【コラム】DIR EN GREY、無規制クリップ集を目を逸らさずに観て痛感したこと
2015.09.17 20:30
DIR EN GREYが2015年9月2日にBlu-ray&DVD『AVERAGE PSYCHO 2』をリリースした。“AVERAGE”は2005年以降にリリースされた彼らの全てのミュージッククリップ集に名付けられている言葉であり、今年4月には『Average Sorrow』もリリースされているが、『AVERAGE PSYCHO』は彼らにとって、より特別なタイトルである。再生すると「この映像には、グロテスクな表現や性的表現が含まれます」と表示されるように、これまでのBlu-ray&DVDやテレビなどで、その内容から規制されていたミュージッククリップを、本来の姿のまま収めているのだ。第1弾は2005年にリリースされており、今回は第2弾。“Agitated Screams of Maggots” “VINUSHKA” “Unraveling” “Revelation of mankind”の4曲が収録されている。
例えば“Agitated Screams of Maggots”は、演奏シーンがなくアニメーションで統一されており、物語や質感は楽曲によって様々である。しかし、はっきり言おう。相当心が強い人でも、目を覆いたくなるような映像ばかりだ。暴力、セックス、血、虫、戦争……生々し過ぎて、彼らの表現の根本にある「痛み」が直で神経に押し寄せる。それでも、必死で目を見開いてみると、浮かび上がってくるのは、愛や家族といった、「痛み」とは真逆の平和の象徴なのだ。彼らが誰よりも平和を望んでいるからこそ、世の中の膿を炙り出そうとしていることが伝わってくる。
ボーナストラックのインタヴューでも、規制へのジレンマと共に「現実の方が怖い」、「世の中にはもっと隠されていることがある」ということを彼らは口にしていた。そう考えてみると、日々のニュースの方が恐ろしい。それを対岸の火事と片付けてぼんやりとやり過ごすのか、いつか身に降りかかるかもしれないと実感をもって生きるのか――恐らく、彼らの作品に触れている人は、後者が多いだろう。目を見開いて生きなければならないことを、彼らは楽曲やライヴや映像といった、全ての表現で伝えているから。ミュージッククリップ以外には、“蜜と唾”、“THE BLOSSOMING BEELZEBUB”のLive Screen Video、そしてボーナストラックにもインタヴューだけではなく、『AVERAGE PSYCHO』のTrailerが収録されている。彼らの一貫したメッセージを受け取ってほしい。表現で何処まで警鐘を鳴らすことができるのか、彼らは挑み続けている。(高橋美穂)
DIR EN GREY - Music Clip Collection Blu-ray & DVD『AVERAGE PSYCHO 2』 Trailer