モーモールルギャバン @ Zepp Tokyo

9月4日に2ndシングル『LoVE SHouT!』を発表したモーモールルギャバン。昨年3月にリリースしたアルバム『僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ』から約1年半ぶりとなるこの新作を引っ提げて、全国6都市を回るワンマンツアー「URBAN NIGHT! 騒ぎまSHouT!」が開催された。その最終日となる、彼らにとって2度目のZepp Tokyoワンマン。「この日を待ちかねた!」とばかりにフロアを埋め尽くしたオーディエンスを前にして、久々のワンマンツアーを経てさらにスケールアップした姿を彼らは堂々と見せつけてくれた。それこそ「ファイナルをZeppでできるバンドになるなんて誰が思ったでしょう!」というゲイリー・ビッチェ(Dr/Vo)のMCに、「思っていた!」と拳を突き上げて応えたくなるほどに。

開演時刻の18時半ジャスト、暗転と同時にステージに現れたユコ・カティ(Key/Vo/銅鑼)がクラヴィネットの鋭利なリフで場内を震わせたところで、パッと照らされたステージ中央から、T-マルガリータ(B/Vo)の極太なベースラインが炸裂。さらにスネアとバスドラのリズムが鳴るやいなやスポットライトが下手側のゲイリー・ビッチェを照らし出し、バンドの姿が露になる。ステージ上部のビジョンには、最新シングルのカップリング“MAD MADONNA”のミュージック・ビデオのワンシーンが映し出される。この最新シングル収録のインストナンバーで、ライヴは勢いよく幕を開ける。その後も高速BPMでブチかまされた“いつか君に殺されても”、ユコ・カティによる酩酊感ある電子音がフロアを揺さぶった“細胞9”、3人のコーラスが冴えわたった“BeVeci Calopueno”と、インディー・デビュー作から最新作まで網羅した出し惜しみのない展開でオーディエンスを翻弄。パンクもジャズもファンクも一緒くたに掛け合わせ、銅鑼の音まで豪快に響きわたるカオティックな音塊を前にして、フロアの熱気は1曲ごとに上昇するばかりだ。

さらに“Hello! Mr.Coke-High”“ATTENTION!”“琵琶湖とメガネと君”とノンストップで叩きつけ、場内を極彩色に染め上げていく3人。“パンティー泥棒の唄”の直前ではお立ち台に上ってアジテートするゲイリーに向かってオーディエンスから「ハゲー!」と茶々が入れられ「ハゲてねぇよ! 本当はここでMC挟む予定じゃなかったのにぃ!」とライヴの流れがストップする一幕もあったけど、基本的には間髪入れずに曲を発射するスキのない展開で、場内の温度をぐいぐいと引き上げていく。それによって明らかになったのは、彼らの「ライヴを魅せる」スキルが飛躍的に向上しているということ。メンバーそれぞれの音楽的な引き出しの多さや演奏スキルの高さは最早言うまでもないけれど、アッパーチューンもセンチメンタルなバラードも軒並み高い熱量で連発されることにより、モーモー特有の泣き笑いのグラデーションが今まで以上にクッキリと浮かび上がっていた。“POP! 烏龍ハイ”で乱痴気騒ぎを生み出した直後、“Good Bye Thank You”“それは悲しい唄のように”で訪れた温かみのある静寂。そこには、迸る激情も哀しみもカラフルな音に変えて解き放つモーモールルギャバンならではの濃密なエモーションが宿っていた。

そして。“821”“愛と平和の使者”“裸族”の連打で再びテンションを上げた後に「先月シングルを出したんですよ」(ゲイリー)と披露された“LoVE SHouT!”は、バンドとして充実の時を迎えている彼らの「今」を何よりも象徴していたと思う。タイトなアンサンブルとキャッチーなメロディが追いかけっこを繰り返し、その名の通り「愛の叫び」とも取れる3人のシャウトを発火剤として無軌道かつダイナミックに爆発していくさまは、生き物のように進化するバンドサウンドの快楽を突き詰めたモーモー・サウンドの真髄そのものだ。

「こんなに一杯入ってくれて嬉しいよ。僕はこういう見た目だから、よく『マルさんってゲイなんですか?』って言われるんだけど(笑)。そんなことないのになぁと、あるとき自分たちのライヴDVDの“野口~”のこの喋りの部分を見たら、『ああ、この人なんかオカマっぽい。喋り方が気持ちわるい』と思って。なんか悲しくなった。そういえば小っちゃい頃に『僕、女の子』って言ってたみたいで。昔からそういうけもあったのかなぁ」というT-マルガリータの恒例の口上で爆笑を誘った“野口、久津川で爆死”からは、クライマックスまでキラー・チューンの乱れ打ち。“ユキちゃんの遺伝子”でダンス天国へ雪崩れ込むと、のっけからフロア一丸のハイジャンプが沸き起こった“スシェンコ・トロブリスキー”、サビでキラッキラの高揚感が押し寄せた“サノバ・ビッチェ”と駆け抜けて、本編ラストの“サイケな恋人”へ。「これがJ-POPの限界だぁ!」とお決まりのオチが慣行されたところで、抱腹絶倒の大団円を迎えた。

アンコールでは、まずは“悲しみは地下鉄で”をしっとりと披露。一旦ステージを捌けた後に後に再び登場したダブル・アンコールでは、“MY SHELLY”で軽快なハンドクラップを、さらには“ユキちゃん”でリビドー全開の大合唱をフロアに巻き起こして終幕。アウトロでは「♪東京は夜の7時~」とピチカート・ファイブの名曲のフレーズをゲイリーがおもむろに歌い上げ、最後の最後までフロアを笑いで満たしてステージを去った3人なのであった。すでに2時間半以上立ちっぱなしでライヴを観ていたはずなのに、「まだ足りない! もう一度最初から観たい!」という気にさせられる、凄まじい引力を持ったモーモールルギャバンのアクト。今回はシングルのツアーだったけれど、一刻も早くアルバムの発表とリリース・ツアーが開催されることを切に願う。(齋藤美穂)

セットリスト
1. MAD MADONNNA
2. いつか君に殺されても
3. 細胞9
4. BeVeci Calopueno
5. Hello! Mr.Coke-High
6. ATTENTION!
7. 琵琶湖とメガネと君
8. パンティー泥棒の唄
9. POP! 烏龍ハイ
10. Good Bye Thank You
11. それは悲しい唄のように
12. 821
13. 愛と平和の使者
14. 裸族
15. LoVe SHouT!
16. 野口、久津川で爆死
17. ユキちゃんの遺伝子
18. スシェンコ・トロブリスキー
19. サノバ・ビッチェ
20. サイケな恋人
アンコール
21. 悲しみは地下鉄で
22. MY SHELLY
23. ユキちゃん
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