ゆず @ 横浜アリーナ

「今日は僕たちにとってすごい記念日になりました。まず、横浜アリーナでライブをやるのが今年10回目。そして、ゆずとしてはデビューしてから横浜アリーナ、今日で60回目ということになりました。みんなのおかげです! ありがとね!」。序盤から上気しまくった表情で語りかける北川悠仁の言葉に、横浜アリーナを埋め尽くした12,000人を超えるオーディエンスから熱い拍手喝采が湧き起こる――。2月の横浜アリーナ6Days(!)を含む全国アリーナ・ツアー『YUZU ARENA TOUR 2012/13 YUZU YOU~みんなと、どこまでも~』の後、今年5月1日にリリースされたアルバム『LAND』を引っ提げて全国を回ってきたゆずのアリーナ・ツアー『YUZU ARENA TOUR 2013 GO LAND』。東京近郊だけ見ても、さいたまスーパーアリーナ×2/国立代々木競技場第一体育館×2/横浜アリーナ×2といったスケールで開催される全21公演……に加え、幕張メッセ9・10・11ホール×2/大阪城ホール×2/横浜アリーナ×2/マリンメッセ福岡と追加公演7本が用意された今回のツアー。横浜アリーナ2Daysの2日目にして追加公演セミファイナルとなったこの日は、ゆずのシンガー/ソングライターとしての訴求力と、パフォーマー/エンターテイナーとしてのエネルギーが、高次元ででっかく一体化して弾けたような、最高のステージが展開されていた。

「今回の『GO LAND』ツアーは、『LAND』というアルバムの世界観を表現しています。もちろん、『LAND』の曲もたくさんやるんですが、その『LAND』の世界観にぴったりと合うような、あんな曲やこんな曲、懐かしい曲、いろいろやりますんで、そちらのほうも楽しんでいってください!」と北川自身も語っていたこの日のアクト。まだ最終日:9/28マリンメッセ福岡公演が控えているので、曲目や演出などの記述はごく一部に留めさせていただくが、北川悠仁&岩沢厚治がそのアートワークも含めコンセプチュアルに構築した『LAND』の世界を、斎藤有太(Key)/松原"マツキチ"寛(Dr)/種子田健(B)/浜崎快声(G)/佐藤"じーけん"健治(G)/若森さちこ(Perc)/佐藤帆乃佳(Violin)とともに繰り出す豊潤なアンサンブルのみならず、舞台設計や演出、映像まで一丸となった一大ポップ・オペラとしてリアルに表現してみせた、至上の一夜だった。

ヒャダインこと前山田健一とのコラボ曲“REASON”なども含め、震災後の日本の「今」を、「僕らが生きる場所」を渾身の力で極彩色に咲き誇らせてみせた『LAND』。むやみやたらと現状を肯定してインスタントな快楽を提示するための音楽ではなく、「僕らが生きる場所」=LANDを僕らみんなの手でWONDERLANDに変えていくことが必要だ――という強靭な想いが、観る者すべてをハイ・クオリティなおとぎ話の世界に誘い込むようなこの日の演奏の随所からもあふれ出してきた。そして、「僕たちのライブは、初めて来た人でも、何回来た人でも、北海道から来た方でも、沖縄から来た方でも、どんな方でも楽しめるライブになっております!」という北川の言葉通り、“イロトリドリ”で横浜アリーナ満場の客席をタオルの渦巻きとダンスで埋め尽くしたりしながら、観る者を誰ひとり置き去りにしないでっかい多幸感で広大な空間の熱気を抱き止めてみせる。会場の規模そのものも大きいが、北川&岩沢の放射するエネルギーはそれを遥かに凌駕するほどに巨大で、熱い。

時にハンドマイクで縦横無尽に舞台を駆け回って身体全体を振り絞った絶唱を聴かせたり、時にピアノを奏でながら真摯な歌を届けたり……といった具合にアグレッシブで情熱的なステージングで開場を沸かせていた北川。そして、一貫してストイックにアコギを奏で続けながら、麗しの歌声を横浜アリーナ狭しと鳴り渡らせていた岩沢。舞台の展開に合わせて何度も衣装を替えながら、オーディエンスを刻一刻とその表現にぐいぐい惹き付けてみせた2人。「このツアーは、夏のちょっと前ぐらいから始まりまして。そして、夏を通り越しちゃって、すっかり秋になってますね。もう夏は終わっちゃいました!」と悪戯っぽく客席に語りかける北川。「え、夏の曲が聴きたい? いやいや、全然準備とかしてないし……あれ?」と言うその手には星形のタンバリン。爆笑に沸き返る横浜アリーナを「夏の曲聴いてくださーい!」と“夏色”へ導いたり、さらにそこから意外なサマー・チューンへ流れ込んでみせたり……隅から隅までサービス精神特盛りの高揚感と、この時代の困難や悲しみに向き合う覚悟と決意が、まったく矛盾なく、というか一体のものとして存在している。そんな「朗らかな凄味」とでも言うべき『LAND』の世界観に、改めて胸が熱くなった。

「みんなの大事な連休の最後の日を、僕たちに使ってくれてありがとう! 楽しかったです! 明日からも頑張りましょう!」と岩沢。「『GO LAND』というツアーは、この世界観を表現するのが大変でした!」と北川。バンド・メンバーに、スタッフに、そして観客全員に拍手を捧げ「この時間をともに過ごしたことを誇りに思います!」と呼びかける北川の言葉からも、この日のアクトの充実感が滲んでいた。「いろんなことがあると思うんだけど、これだけは忘れないでください! 僕たちの歌は、必ず、みんなのそばに、いつでもいます」……そんなメッセージが、熱い余韻とともにいつまでも胸に残った。そしてこのライブの翌日、12月27日公開の映画『劇場版 HUNTER×HUNTER―The LAST MISSION―』のための新曲“表裏一体”(“REASON”同様、前山田健一・北川悠仁・岩沢厚治の3人による楽曲)を書き下ろしたことを発表したゆず。彼らの音楽はさらに力強く「その先」へ続いていく――という予感を確かに刻む、素晴らしいステージだった。(高橋智樹)
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