J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト

J-WAVEにて2012年7月から、月曜〜木曜の深夜にオンエアされているプログラム『THE KINGS PLACE』を飛び出し、ライヴ・イヴェントとして催される企画の第2回。昨年10月に恵比寿リキッドルームでVol.1が行われ、今回は新木場スタジオコーストへと会場を移した。出演者は、パフォーマンスの順にandrop(番組では水曜日担当)、People In The Box(火曜日担当)、クリープハイプ(月曜日担当)、Nothing’s Carved In Stone(木曜日担当)という4組が揃い踏みである。ド平日の18:30開演というスケジュールであるにもかかわらず、会場に足を踏み入れると既にフロアはぎっしりと来場者で埋め尽くされている。

J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
トップを飾るのは、目下東名阪ツアー『one and zero』の最中であり、3/30に東京国際フォーラム公演(チケットは既にソールドアウト)を控えたandropだ。イントロのビートとオーディエンスによるハンド・クラップがシンクロする中にメンバーが姿を見せ、のっけから“MirrorDance”へと叩き込む華やかな幕開けである。内澤崇仁(Vo./G.)の少年性を宿した歌声が1コーラス目を歌い終えると、挨拶代わりとばかりに「(THE) KINGS PLACE!!」と力強い一言も添えられる。前田恭介(Ba)と伊藤彬彦(Dr.)によるリズム・セクションが逃れようのないダンス・グルーヴを牽引しつつ、エフェクター類を駆使して次々に表情の移り変わるサウンドや“Bell”での美しいアルペジオによって佐藤拓也のギター・プレイが豊かな感情表現を描き出していった。それぞれの持ち時間は30分ほどと短いが、瞬く間に「なぜ歌い、踊るのか」という理由にまで踏み込み、オーディエンスと分かち合ってみせるandropである。最後にピアノに向かって腰掛けた内澤は「普段、ラジオとかだとラジオネームぐらいしか分からないけど、今日は、出ているバンドみんなそうだと思うけど、顔を見ることが出来て、こういう人たちが俺たちのラジオを聴いて、音楽を聴いてくれているんだなって分かって、本当に嬉しいです。ありがとう」と感謝の言葉を投げ掛け、まさに《あなたに会えた日/今日はもう忘れない》というフレーズが眩い照明の中に浮かび上がるような、“End roll”が披露されたのだった。

J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
2組目には、こちらも現在、全国で21公演のツアー『Ave Materia』を展開中のPeople In The Boxが登場。サポート・ギタリストに照井順政を加えた編成である。美麗なオープニングSEを全力で掻き消すような4人の凄まじい音出し一発にのけぞらされると、膨大なアイデア量に波多野のスポークンワード風ヴォーカルが弾けながら疾走する“旧市街”から演奏がスタートする。最新ツアーの緊迫感と勢い、そして高められた技巧がそのまま持ち込まれるようなステージングだ。“球体”や“ダンス、ダンス、ダンス”といった『Ave Materia』からの曲群では、ギター演奏を照井に預けてハンド・マイクの歌に専念する波多野。身を揺らしながらステージ上を練り歩き、アンプに乗り上がってまで自由度の高いパフォーマンスを見せてくれる。「呼んだ!? 呼んだよね!?」と切り出される山口大吾の超ハイテンション&ユーモラスなMCでは、オーディエンスと共に『Ave Materia』コールを巻き起こしたりもしつつ、ツイン・ギター編成による怒濤のアンサンブルで“市民”以降の後半戦へと傾れ込んで行った。変拍子、ビート・チェンジが繰り返されながらも不思議と人懐っこさを見失わないステージングは、食い入るように聴き入って一曲毎に大喝采、の繰り返しである。3/29の大阪、3/30の名古屋、4/12の東京と大詰めの日程を残した最新ツアー、ぜひ観てほしい。

J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
さて、3組目の出演者となったのがクリープハイプ。ロックンロールの疾走感の中に、尾崎世界観のやさぐれたハイトーン・ヴォイスが投げ出され、この3月にリリースされた最新音源“社会の窓”でフロアを目一杯波打たせる。続く“HE IS MINE”では中毒性の高いコーラスで合唱を誘いつつ、《セックスしよう》の必殺フレーズを預けてしまうのだった。もうなんというか、時代に選ばれたというよりも、時代に噛み付いてぶらさがったロックンロールが全開で痛快極まりない。「最初からヒット曲を2曲も使っちゃったよ! ということはさ、後のことなんか何も考えてないってことなんだよね! そのつもりで向かってきてくれませんか!?」と尾崎。小川 幸慈(G.)が一人で映画を観に行き、同じように一人で映画を観に来た女子と隣り合わせでカップルみたいな絵面になった、なんていう近況報告も挟み込まれたが、もちろんこの後のパフォーマンスがダレてしまったわけではない。“週刊誌”は《下北の大学生》を《新木場の大学生》に差し替えるサーヴィスに歓声が上がり、長谷川カオナシ(Ba.)の色気たっぷりなヴォーカルが絡められた“グレーマンのせいにする”、そして歌詞の中に広がる光景そのままにオレンジ色の照明がバンドを照らし出し、情感のギター・フレーズが宙空に像を結ぶようだった“オレンジ”と、数多くのハイライトが詰め込まれたステージであった。

J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
J-WAVE 25th Anniversary「THE KINGS PLACE」LIVE Vol.2(androp/People In The Box/クリープハイプ/Nothing’s Carved In Stone) @ 新木場スタジオコースト
トリを務めるのはNothing’s Carved In Stoneである。硬質でド迫力の爆音アンサンブルが聴く者の肌を震わせ、「イェイェイェーー!!!」と村松拓(Vo./G.)の昂ったシャウト混じりの“Spirit Inspiration”が届けられるのだが、ちょっとびっくりするぐらい前のめりなステージになっていった。生形真一のギラギラとしたギター・プレイにしても、日向秀和の強烈なベースにしても、大喜多崇規のソリッドなドラムスにしても、言わずもがな確かなキャリアの上で鳴り響く信頼感溢れるサウンドなのだが、それを追い越す勢いのパフォーマンスなのである。ニュー・シングル曲“Out of Control”はその嵐のようなサウンドが高らかなハーモニーを巻き、互いの音に乗って、またその上に乗って、と天井知らずに加熱してゆく。村松が「俺自身が落ち込んだりしたときに力になれるような曲を、愛を込めて贈ります」と語って披露された“Red Light”は、日本語詞をその空間に打ち付けてゆくようなウブのギター・リフが凄い。「レコーディング中でして、頭の中グチャグチャの状態で来てるんですけど、今日はみんなに全部洗い流して貰おうと思って(笑)。俺たちは、自分たちの汗で全部洗い流して、全部摑み取っていくタイプのバンドです!」という言葉を耳にして、今回のパフォーマンスのヴォルテージに合点がいった気がしたが、どこか危うく、しかしその生の感情の形しだいで途方も無くスリリングなものになる、という言葉本来の意味でのライヴだ。「アンコール、代表して1曲だけやっていいですか」と辿り着いた“Diachronic”の美しいクライマックスまで、大熱演のNCISであった。

放送局の主催とは言え、出演者全員から「自分たちの番組のイヴェント」という主体的・能動的な気持ちがひしひしと感じられていた。番組内でもバンド同士が交流を繰り広げ、アーティストとリスナー/オーディエンス、そしてメディアががっちりと手を取り合い、タフでしなやかなシーンを動かしてゆく、そういう頼もしさが受け止められるイヴェントであった。終演後、会場を出たところで、「やっぱりライヴはいいね〜!!」と弾むようなトーンで告げていたオーディエンスの声が耳に残る。NCISの村松は「またこういう機会があると思います」と語ってくれていたので、続編の開催に乞うご期待。(小池宏和)

■androp
1 MirrorDance
2 Boohoo
3 Bell
4 Colorful
5 Message
6 End roll

■People In The Box
1 旧市街
2 球体
3 ダンス、ダンス、ダンス
4 市民
5 完璧な庭
6 ニムロッド

■クリープハイプ
1 社会の窓
2 HE IS MINE
3 あの嫌いのうた
4 週刊誌
5 グレーマンのせいにする
6 オレンジ
7 おやすみ泣き声、さよなら歌姫

■Nothing's Carved In Stone
1 Spirit Inspiration
2 November 15th
3 Out of Control
4 Red Light
5 Around the Clock
6 Isolation
EN Diachronic
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする