そしてアジカン登場! まだツアー中なので詳細は控えるが、わくわくと期待を膨らませる彼ららしい物語性をもったオープニングだ。一気に狂騒に叩き込むのではなく、今、バンドが手に入れた「確かさ」を噛み締めるような、しっかりとした足取りのはじまりがとてもいい。そしてその「確かさ」は、演奏力の飛躍によってもたらされたものだということが、ライヴを聴き進むうちにとてもよくわかってくる。
《僕らはまだ何もしていない 進め》というフレーズが印象的な“アフターダーク”で力強く舵を取って、次第にめくるめく音のループに巻き込みながら、“羅針盤”で再び針路を指し示す。シンプルな骨格の新曲も、過去の名曲も、勢いというよりむしろ遠心力の中心のような底力でぐいぐいと引っ張ってゆくのだ。なかでもやはりこの日の目玉は、2月6日に発売されるニュー・シングル『転がる岩、君に朝が降る』が生で聴けたことだろう。バンドの現在地を写し取ったような、開放感溢れる力強い楽曲を客席も祝福しているようだった。そして、「今日は、僕の暴君ぶりを見せようかと思って」というゴッチのMCで、アンコールが急遽1曲増えるというサービスも!
来年への期待が否が応でも高まってくる、バンドの進化を目の当たりに見せつけられた素晴らしいライヴだった。(井上貴子)