ポール・マッカートニー、銃撃死によってジョン・レノンがいかに神格化されたかを語る
2015.07.12 00:40
残すところ、今月末のロラパルーザへの出演のみとなっているポール・マッカートニーのアウト・ゼアー・ツアーだが、ポールはジョン・レノンが1980年に銃撃され他界してから、ジョンが神格化されていくのと折り合いをつけていくのが大変だったことを語っている。
ポールはエスクワイア誌の取材に応えてさまざまな話題について答えているが、次のように元ビートルズのメンバーでジョンだけが神格化されていった経緯を振り返っている。
「ザ・ビートルズが解散するとぼくたちはそれぞれになんか平等な感じになったんだよ。ジョージ(・ハリスン)はジョージのアルバムを作って、ジョンはジョンのを作って、ぼくはぼくのを作って、リンゴ(・スター)はリンゴのを作ったっていうふうにね。だから、なんかビートルズの頃のようでもあったんだよ。みんな平等にやってるなって。その後、ジョンが銃撃されて他界して、この事件が単純に恐ろしかったということのほかにもね、事件からずっと引きずるようにして顕著になったのは、ジョンは今や殉教者になってしまったということだったんだ。ケネディ大統領のようになっちゃったわけだよ。
で、どういうことになるのかというと、たとえば、ぼくが本当に閉口し始めたのは誰も彼もが『ビートルズとはつまりジョンだった』と語り始めたことで、ぼくとジョージとリンゴは『ちょっと待ってよ。ほんの1年前まで全員等しい感じだったんだけど』って戸惑い始めることになるんだよ。ウィットの利いていた人物は確かにジョンだったよ。それに確かにジョンはたくさん名曲を書いたよ。ビートルズが終わってからも、もっと名曲をたくさん書いたけど、そうでもない曲もたくさん書いてるんだよ。ただ、ああいう形で犠牲になったことで、ジョンはジェイムス・ディーンの域やそのさらに高いところまで祀り上げられることになったんだ。
別にそれはそれでいいと思うし、実際、そういう捉え方にも同意するけど、ただ、そうなったらいろいろ書き換えられることが出てくるんだろうなとぼくは思ったんだよ。ジョンが肝だったと、そういうことになるんだろうなと。基本的にそういうことだったんだ。でも、友達なんかと話してると『そんなに心配しなくても平気だよ。人っていうのはきちんとわかってるもんだから。きみのやってきたことはきちんとみんなもわかってるはずだよ』って言ってもらえたりしてね。でも、妙なことが起きたりするんだ。(オノ・)ヨーコがプレスで語ってたりして、その記事を読んでみると(ヨーコの口調の物真似で)『ポールなんてなんにもやってないんだから! ポールがやってたことなんてスタジオのブッキングだけよ』とか言ってるんだよ。『ふざけんなよ、ほんと、ちょっと待ってくれよ。ぼくのやってたことはスタジオのブッキングだけだと?』っていう。でもまあ、たいがいの人にはこんなのただの言いがかりだとわかってもらえるわけでさ。ただね、そんなのは氷山の一角に過ぎないわけで、いろんなことがそうやって書き換えられちゃったんだよ。ジョンはあれやった、ジョンはこれやったって。つまりね、ジョンが書いた名曲をすべて揃えてみて、それとジョンが書いたそうでもない曲とをきちんと見較べてみれば、よくわかることなんだけどね」