今週のRO69ニュースROUND UP:ストリーミング新時代突入も目前、ミューズ新作がコンセプト・アルバムである理由

今週のRO69ニュースROUND UP:ストリーミング新時代突入も目前、ミューズ新作がコンセプト・アルバムである理由

この2015年の音楽シーンにおいて恐らく最大の転換点になると思われるのが、海外では来月中にもローンチと目されるアップルの定額ストリーミング・サービスのリリースだ。

これは昨年アップルが史上最高額となる30億ドルで買収したハイエンド・ヘッドフォン&定額ストリーミング・サービス「ビーツ」を元にしたもので、現行のiTunesに統合された上で運用されるとも見られている。世界的に音楽ダウンロード事業の低調が続く中でのアップルとiTunesの定額ストリーミング参入は、ダウンロード→ストリーミングの流れの決定的な契機になるはずだ。

そんなストリーミング新時代への突入を前に、大手ワーナー・ミュージックの代表が「ストリーミングはダウンロードより儲かる」と改めて発言して話題となった。

◆ワーナー・ミュージック代表、ストリーミングの収益がダウンロードを超えたと発表(2015/5/13)
http://ro69.jp/news/detail/123877

音楽が売れない、売れないと言われ続けて既に10年近くが経っている中で、ストリーミングでの収益の大幅アップによって昨年ワーナーはさくっと過去最高益を記録。「月額1000円(9.9ドル)戦争」とでも呼ぶべきスポティファイ、ビーツ・ミュージック、ディーザーといった定額ストリーミング・サービスの熾烈な競争はさらに激化している。昨年、アメリカではストリーミングの総売上がフィジカルの売上をついに上回った。

また、新たな定額ストリーミング・サービスとして、ジェイ・Zが買収した「TIDAL」も話題に。ストリーミング・サービスでは最大の印税率をアーティストに提供すると掲げる「TIDAL」は、ビヨンセやカニエ・ウェストら16組のアーティストが出資していることでも注目を集めた。なおジェイ・Zは、5月16日に行われたライヴでユーチューブやスポティファイを批判するフリースタイルを披露している。

◆ジェイ・Z、タイダル・ユーザー対象の特別ライヴでB・B・キングに黙禱を捧げる(2015/5/18)
http://ro69.jp/news/detail/124171

スポティファイへの批判を続けるレディオヘッドや、スポティファイから全ての楽曲を引き上げたテイラー・スウィフトのように、ストリーミングへのアーティストの可否、距離感は様々なわけだけれど、このTIDALのようにアーティスト自らがアーティストの権利、音楽の価値を守りうるストリーミング・サービスを立ち上げる動きの中で、実際にテイラーもTIDALには全面的に参加している。ちなみにアップルのストリーミング・サービスの開発にはトレント・レズナーが関わっているとの情報も。

マドンナ、ダフト・パンク、カニエ・ウェスト、コールドプレイら、豪華アーティストが顔を揃えたTIDALのローンチ・ビデオにも度肝を抜かれた。

◆マドンナ、コールドプレイら出演、ジェイ・Zのストリーミング・サービスのプロモ映像(2015/3/31)
http://ro69.jp/news/detail/121430

ちなみに上記のワーナー・ミュージックに所属し、スポティファイのお膝元UKのロック・バンドとしてはワーナーでも1、2を争うステイタスを築いているのがミューズだ。新作『ドローンズ』のリリースをこれまた来月に控える彼らが、このストリーミング時代において、いかに「アルバム」を作るべきかを語っているのがこちら。

◆ミューズのマット・ベラミー、ストリーミング時代におけるアルバム制作のあり方を語る(2015/5/11)
http://ro69.jp/news/detail/123732

アルバムはコンセプトを持たないともはやアルバムとして存在できない、それがストリーミング新時代だとマシューは語っている。


音楽の聴かれ方が変われば、自ずと音楽の作り方も変わっていく。これが不可逆な流れである以上は、パッケージの概念はどんどん希薄になっていくだろうし、アルバム・アーティストとそうでないアーティストは二極化していくだろう。今後「アルバム」の価値と意味はシビアに問われることになっていくだろうし、リスナーとして、それは悪いことばかりじゃない気がしている。(粉川しの)
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