NICO Touches the Walls @ Zepp DiverCity

NICO Touches the Walls恒例、1125(イイニコ)の日ライヴ。昨年はツアー中にGRAPEVINEと相見える形で開催されたが、今回はワンマンの、バンドとしても久々のステージとなった。4人がパフォーマンスに夢中になり楽しみ尽くすことで、それを目の当たりにするオーディエンスも自ずと夢中になって楽しんでしまうという、極めて健全なコミュニケーションの形を描き出したロックンロール・ナイトである。レッド・ツェッペリンのオープニングSEに乗って、適度にリラックスした様子が伺えるメンバーが登場し、いよいよスタートだ。

対馬祥太郎(Dr.)のどっしりと間を取る8ビートの中で、光村龍哉(Vo./G.)が《ガンダム横通り過ぎて あなたの笑顔を迎えに来たよ》と歌詞を届けてくる“1125のテーマ”から、「灼熱のロック・パーティ、お台場準備いいかい!?」と煽り立て、坂倉心悟(Ba.)のスラップ・ショットに導かれる噛み付くようなダンス・ロック・チューン“アビダルマ”へと繋いでゆく。さらに、ヘヴィ&ファンキーなグルーヴの中で古村大介(G.)が思いっきり弦を搔き毟る“業々”、そして悲鳴のような爆音にまみれながら坂倉&対馬がステージの両翼に広がって盛大なコーラスを誘う“そのTAXI, 160km/h”と、幅広い選曲のなかから突き進むスリリングな展開である。

「楽しいね〜。でもまだまだ行くよー!」とMCもそこそこに光村、真紅の照明に包まれて“衝突”で危うい疾走を続け、ギター・リフが歓声を巻き起こす“錆びてきた”、哀愁の中にも雄々しさと色香を残す“サラ=レイニーデイ”、更にはじっくりと時間を練り上げながら歌詞の音楽的な響きが光る“レオ”や“demon (is there?)”と、熱をキープしながら表現のレンジを押し広げてゆく。キャリアを経るごとに新たなテーマを見出して、新作をリリースし、ツアーを行う。そういったロック・バンドの活動とは一線を画した、単発ライヴならではのカジュアルで自由度の高いパフォーマンスだ。もちろん、こんなふうにイッツ・オンリー・ロックンロールなパフォーマンスでオーディエンスを熱狂させ、感動させるのは容易いことではない。まるで、何十年もキャリアを積み重ねたベテラン・バンドのようだ。

「楽しんでる? 11月25日、イイニコの日です。ロックンロール・ナイトと称して、いつもより薄着です(笑)。久々のライヴで、僕はその間にこれ(赤いボディのヴィンテージ・ギター)、栃木で買ったんですよ。なので、トチオトメと名付けました」「シングルで女性ヴォーカルの曲をカヴァーしていて、楽しみながらやってるんですけど、ギャグ度が上がって来てる。気をつけなきゃいけないなと思ってるんですが、その新しいのがあるんですよ。どこにも出してないやつが。タイトル言った方がいいか? 山口百恵さんの曲で、宇崎竜童さんの作曲で、当時の日本のロックは渋いんですよ。“イミテイション・ゴールド”という曲をやります」。

そんな光村のMCで楽曲に向かっていったのだが、これが凄かった。高速でベースがスウィングする爆発的なアンサンブル。思い切りヘドバン出来てしまうようなアレンジなのだけれど、静と動のコントラストが効いていてしっかり歌も聴かせるという、見事なカヴァーである。続けて放たれるのは『夢一号』のカップリングだったダブ・アレンジのDREAMS COME TRUE“決戦は金曜日”、そしてヘリウムガスを吸入した坂倉が可愛い声で4カウントを取って傾れ込む、松田聖子のサーフ・ロックンロール風“Sweet Memories”(こちらは『Mr. ECHO』のカップリングに収録)。ハーモニーも鮮やかで最高だ。どの曲もちゃんとニコのロックとして鳴っている。優れたカヴァーとはこういうものである。『ニワカ雨ニモ負ケズ』に収められたMISIAの“陽の当たる場所”も、ぜひ聴いてみたかった。

そしてこの後には「ロックンロール・ナイト、まだまだ余力は残ってるよねー!?」と“武家諸法度”を叩き付け、“ストロベリーガール”から“バニーガールとダニーボーイ”と、新旧入り乱れての選曲にも関わらず満場のハンド・クラップが止まらない時間が続いてゆく。《前の方の人も、後ろの方の人も、2階席の人も、もちろん関係者の皆さんも、その素敵な手を、離したくはな〜い》と自由闊達に歌い、華やかなコール&レスポンスも盛り込まれるなど、一曲一曲の聴き応えと盛り上がりがいちいち凄いことになっている。眩いサウンドと照明効果が手を取り合う、痛快な“GANIMATA GIRL”の後には、「この曲で、一から教育しようと思うよ!」と“THE BUNGY”でオーディエンスに裏拍のクラップを要求する光村。そして女子から先にコーラスを求め、「ここの教育はしっかりしてるね! 俺たちが培ってきた関係性が発揮されてるよ! じゃあ次は野郎ども、来年は俺たちのライヴに2人ずつ友達連れてこい! 来年はもっと、野郎の声をでかくしていくぜ!!」と、一人残らずそのロックンロールに巻き込んでしまうのであった。

“GUERNICA”のシリアスでディープなサウンドスケープによって始まったアンコールでは、「なかなかこういうの出来ないからね。今のとこ、シングル1曲しかやってないよ!」と告げながら、今後の活動についてのビッグ・ニュースも連発される。2/5(ニコの日)リリースのベスト盤収録曲については「今日やった曲がほとんど入ってない」と冗談めかしていたが、2月に原宿で20日間に渡って繰り広げられる篭城型ライヴ「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ヒミツキチ『カベ ニ ミミ』」の開催といった新たなチャレンジや、光村が「リヴェンジ」と表現していた8/19、2度目の武道館公演開催も発表された(詳細はこちらのニュース記事を→http://ro69.jp/news/detail/92765)。

そして目下の最新シングル“ニワカ雨ニモ負ケズ”を経て、「次やるときまでのお守りに、写真だろうが動画だろうが好きなように持って帰ってくれ!」と、一時の別れを華々しく締め括る“N極とN極”で撮影を許可しながら「1・1・2・5締め」の一斉ジャンプでフィニッシュである。何よりも自分たちが積極的に楽しみ尽くすことで、ネクスト・レヴェルの扉をこじ開けてゆく、そんな2013年の、イイニコの日ライヴだった。(小池宏和)

01 1125のテーマ
02 アビダルマ
03 業々
04 そのTAXI, 160km/h
05 衝突
06 錆びてきた
07 サラ=レイニーデイ
08 レオ
09 demon (is there?)
10 イミテイション・ゴールド (Cover)
11 決戦は金曜日 (Cover)
12 Sweet Memories (Cover)
13 武家諸法度
14 ストロベリーガール
15 バニーガールとダニーボーイ
16 GANIMATA GIRL
17 THE BUNGY
encore
01 GUERNICA
02 ニワカ雨ニモ負ケズ
03 N極とN極
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