「渋谷クラブクアトロ25周年記念ライブにお集まりいただきまして、みなさん、心からありがとうございます!」というハイテンションな絶叫とともにフロア後方で照らし出されたのは、ORANGE RANGEとの対バンということで全身オレンジの衣装(アフロのウィッグ&全身タイツ)に身を包んだグッドモーニングアメリカ・たなしん(B・Cho)! 「一緒に歌ってください!」とORANGE RANGEの“花”を高らかに歌い上げステージまでプロレス入場するたなしんが巻き起こした狂騒感を、そのまま1曲目“キャッチアンドリリース”へとジャック・インしてみせる――渋谷クラブクアトロ開店25周年を記念して、6月28日から多彩な対バン・イベントが繰り広げられているアニバーサリー企画『QUATTRO QUARTER』の一環として、この日は「What I Got」と題してORANGE RANGEとグッドモーニングアメリカの異色対バンが実現! 以下、それぞれのライブについてレポートしていくが、両バンドとも曲を知っている方ならセットリストを見ただけで体温が上がること必至の絶頂合戦だった。
■グッドモーニングアメリカ
01.キャッチアンドリリース
02.空ばかり見ていた
03.マリオネット演者ノ詩
04.バンバンガンガン
05.言葉にならない
06.輝く方へ
07.ミサイルをぶちかましてぇな
08.未来へのスパイラル
09.世界終わらせないで
10.ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ
11.餞の詩
12.そして今宵は語り合おう
今年5月にリリースした1stフルアルバムにしてメジャー初アルバム『未来へのスパイラル』からの“キャッチアンドリリース”“バンバンガンガン”などに加え、インディー時代のミニアルバム3枚も含めてグッドモーニングアメリカ史を凝縮したような熾烈なアクト。パワフルな4つ打ちビートから純度100%のロックンロールをあふれさせるたなしん&ペギ(Dr・Cho)の爆裂リズム隊も、エモーションの高ぶりも揺らぎもそのままギター・サウンドに置き換えたような渡邊幸一(G・Cho)のプレイも、フロアを瞬間沸騰させるだけの熱量に満ちたものだった。が、何より金廣真悟(Vo・G)の、メロディと言葉からエネルギーがほとばしりまくっている圧巻のヴォーカリゼーション! 歌と音楽に選ばれたとしか思えないというか、認知度抜きに歌のスケール感だけで会場を選べるなら即刻武道館レベルというか、触れるだけで心震えるだけのヴァイブが、彼の歌には宿ってしまっている。
そんな熱演でフロアをがっつり揺らす合間に、「本日のコール&レスポンスは『ろ』縛りでございます!」というたなしんの呼びかけから「女子はいつだってこれが大事! いろじ?」「ろ!」とか「ももいろクローバーZ! 略して、ももく?」「ろ!」とか「25周年を迎えたライブハウスの名前は渋谷クラブクアト?」「ロ!」といったコール&レスポンスでさらに熱気を煽りつつ、会場全員の「3、2、1……ファイヤー!」コールから“バンバンガンガン”の爆走ロックンロールへ流れ込んでみせたり、クラウドサーフ続出なほどの盛況の会場で「誰かの脱げた靴を拾った観客がたなしんへパス→たなしんが持ち主へパス」という名プレイが生まれたり……と名場面だらけの1時間だった。
「東京で僕らずっとバンドやってたんですけど、クアトロは本当に夢のステージだと僕は一方的に思ってます。本当にこのステージに立てて嬉しいです!」と語るのは渡邊。「この2マンの話が来た時に、正直びっくりしました。僕らがバンドをやり始めた頃にテレビで観てた人たちなんで。共演が決まってからいろいろ調べてたら、実は僕らと同い年(金廣・渡邊・たなしんとORANGE RANGEのNAOTO・HIROKI・YOHが83年生まれ、YAMATOは84年早生まれで同学年)っていうことが判明して……」と、この日の対バンへの想いを語っていく。活動休止やメンバーチェンジもあり、上手くいかない時期のほうが長くて、何度も心が折れそうになったこと。でも、ライブハウスに足を運んでくれるみんながいるから前に進めたこと……「僕らが感じている一瞬も、今ここにみんながいる一瞬も、かけがえのないものだと思います。今日のイベントが、みんなにとって大切な一瞬になれたら、本当に嬉しいです!」という言葉とともに切実に胸に響いた“餞の詩”。最後、“そして今夜は語り合おう”の凛とした歌とアンサンブルが壮大に響き渡り――すべての音が止んだ後、深々と一礼する4人に、会場全体から惜しみない拍手と歓声が送られていた。
■ORANGE RANGE
01.Show Time
02.ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC
03.今夜はtonight
04.Special Summer Sale
05.お願い!セニョリータ
06.祭男爵
07.おしゃれ番長 feat.ソイソース
08.DANCE2 feat.ソイソース
09.花
10.チェスト
11.オボロナアゲハ
12.キリキリマイ
むせ返るほどの熱気で会場を満たしたグッドモーニングアメリカだったが、後攻のORANGE RANGEがまたすごい。冒頭のロックンロール・ナンバー“Show Time”をはじめ、軽快なスカ民謡“Special Summer Sale”、ハイブリッド&ダイナミックな“オボロナアゲハ”、と先週24日にリリースされたばかりの最新アルバム『spark』のナンバーを随所に盛り込んで「ORANGE RANGE最新型」をアピールしつつ、“ZUNG ZUNG FUNKY MUSIC”ででっかいハンドウェーブを生み出し、“祭男爵”の祭囃子ロックンロール・ビートでクアトロを灼熱の祭り空間へ叩き込み、さらに鉄壁ダンス・ナンバー“おしゃれ番長”“DANCE2”連射!まで盛り込んで、満足度200%を本気で目指しにいくような熱血アクト。「クアトロ、おめでとうございます! 僕たち沖縄出身なんですけど、近年ここでやることが多いじゃないですか。本当に僕たちの東京でのホームみたいな感じでございます!」というHIROKI(Vo)の言葉が、熱狂と多幸感に満ちたフロアをさらに熱くしていく。NAOTO(G)の痺れるようなギター・サウンドのエッジ感も、YOH(B)のバキバキのベース・プレイも、クアトロごとロックとポップの異次元へワープさせるくらいの爆発力に満ちて響く。
グッドモーニングアメリカ、面白いねえ! 『あのたなしんってやつは何なんだ?』と(笑)。いろんなバンドさんに『今度グッドモーニングアメリカとやるんですけど、たなしんってどんな感じなんですか?』って訊いたら、『いやあ、あいつ10年前から知ってるけど、あんなんじゃなかったよ』って(笑)」と暴露するHIROKIとYAMATO(Vo)が「ORANGE RANGE界のたなしん」の座を譲り合う(?)場面があったり、「僕たちいつも、ライブでやってることがありまして。僕が『3、2、1……』って言ったら、『シーサー!』って言ってください! これ、いつものお決まりなんで(笑)」とさっきのたなしんの「3、2、1……ファイヤー!」のお株を奪うコール&レスポンスをでっち上げてみせたり(それを当のたなしんがフロアで聞いて笑っていたり)、そこから“Special Summer Sale”の超高気圧的な開放感へと突入し、“お願い!セニョリータ”でフロア丸ごとモンキーダンスへと誘い――2組のバンドとクアトロとオーディエンスが「今この瞬間だからこそ」のパワフルな快楽性を生んでいるのが、無性に嬉しくなってくる。
「飛ばしすぎたか?」と終盤でフロアに語りかけつつ、オーディエンス1人1人への感謝を改めて伝えるRYO(Vo)。「クアトロとの出会いも……自分らがこうやって対バンとかやっていきたいっていう気持ちになった時に、本当に協力してくれて、自分たちがどんどんライブを楽しめる場を作ってくれて。この出会いも奇跡だと思います。そんなことを感じてきて、この曲の歌詞も『深いなあ』と思ってきて、今日入れた曲があるので、聴いてください」という言葉とともに披露されたのは、珠玉のバラード“花”! リリースから9年が過ぎた今、5人の中でこの曲がいっそう鮮やかに力強く花開いていることが、どこまでも雄大に鳴り渡るこの日の歌とサウンドから伝わってくる。そこから一転、激烈ヘヴィ・ミクスチャー・ナンバー“チェスト”で会場を一大ジャンプ大会へ叩き込んでクアトロを揺さぶり、“オボロナアゲハ”で見渡す限りのハンドウェーブを巻き起こし、本編最後は「スタートラインの曲です!」とデビュー・シングル“キリキリマイ”へ! それまで後列にいたNAOTO&YOHも前列に並び、サポート・ドラム=桜井正宏以外の5人全員フォワード状態の爆音と熱量で煽りまくる。最高のクライマックスだ。
アンコールを求める割れんばかりの手拍子に応えて再びオン・ステージしたORANGE RANGE、「一曲入魂!」のRYOの言葉から“チャンピオーネ”炸裂! 真夏の熱気をさらに祝祭感で上書きしていこうとするような5人の意志が、ひときわ高らかなシンガロングとクラップを沸き上がらせ、抑えきれない歓喜が観客を会場一丸のジャンプへと導いていく――ジャンルやスタイルの違いを完全に無効化した、「化学変化」どころではないマジックが、この日の渋谷クラブクアトロには確かにあった。そんな『QUATTRO QUARTER』、明日・31日の「What’s Shakin」は麗蘭 × 曽我部恵一BAND!(高橋智樹)
ORANGE RANGE×グッドモーニングアメリカ @ 渋谷クラブクアトロ
2013.07.30