ロック頂上決戦(The Mirraz、SAKANAMON、The SALOVERS、クリープハイプ) @ SHIBUYA-AX

ロック頂上決戦(The Mirraz、SAKANAMON、The SALOVERS、クリープハイプ) @ SHIBUYA-AX - ダイノジ all pics by Yoko Ohataダイノジ all pics by Yoko Ohata
EMIミュージック・ジャパンとビクターエンタテインメントが昨年5月に共同で立ち上げた、ロック情報サイト「ROCKFun」。これまでも両社の新しいロック情報を発信してきたが、「ここまで来たら2社で直接対決を!」ということで、当サイト主催の対バンイベント「ロック頂上決戦 ver.1.0 EMI vs VICTORの巻」がSHIBUYA-AXで行われた。出演するのは、クリープハイプ、SAKANAMON、The SALOVERS、The Mirrazの4組(五十音順)。開演時間の17時ジャスト、オープニング映像に続いて両社所属の若手アーティストのPVが順番に流れると、凄まじい歓声が沸き起こる。この日の出演アーティストは勿論、アルカラやモーモールルギャバンらの映像にも、悲鳴に近い歓声とシンガロングを送るオーディエンス。その光景を見ているだけで、「ロックそのものを愛する人たちが今日ここに集っているんだな」ということがわかって嬉しくなる。そして、司会を務めるダイノジのオープニング・トーク&大地のエアギタ―のパフォーマンスでフロアを温めたところで、いよいよトップバッターの登場だ!

■The Mirraz
ロック頂上決戦(The Mirraz、SAKANAMON、The SALOVERS、クリープハイプ) @ SHIBUYA-AX
事前に出演順が明かされていなかった当イベント。ダイノジの呼び込みに続いてThe Mirrazの登場を告げる映像が流れると、割れんばかりの歓声が包み込む。そして『ドラゴンボール』の主題歌“CHA-LA HEAD-CHA-LA”のSEに乗って、ミイラズの4人が登場。そのまま“スーパーフレア”に突入すると、チカチカと点滅するライトとともに放たれるのはマシンガンばりの殺傷力を持った高速リフ! 一瞬たりとも止まることを許さないとでも言うような、切迫感あふれるサウンドを浴びて、フロアはたちまち一心不乱でダンスに興じるオーディエンスで埋め尽くされていく。そんな光景を目の前に、曲終わりで畠山承平(Vo/G)が放った言葉が「最初に頂上が出ちゃうけど、ゴメンね」。クールで、捻くれていて、だけど目の前にいるリスナーを喜ばせずにはいられない、ミイラズらしい最高のスタートダッシュだ。

2月13日にメジャー1stアルバム『選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ』をリリースしたばかりのミイラズ。今夜の聴きどころは、やはりその最新アルバムの収録曲だった。初っ端からフロアを熱く燃え上がらせた1曲目しかり、フロア一丸の「♪気っ持ち悪りぃ!」のシンガロングを引き出した“気持ち悪いりぃ”しかり、光も闇も一緒くたにしてまっしぐらに駆け抜けていくような“S.T.A.Y.”しかり。どれもミイラズならではの鬱屈やロマンをたっぷりと詰め込んだ楽曲でありながら、かつてなく切迫したエネルギーを宿していることに驚かされる。これまでヤケクソ気味にブチ撒けられてきた音と言葉が、ひとつの共通意思のもとに結束し、大きなうねりとなって聴き手を呑み込まんとするような印象だ。その勢いのままに終盤は“僕はスーパーマン”“Check it out! Check it out! Check it out! Check it out!”などアッパー・チューンを畳み掛け、フロアを激しく揺らした“僕らは”でフィニッシュ。4月からスタートするアルバムのリリース・ツアーでは、さらに分厚く進化した音と言葉でわれらを熱狂させてくれるだろう。それを強く予感させるアクトだった。

■SAKANAMON
ロック頂上決戦(The Mirraz、SAKANAMON、The SALOVERS、クリープハイプ) @ SHIBUYA-AX
SUPER BUTTER DOGの“コミュニケーション・ブレイクダンス”のSEとハンドクラップに迎えられて、2番目に現れたのはSAKANAMON。1曲目の“カタハマリズム”から、キラキラと輝く3ピースのアンサンブルと藤森元生(Vo/G)の透明で丸みを帯びた歌声が、爽快に駆け抜けていく。続く“SAKANAMON THE WORLD”では一転して、繊細な電子音に乗せてシュールな脳内世界を開け広げていく3人。さらに“空想イマイマシー”では多彩なリズムやフレーズを盛り込んだ遊び心あふれるサウンドが躍動し――と、曲ごとにクルクルと表情を変える音世界と、それらすべてをビビットに描き出すガッチリはまったアンサンブルが、フロアの空気をじわじわと高揚させていった。

MCでは、自由すぎる言動でしばしばオーディエンスの「?」を招いていた藤森。それを「僕らみたいなズッコケ3人組でも、ステージに立てば自分たちが一番かっこいいと思ってやってます!」と、生真面目なトークでフォローする森野光晴(B)。さらに口を大きく開けて熱唱しながら笑顔でビートを叩き出す木村浩大(Dr)含め、3人の素朴で親しみあふれる佇まいもSAKANAMONの魅力のひとつだ。「架空のヒーローのテーマソングです!」(藤森)と披露された新曲“シグナルマン”も、そんな彼らのファニーな魅力が詰まった1曲。「君が青なら僕が進むよ、君が赤なら僕は止まるよ」「間違った世界に倒されるなよ」という力強いメッセージが、ポップで清涼感あるサウンドに乗って胸に迫ってくる。ラストは“妄想DRIVER”をダイナミックにプレイ。おもむろにステージ袖から持ち出した大きなヌイグルミを抱えて熱唱する藤森は、最後までステージを暴れまわりながら己の中に眠る衝動を自由奔放に解き放っていた。

■The SALOVERS
ロック頂上決戦(The Mirraz、SAKANAMON、The SALOVERS、クリープハイプ) @ SHIBUYA-AX
「最年少で頂上に来ちゃいました。The SALOVERSです、よろしく!」というMCから、いきなり“サリンジャー”で沸点へ! 一音一音が鋭い刃物のようなソリッドなサウンドと、スタンドマイクにかぶりつくようにして歌う古館佑太郎(Vo/G)のアグレッシヴなパフォーマンスが、オーディエンスの心を熱く焦がしていく。続く“仏教ソング”では、「まだまだまだまだまだ!」というコーラスを乗せて果敢に突き進む骨太なロックンロール。藤井清也(G)が弾き鳴らす柔らかなアルペジオ、小林亮平(B)が弾き出すコシのあるベースライン、そして頭にタオルを巻いた藤川雄太(Dr)がクールな手さばきで叩き出す、多彩でしなやかなビート。それらが古館のちょっとしゃがれた歌声と相まって、ロックンロールの中心を鮮やかに射抜いていくさまには、何度観ても胸を熱くさせられる。

中盤に披露された新曲“床には君のカーディガン”は、抜けのいいアンサンブルで聴き手を黄金の光の中へと連れ去るポップな楽曲。そして続いて披露された“SAD GIRL”が、個人的にツボだった。タイトで性急なビートとともに溢れ出すエモーショナルなオルタナ・サウンドは、このバンドの核となるヒリヒリとした世界観と、そこから匂い立つ色気や危うさをストレートに表現していると思う。“ディタラトゥエンティ”で大気圏の彼方へ突き抜けていくような壮大なサウンドスケープを広げた後は、鉄板のキラー・チューン“オールド台湾”へ。まさしくこの曲に歌われる「理想の国」を「今ここ」に出現させんとばかりに、じっとりと熱いサウンドを掻き鳴らす4人、そして上下左右に飛び跳ねながら「タイワーン!」の大合唱を響かせたオーディエンスの一体感は凄まじいものだった。ラストは藤川の「ワンツースリーフォー!」の掛け声から“愛しておくれ”をゆったりと披露。ふつふつと湧き上がる怒りや倦怠、尽きぬロマンすらも怒涛のアンサンブルに変えて解き放つ、The SALOVERSの凄みをダイレクトに感じられた、圧巻のアクトだった。

■クリープハイプ
ロック頂上決戦(The Mirraz、SAKANAMON、The SALOVERS、クリープハイプ) @ SHIBUYA-AX
そして19時55分。「もう1バンドしか残ってないから名前を出してもいいですね。Next Artist、クリープハイプ!」というダイノジの呼び込みで堂々ヘッドライナーに登場したのは、クリープハイプ。「こんばんは、今話題のバンドです」という尾崎世界観(Vo/G)の挨拶でフロアを沸かせると、“イノチミジカシコイセヨオトメ”“手と手”“愛の標識”とアッパー・チューンを矢継ぎ早に叩きつけていく。その後のMCでは、クリープハイプのライヴに感動したリスナーからファンレターをもらい、「ライヴはすごくよかったけど、前半部分の尾崎さんの硬さが取れたらもっといいライヴになりますね」と書かれていたというエピソードを明かしてフロアを笑わせ、鉄壁のアンセム“オレンジ”へ。歌い出しの一声で場内の空気を煌びやかに変えてしまうこの曲にしろ、尾崎の人柄が滲み出る皮肉とユーモアたっぷりのMCにしろ、ここに来てその吸心力を格段に増しているように思う。続く“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”のエモーショナルなメロディも、フロアに突き上がる拳を力強く牽引しながら堂々と鳴っていた。

性急なアンサンブルが駆け抜ける新曲“週刊誌”を披露した後は、ぶっとい火柱のようなグルーヴが轟々と燃え上がる“火まつり”へ。さらにスロー・チューン“風にふかれて”を経て、「2年半ほど前に渋谷のeggmanにオープニングアクトで出たときに、すごい悔しいことがあって。リハのときにPAの人に『あと何分ぐらいリハできますか?』って聞いたら、『あと5分ぐらいだけど、オープニングアクトなんだから立場をわきまえようね』って言われて、それがすげえ悔しかったんだよね。で、それから2年半経ちましたが、そこの目の前にあるこんなにデカい会場で、今日は大トリです」と語る尾崎。さらに「大抵のことは、2年半あったらひっくり返せるから。それを証明してますよ、このバンドは!」と続け、フロアの温かい拍手と歓声を誘う。その後に放たれた“ウワノソラ”、お馴染み「セックスしよう!」の絶叫に場内が包まれた本編ラスト“HE IS MINE”の一体感が格別だったことは、言うまでもないだろう。結成から10年以上の時を経て、昨年4月にメジャー・デビューを果たしたクリープハイプ。さまざまな苦難を経験してきた彼ら、というより尾崎世界観だからこそ、身をもって放つことができる渾身のメッセージ。彼らの歌は一貫して自己嫌悪やネガティヴィティを原動力にしているけれど、その裏には明日に希望を託そうとする純真無垢なポジティヴィティが宿っていることを、あまりにも鮮烈に焼きつける感動的なクライマックスだった。

アンコールは、3月6日にリリースを控えた“社会の窓”をプレイ。つい一ヶ月ほど前にとあるイベントで披露されたときには誰も聴いたことのなかった楽曲が、You TubeなどでのPV公開を経て、すっかり「みんなの歌」になっていることに驚かされる。4バンドの想いと、彼らをこよなく愛するオーディエンスの想いと、これからも最高のロックを世に届けていこうとする2つのレコード会社の想いが結実し、凄まじいエネルギーとなってSHIBUYA-AXを燃え上がらせた至福の4時間。ロックンロールに魅せられた様々な人々の想いを乗せて、このイベントが大きく発展していくことを、切に願う。(齋藤美穂)

セットリスト
The Mirraz
1. スーパーフレア
2. CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
3. 気持ち悪りぃ
4. ふぁっきゅー
5. シスター
6. S.T.A.Y.
7. 僕はスーパーマン
8. Check it out! Check it out! Check it out! Check it out!
9. ラストナンバー
10. 僕らは

SAKANAMON
1. カタハマリズム
2. SAKANAMON THE WORLD
3. 空想イマイマシー
4. 脳内マネジメント事情
5. マジックアワー
6. 僕の登下校
7. ミュージックプランクトン
8. シグナルマン
9. 妄想DRIVER

The SALOVERS
1. サリンジャー
2. 仏教ソング
3. チンギスハンとヘップバーン
4. 床には君のカーディガン
5. SAD GIRL
6. ディタラトゥエンティ
7. オールド台湾
8. 愛しておくれ

クリープハイプ
1. イノチミジカシコイセヨオトメ
2. 手と手
3. 愛の標識
4. オレンジ
5. お休み泣き声、さよなら歌姫
6. 週刊誌
7. 火まつり
8. 風にふかれて
9. ウワノソラ
10. HE IS MINE
アンコール 1
11. 社会の窓
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