が大声援を受けながら退場……という場面で、「音楽を止めてください!」と北川。「大事なお知らせが……5月に、アルバムが出ます! 『LAND』というアルバムです」という言葉に、会場のテンションは再びMAXに! さらに、「そしてもうひとつ!」と、6月から9月まで全20公演にわたる新たなアリーナ・ツアー『YUZU ARENA TOUR 2013 GO LAND』の日程が発表されると、その歓声はさらに強く熱を帯びていった――大きな節目を超え、さらに進化を続けているゆず。彼らの歌が僕らには必要だ、と改めて強く思わせてくれる、感激の一夜だった。(高橋智樹)
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