ニューシングル『スターリングスター』のリリースが10月14日に迫ったKEYTALK。そして10月28日には、いよいよ初の武道館ワンマン「KEYTALKの武道館で舞踏会 ~shall we dance?~」が開催される。メジャーデビューから2年弱で辿り着いた武道館と考えると、やはり見事というべきだろう。ただ、インディーズ時代から巻き起こしてきたセンセーションの大きさを考えると、体感では決して早かったとも思えない。そもそも、小野武正(G・Cho)、寺中友将(Vo・G)、首藤義勝(Vo・B)、八木優樹(Dr・Cho)の4人は、初の武道館という舞台をどう考えているのだろうか。そりゃあ感慨深さはあるだろうけれど、たとえば首藤は、最新アルバム『HOT!』ツアーのファイナルで、武道館について「辿り着いた」ではなく「引き下がれないところまで来ちゃった」という表現をしていた。
とはいえ、首藤が作詞作曲を手掛けたニューシングルの表題曲“スターリングスター”は、武道館公演の一場面を強くロマンティックに演出してくれるはずのナンバーである。ドラマ性豊かなイントロを経ると、力強い演奏の中にもじっくりと語り聞かせるような歌の節回しを響かせ、快感の琴線に触れる鮮やかな転調の直後に、甘いハーモニーが降り注ぐ。KEYTALKが培ってきたスキルのあれこれをたっぷりと注ぎ込み、その上で「これまで」と「これから」を共有する確かなポップソングに仕上げられている。
また、小野が作詞を手がけ、曲を小野と八木で共作しているカップリング“鏡花水月”は、あらゆる音のフレーズと歌詞から音楽バカっぷりが迸って刹那の高揚感を捉える、超ハイヴォルテージなナンバーだ。そして寺中作品である“summer end”は、永遠の夏を追い求め続ける彼の人間性がもろに反映された、ブリージンなラヴソング。つまり、『スターリングスター』に収められた3曲は、3曲が揃うことで、「KEYTALKの4人とは、こうである」ということをあらためて提示しているのである。
それぞれに演奏技術とアイデアを培ってきた4人が、「ロックとは~でなければならない」という制約から解き放たれた場所で出会い、まるで何も知らない子供たちが遊ぶように、無限の可能性の中で音を鳴らす。KEYTALKはそういうバンドなのだと思っていた。いや、その一面はこれからも変わらないだろう。ただ、武道館というロックの殿堂に立とうとするとき、彼らはロックの歴史の中で受け継がれてきた夢や希望や自由を、人々に語り継がなければならない、という使命感に駆られたのではないか。だから「引き下がれないところまで来た」のではないだろうか。『スターリングスター』の3曲の、どこか頼もしい響きからは、そんなことを考えさせられる。
“スターリングスター”のタイトルをそのまま意訳すると、「星を見つめている」というふうになる。もちろん、夜空に瞬く星々のことだろう。ただ、《まばゆく降りそそぐスター 巡り会えたら/きっと今よりちょっと強くなれるって》という歌詞を、「ロックスター」に読み替えてみるのも面白い。かつてファブ・フォー(素晴らしい4人組)と呼ばれ、無限の可能性の中でロックを鳴らしたザ・ビートルズが武道館に立ってから、来年で50周年になる。現代日本の素晴らしい4人組は、武道館でどんなスターを見るのだろうか。(小池宏和)
“スターリングスター”MV