plenty@Zepp Tokyo

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こんなにもハジケているplentyは、初めて観た。江沼郁弥(Vo・G)や新田紀彰(B)のひたすらに楽しそうな立ち居振る舞いだけではなく、サポート含め4人編成のバンド・サウンドそのものが、ハジケていた。1/29にはEP『これから/先生のススメ/good bye』をリリースし、2/15の鹿嶋LOOP(茨城・plentyのホームグラウンドと呼ぶべきライヴハウス)を皮切りに、全国13公演のスケジュールで繰り広げられてきた『plenty 2014年 春 ワンマンツアー』。ファイナルの舞台はZepp Tokyoである。オープニングSEが鳴り止むと、まずは江沼×ヒラマミキオによる2本のギター・フレーズが交錯し、最新シングルのトップを飾っていた“これから”が届けられる。《僕ら手をつないで  いつでも独りきりだった》。そんな、あまりにもplentyな愛とコミュニケーションの形が力強い4ピース・サウンドの推進力を受け、春の訪れへと手を伸ばす。

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序盤からそのバンド・グルーヴに積極的に身を揺らし、ロックなアタック感のベース・ラインで“ACTOR”を切り出す新田。そして江沼の悲鳴のようなハイトーンが伸び、中畑大樹が圧倒的な暴れ太鼓を披露する、といったふうに、バンドのコミュニケーションを照れも衒いもなく楽しみ尽くそうとするヴァイブが、会場内を満たしていった。右手を掲げて「イエイッ!!  楽しんでいってくださーい!」と景気の良い挨拶を投げ掛ける江沼の姿からも、その昂りがひしひしと伝わるようだ。ヴォーカル・マイクにエフェクトを噛ませた、ソリッドな爆音アレンジの“おりこうさん”も凄い。アイデアと生の躍動感とが、がっちりと手を取り合っている。「あ、具合が悪くなったら言ってくださいね。助けますから」。江沼のMCからも頼もしさを感じる。人と関わることで、自分自身が変わる。そんなplenty作品の本質を体現してしまうかのような江沼である。

研ぎ澄ませるところはとことん研ぎ澄ませ、エモーションを増幅させるときは天井知らずの大音量で増幅させる。そんなバンド・サウンドの激しい抑揚の中、plentyの楽曲は今このときでしかあり得ない響き方をしていた。かつてのplentyのサウンドが、遠慮がちだが譲れない切実な思いを支えるための「杖」だったとすれば、この4ピースのplentyによるサウンドはまるで「武器」である。“プレイヤー”では、2人のギター・サウンドがハーモニーを膨らませて触れる者を呑み込んでしまうさまが素晴らしい。ヒラマの、ドキッとさせるような音色、そしてフレーズはやはり天下一品である。

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本編中盤に差し掛かろうというところで、ゴリッゴリの疾走感とともに繰り出されるのは“先生のススメ”だ。まるで年長者サポート・メンバーに挑みかかるような、江沼と新田の前のめりな姿勢が楽曲に映える。そして中畑のブレイクで息を合わせるように傾れ込む“待ち合わせの途中”、「ウォイッ!!」と掛け声一閃からフラッシュライトの中を駆け抜けオーディエンスが掌をかざす“枠”とアグレッシヴなplentyが全開に。“少年”ではヒラマがシェイカーやカウベルを鳴らしてフレイヴァーを加え、“劣勢”をプレイ中に江沼は、オーディエンスの方に行ってやれよ、とばかりに新田の体を押しやったり、ヒラマのエフェクターを勝手にいじりまわしたりしていた。

爆音サイケ・グルーヴで描き出された“或る話”の直後には、新田がおずおずと「ファイナルですねえ。あ〜、終わっちゃいますねえ。楽しいですよ、こっちは。あ、楽しいですか? いやあ、ほんと感謝しかないです。また来てください……」と話している間に、他の3人はステージから立ち去ってしまうという放置プレイ。江沼は戻って来たかと思えば「顔、真っ赤じゃないですかあ〜」と新田を冷やかしている。そして今回のツアーで設けてきたという江沼×新田のMCでは「今回はほら、(公演日程が)週末だったから、間が開くじゃないですか。なにしてました?(江沼)」「いや……走ったりとか、普通に。なにしてました?(新田)」「食っちゃ寝、食っちゃ寝(笑)……今回、これやってきたけどさあ、次の曲に行き難くてしょうがない。俺は誓ったよ。今後一切、こういうことはしない!(江沼)」。フロアからは「いやだー!」と声も上がっていたが、ノリノリの演奏中とは打って変わって、MCでは相変わらずのplentyなのであった。

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ところが、このMCタイムが力みや昂りを抜く効果をもたらしたのかは分からないが、“東京”→“拝啓。皆さま”と続いてゆくこの後の展開は、4ピースの豊かな音に江沼の歌がぽっかりと浮かび上がるという、今のplentyサウンドの極みに触れる時間帯になっていった。“いつかのあした”では、フロアに溶け込むほどドリーミーなギター音響を重ねる、ヒラマのプレイが余りに美しい。1曲目に“これから”を、中盤に4ピース・バンドのエキサイトメントを切り出す“先生のススメ”を配置した今回のライヴにおいて、珠玉のクライマックスを締め括るのは、“good bye”だ。3月の終わりに辿り着いたツアー・ファイナルの、新しい季節の訪れと新たな旅立ちを告げる、文字通りに「good」な「bye」が、音楽として形を成していた。「ありがとうございまーす!! なんか、ニコニコしてますねえ」とピース・サインを掲げる江沼。そう言う本人こそがニコニコとしてしまっていたのは、言うまでもないだろう。アンコールに応えてからの4人も名曲群を連打していった(“明日から王様”は、「今日、日曜日だよね。あれ? 日曜日じゃない?」というやりとりの果てに、《キライでしょ? 日曜日は、、、》と歌詞を変えて歌われていた)のだが、ここで江沼が話し出す。

「plentyが2人体制になって、3年ですか。でも、止まらずにやろうぜって話になって、中畑さんに出会って。3ピースにこだわってきたけど、もう2人だし、作品を作ってライヴをやってって、動きを止めずに続けることが大切で。そして、ヒラマさんとやりたいなあって、『this』のツアーから1年、やってきたんですが。この4人体制は(ワンマンでは)今日まで、あとは5月のフェス(『VIVA LA ROCK』)までになります」「理由としては、やっぱりバンドとしてやりたいなと、この、前のガキンチョ2人が思って……今のは、楽しいんだよ! でもさあ、(中畑の方を示して)プロじゃん。俺たちみたいな温室育ちはさあ、甘えちゃうんだよ!」「最終的にライヴを何人編成でやろう、とかは決まってないですけど、5人6人……11人とか(笑)。とりあえず、ドラマーを入れる。全然、暗くないよ? とても前向きな決断なので、これからもplentyをよろしくお願いします!」

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そして、終わりなき探求への決意を再確認するように、“傾いた空”と“蒼き日々”を披露し、今回のステージは幕を閉じた。最高のライヴだった。江沼の言葉とは少し食い違ってしまうかも知れないけれど、4人は間違いなく、素晴らしい「バンド」だった。江沼と新田に刺激をもたらしてplentyの一時代を刻み、何よりも、plentyとリスナーとの関係をより深く、親密に結びつけるサウンドを鳴らしていた。この体験が必ず、新しいplentyを導いてくれる。そう確信せずにはいられない一夜であった。(小池宏和)

set list

01 これから
02 ACTOR
03 おりこうさん
04 理由
05 はずれた天気予報
06 空が笑ってる
07 プレイヤー
08 先生のススメ
09 待ち合わせの途中
10 枠
11 少年
12 劣勢
13 或る話
14 東京
15 拝啓。皆さま
16 ETERNAL
17 いつかのあした
18 終わりない何処かへ
19 good bye

encore
01 DRIP
02 明日から王様
03 あいという
04 人との距離のはかりかた
05 傾いた空
06 蒼き日々
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