4月にバイオフィリア・ツアーの全貌を追ったドキュメンタリー作品『ビョーク×アッテンボロー~バイオフィリア・ドキュメンタリー』をリリースしたビョークだが、ツアーとともに各地で試行していた児童向けの音楽教育が故郷アイスランドや北欧各国で導入される動きを見せているという。
バイオフィリア・ツアーは2011年にリリースされた『バイオフィリア』とともにさまざまなメディアを巻き込んだマルチ・メディア・プロジェクトとして進められ、ビョークが長期滞在した公演地などでは児童向けの音楽講習会などが行われることになった。その後、この音楽教育がアイスランドの学校で実験的に導入されることになり、今年に入ってからビョークはアイスランドで北欧各国の教育学者と「バイオフィリア教育プログラム」を準備しているという。
プログラムはあくまでも学術的でないものを目指しているとのことで、アイスランドで実験的に行っている音楽教育についてもビョークは「特にADHDや失読症に悩まされている子供たちにすごく喜ばれているのよ」とジ・オブザーヴァー紙に語っていて、それは教室に縛られた通常のアイスランドの伝統的な教育カリキュラムに束縛されていないからだと説明している。しかし、これをプログラム化していくには「机にかじりついてカリキュラムにしていかなければならないわけで、そこが矛盾しているところよね」と語っている。
また、ビョークは地熱発電を利用したアルミニウム生産プロジェクトが外資の圧力によってアイスランドで推し進められていることに警鐘を鳴らしていて、今回の教育プログラムを利用してこの問題も広く訴えていくつもりだと表明している。
「海外の関心を引くためにもこのキャンペーンは必要なの。わたしたちだけの問題ではなくて、これをやめさせることはみんなのためにもなるはずだから」とビョークは語っている。
なお、環境保護運動はアイスランドが歴史的に漁業問題や捕鯨問題でさまざまな環境保護団体から槍玉に挙げられてきただけにアイスランドの住民一般には馴染みが薄いところもあり、ビョークの今回の運動についても漁業が低迷しているアイスランド北部の住民からは懐疑的に迎えられているという。ビョークもそれは認めながらも、土壌汚染などどうしても守るべきものがあるということは、アイスランドのさまざまな住民層の間でも理解は進み始めているのだと語っている。