各地での夏フェス転戦と平行して行われる、『Horse Riding EP』を携えてのツアー、Zepp Tokyo2デイズの2日目。細美武士(Vo./G.)は「東京ファイナルへようこそー!! ファイナルじゃねえけど、東京ファイナルだ! 派手にいこうぜ!!」と冗談めかしていたのだが、終盤には「the HIATUSの歴史の中で、一番でかい声で歌う客席だった!」という言葉が零れてしまうほど、凄まじい盛り上がりを見せたライヴであった。以下のレポートでは演奏曲の表記など、ネタバレを含む部分があるので、今後の公演を楽しみにされている方は閲覧にご注意を。
それにしても、the HIATUSがもたらす一期一会の強烈なライヴ体験にはいちいち驚かされる。僕はROCK IN JAPAN FES. 2013(8/4)とサマーソニック2013 (8/10)でも彼らのライヴをがっつり観たのだけれど、それぞれのステージで異なる手応えを味わうことが出来た。彼らのライヴへと熱心に通い詰めているファンなら尚更、そう思うのかも知れない。とりわけ今回のワンマンでは、細美が語っていたようにオーディエンスの驚異的なレスポンスの良さが後押ししたからか、the HIATUSのライヴとしてはかつて観たことが無いほどハッピーな、時には笑いも混じるような突き抜けた歓喜に包まれたステージだったのである。
“The Ivy”の、これをロック・バンド編成でやるかという大作映画のスコアみたいなアレンジがあれば、“The Tower and The Snake”の精神のどん詰まりを突破する先鋭的なロック・サウンドもある。アダルトでジャジーなのに今にも爆発しそうな緊張感を受け止めさせる“Superblock”も披露されるし、“Deerhounds”では柏倉隆史(Dr.)がドラマティックなラテン・ビートを心地良さそうな表情で叩きまくり、伊澤一葉(Key.)の鍵盤がフォルクローレ風メロディをたなびかせるといった具合だ。ヘヴィネスも流麗な旋律も、そして進化・改革こそが自らの使命とするような“Don’t Follow The Crowd”のようなバンド・アンサンブルも分け隔てなく持ち込まれるディープな表現世界を、どういうわけだかオーディエンスたちは一瞬のうちに理解し、分かち合い、歓喜に結びつけることが出来る。まるで、音楽というアート・フォームの本質的な魅力と信頼感が、手品のように次から次へと飛び出してくるみたいだ。
「関係ない話だけど」と前置きして細美は、最近読んだという本の話題を引き合いに出しながら、現在の社会に対する彼のスタンスを熱く語ってゆく。語ってゆくのだが、ふいにフロアから「わかんねー!」と声が飛べば、そこからフランクな調子のやり合いが始まって場内が大爆笑、といった具合なのだ。コミュニケーションが一方通行にならず、特別な歓喜を生み出しているのが分かる。これだけでも、今回のライヴのハッピーなヴァイブが伝わろうというものだ。そして、唱歌か子守唄の如く優しく、穏やかに切り出され、次第に勇壮に展開してゆく一曲“Horse Riding”へ。《Revolution needs a soundtrack》(革命にはサウンドトラックが必要だろ)というフレーズが、the HIATUSの使命感をこれでもかと伝える素晴らしいナンバーだ。後に細美はこんなふうにも語っていた。「みんなから貰うパワーって凄いんだよ。昨日、疲れたなーって帰るのかと思ったら、イケイケなのね。お前らが発してるパワーって本当に凄いんだよ。絶対、この国を変えられるから」。